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富豪比較!『こち亀』の中川巡査と『ケロロ軍曹』の西澤さんでは、どっちの家がお金持ちか?

柳田理科雄空想科学研究所主任研究員
イラスト/近藤ゆたか

こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。さて、今日の研究レポートは……。

マンガやアニメの世界には、ときどきモノスゴイお金持ちが出てくる。

たとえば『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の中川圭一巡査は、主人公の両さんと同じ交番に勤務する警察官でありながら、中川コンツェルンの御曹司。自ら社長を務める「中川エクスクルーシヴ」も、世界有数の大企業だ。

所有する車は5千台!

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100円ショップを見て、100万円ショップと勘違いする!

『ケロロ軍曹』の西澤桃華の家も、呆れるほどの大金持ちだ。

小学6年生の彼女は、クラスメイトの日向冬樹と仲よくなるために、無人島に日向一家を招待し、そのためだけにホテルを建てた! かけた費用は50億円!

日向家に行くために、ジェット機を飛ばして、パラシュートで降下した!

自宅の敷地内に「西澤邸」という電車の駅がある!

どちらもあまりの金持ちで、頭がクラクラする。

そして、ここまでゴーカイな話を聞くと、ワタクシは比べずにはいられません。中川家と西澤家は、いったいどちらが金持ちなのか?

◆お屋敷が広いのはどっち!?

両家の財力は、それぞれが住んでいる屋敷の広さが物語る。

まず中川家。『こち亀』のある回で、中川は両さんを車で自宅に連れていった。車は、屋敷の塀に沿った道路に入ったが、10分走っても門に着かない。しかも、屋敷には12の門があるというのである。

これはいったい、どれほどの広さなのか!?

まるで算数の問題みたいな設定だが、学校の授業と違うのは、そのスケールだ。

中川が塀に沿った道路は公道だったので、車は時速60kmで走っていたと仮定しよう。信号などに引っかからなければ、この速度で10分かかる距離とは10kmだ。

だが、これが門と門のあいだの距離とはいえない。塀沿いの道路は両側通行だったから、その道に出た中川は、左右にある門のうち、近いほうを目指したはずだ。

その門までの距離が10kmということは、門と門のあいだの距離は20km以上あったことになる。

イラスト/近藤ゆたか
イラスト/近藤ゆたか

このような門が12もあったら、敷地の外周は240km。

敷地が正方形だったら、一辺の長さは60kmということになる。これは、品川から三浦半島の先端までと同じ!

面積は3600km²。なんと東京都や大阪府より広いのだ!

対する西澤家はどうか。

ケロロ軍曹と冬樹が、西澤家に住むタママ二等兵を訪ねていったことがある。2人が西澤邸駅に降り立つと、執事のポールがリムジンで迎えにきていた。

そこから一直線の道を走って、屋敷の建物に着くまで25分かかった!

ここでもリムジンが時速60kmで走っていたとすると、西澤邸駅から西澤邸まで25kmあったことになる。

西澤邸駅が敷地の端にあり、西澤邸が敷地のど真ん中にあったとすれば、敷地の一辺は50km。敷地がやはり正方形だとしたら、面積は2500km²だ。こちらも、東京や大阪より広い!

どちらも個人の屋敷が、都府県クラスの面積。

面積だけでいえば、中川県や西澤県があってもおかしくないということだ。

そして、比較すると中川県、いや、中川邸のほうが1.4倍ほど広いことになる。

◆金使いが豪快なのはどっち!?

では、お金の使い方は、どうだろうか。

マンガを読み比べると、両家ともに、船のチャーター、宇宙、軍事の三分野で、豪快なことをやっている。

西澤家の場合――

【船】クリスマスに世界各国の首脳を招待し、豪華客船クイーン・エリザベス二世号でパーティーを開いた。

【宇宙】スペースシャトルのミッション1回の費用を全額出資し、西澤コンツェルン専用衛星を打ち上げている。

【軍事】桃華には銃で武装した専属の護衛部隊をつけている。

中川家の場合――

【船】米軍の空母を借りて艦上でモトクロス大会を開いた。

【宇宙】グループに中川宇宙開発センターがあり、中川はそこから打ち上げた有人衛星の1つを別荘にしている。

【軍事】中川自身は銃や戦闘機を集め、祖父のポール中川は潜水艦や戦艦をコレクションし、父の龍一郎は護衛ヘリに護られて日本に降り立った。

う~む、どちらもモノスゴイ……。

これはもう単なる金持ちというレベルを超えて、別世界の住人ですなあ。

◆稼いでいるのはどっち!?

これまでの要素からは、どちらが金持ちかを判定するのは難しい。もっとも手っ取り早いのは、両家の資産や収入を比較することだろう。

これについては、それぞれの父親がヒントになる発言をしている。

桃華の父の梅雄は「世界経済の半分を支配する」。

中川の父の龍一郎は「1秒に1億稼ぐ」。

こりゃあいったい、どっちがスゴイんだっ!? 

『ケロロ軍曹』のほうから考えると、梅雄がこの発言をしたのは、「月刊少年エース」誌に2002年に掲載された話のなかだった。

前年の2001年のGDPの世界総額は、32兆1299億ドル。当時の為替レート「1ドル=120円」で計算すると、3855兆5880億円である。西澤コンツェルンは、グループ全体で、この半分の売り上げがあるということだろうか?

だとしたら、西澤コンツェルンの総売り上げは1927兆7940億円。日本の国家予算の20年分だあ!

さすがの『こち亀』中川コンツェルンも、これには勝てないのでは……?

そこで、龍一郎の言う「1億」というのが1億円のことだとして、グループ全体で1秒間にそれだけの売り上げがあるとして計算すると、1日でなんと8兆6400億円!

1年では3155兆7600億円で、西澤コンツェルンを上回った!

お屋敷の広さも、グループの総売り上げも、メチャクチャ高い水準での勝負となったが、ともに中川家の勝利となった。

――しかし、もうこのレベルになると、負けたからって、別にどうということはありませんな。

このヒトたち、すごすぎて、むしろ清々しい。

空想科学研究所主任研究員

鹿児島県種子島生まれ。東京大学中退。アニメやマンガや昔話などの世界を科学的に検証する「空想科学研究所」の主任研究員。これまでの検証事例は1000を超える。主な著作に『空想科学読本』『ジュニア空想科学読本』『ポケモン空想科学読本』などのシリーズがある。2007年に始めた、全国の学校図書館向け「空想科学 図書館通信」の週1無料配信は、現在も継続中。YouTube「KUSOLAB」でも積極的に情報発信し、また明治大学理工学部の兼任講師も務める。2023年9月から、教育プラットフォーム「スコラボ」において、アニメやゲームを題材に理科の知識と思考を学ぶオンライン授業「空想科学教室」を開催。

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