■執行猶予求めた被告に禁錮2年の実刑判決

 昨年10月、北海道新十津川町で起きたバイク同士の死亡事故で、自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致死)の罪に問われた被告の男に、9月17日、札幌地裁の石田寿一裁判官は、禁錮2年の実刑判決を言い渡しました。

 この事故については、昨年12月、『お父さんのいない、初めてのクリスマス… 中央線突破の「無保険バイク」に命奪われて(柳原三佳) - 個人 - Yahoo!ニュース』で取り上げました。

 ツーリングで大型バイク(BMW F900XR)を運転中、対向車線を走行していた小型バイク(HONDA CBX125F)に正面から衝突し、竹林政信さん(当時50歳)を死亡させたのは、江別市の会社員・大場瑞樹被告(47)です。

 裁判官は判決の中で、この事故の状況について次のように述べました。

『(被告のバイクは)極めて見通しの良い現場の直線道路で、対向車線の被害バイクの確認は容易であったにも拘わらず、この注意義務を怠り、さらに、追い越しをかけた前車(中型貨物車)の速度が、制限速度50キロを超える速度であり、これを追い越すには極めて危険な速度となることを知りながら、時速70キロで対向車線にはみだし、被害バイクに衝突させ、全身多発性骨折で死に至らしめた』

 傍聴席に座っていた私のすぐ目の前には、判決の読み上げを聞く大場被告の姿がありました。その両手は、終始、小刻みに震えていました。

 被告は刑事裁判の中で執行猶予付きの判決を求めていましたが、結果的にその主張は、一審では認められなかったのです。

 ちなみに、検察による求刑は禁錮2年6月でしたが、結審の日、被害者参加した遺族と代理人である青野渉弁護士は、被害者側求刑として自動車運転死傷行為処罰法(過失運転致死)としては最長の「懲役7年」を求刑していました。それだけに、今回の禁錮2年という判決は、実刑ではあるものの、厳罰を望んでいた遺族にとってはあまりに軽いものだったといえるでしょう。

亡くなった竹林さんのバイク。突然目の前に現れた被告の大型バイクを避けようと、とっさに左側へよけたが間に合わず、右半身を直撃された(筆者撮影)
亡くなった竹林さんのバイク。突然目の前に現れた被告の大型バイクを避けようと、とっさに左側へよけたが間に合わず、右半身を直撃された(筆者撮影)

クランクケースカバーが破損している竹林さんのバイク。衝突の衝撃の大きさを物語る(筆者撮影)
クランクケースカバーが破損している竹林さんのバイク。衝突の衝撃の大きさを物語る(筆者撮影)

■過去にも死亡事故。それでも「もったいない」と任意保険加入せず

 実は、昨年12月、冒頭で紹介した記事が公開された直後、ある読者からの情報によって、遺族は思わぬ事実を知ることになりました。

 大場被告は1994年12月、21歳のとき、真冬の札幌市内で車を運転中にひき逃げ死亡事件を起こしていたというのです。

 26年前の事実、そして、その後の被告の行動は、遺族に大きなショックを与えました。

 1回目のひき逃げ死亡事件で罰金50万円の略式処分を受けた大場被告は、一定期間を終えると車の運転を再開。事故から8年後の2002年には、大型自動二輪免許を取得していたのです。

 また、今回の法廷では、過去にひき逃げをして被害者を死亡させるという重大事件を起こしていながら、2020年に再び死亡事故を起こすまでの18年間、「所有した複数台のバイクにはいずれも任意保険を一度もかけたことがなかった」ということも明らかになったのです。

 8月27日に行われた結審では、遺族による意見陳述の後、検察官が被告の「無保険」について、厳しい口調で以下のように追及する場面もありました。

「被告人は平成7年、自動車を運転中に被害者を死亡させて、その場から走り去った事実で罰金50万円に処せられたことがあるにもかかわらず、『自分が人を巻き込むような事故を起こすことはないだろう、半年くらいしか乗れないのに(筆者注*北海道は雪国なのでバイクに乗れる期間が短い)、わざわざ任意保険をかけるのはもったいない』という、安易、身勝手、かつ自己中心的な考えで任意保険に加入しておらず、遺族に対する早期かつ十分な賠償がなされる見込みがない」

新車で納車されたばかりの大型バイク。被告は事故の日、ツーリングで慣らし運転の途中だったという(竹林さん提供)
新車で納車されたばかりの大型バイク。被告は事故の日、ツーリングで慣らし運転の途中だったという(竹林さん提供)

 自宅で「禁錮2年」の実刑判決の知らせを受けた高齢の父親は、

「2年か。そうか。短いな。政信はもう帰って来られないんだから……」

 そう言って、複雑な表情を浮かべたそうです。

 控訴期限は2021年10月1日です。検察が控訴をする予定はありませんが、被告側が控訴するか否かはまだ明らかになっていないとのことです。

札幌地方裁判所(筆者撮影)
札幌地方裁判所(筆者撮影)