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2019年11月、メルヴィンズが来日。波乱に満ちた日本公演の軌跡

山崎智之音楽ライター
Melvins/courtesy Creativeman Productions

2019年11月、メルヴィンズの来日公演がいよいよ目前に迫ってきた。東京・名古屋・大阪でライヴが行われる。

バズ・オズボーン(ギター、ヴォーカル)、デイル・クローヴァー(ドラムス、ヴォーカル)そしてレッド・クロスのスティーヴ・マクドナルド(ベース)というトリオ編成で行われるジャパン・ツアー。当初は5月に予定されながら、デイルの椎間板ヘルニアの悪化で延期となり、満を持して完全復活の“仕切り直し”となる。

バンドは9月から10月にかけて大規模な北米ツアーを行っている。レッド・クロスとのダブル・ヘッドライナー・ツアーで、なんとデイルとスティーヴは両バンドでプレイするというハードなスケジュールをこなしており、体調面での心配はなさそうだ。むしろ日本では全身が温まった状態で、熱いライヴが繰り広げられることだろう。

アメリカ公演では『フーディニ』(1993)から「フーチ」「ハニー・バケット」、『Ozma』(1989/日本盤未発売)からの「Oven」、『Bullhead』(1991/日本盤未発売)の「Your Blessened」などのクラシックスを含めた熱いライヴでファンを完膚無きまでに叩き伏せてきたメルヴィンズが、約4年ぶりに日本のステージに立つのだ。

ヘヴィでエキセントリック、スラッジーでメロディアスな音楽性、そしてドス黒いユーモアで熱狂的な支持を得ているメルヴィンズは最強のライヴ・バンドとして人気を誇っているが、これまで行われてきた来日公演はさまざまなエピソードに彩られてきた。

彼らの初の日本でのライヴが実現したのが1999年4月。奇しくも同日、元フリートウッド・マックのピーター・グリーンが初来日公演を行っており、マックの代表曲のひとつ「グリーン・マナリシ」も披露された。そのライヴが終わってから急いでメルヴィンズ公演に向かうと、オープニング・アクトのBorisの演奏が終わったところ。そしてメルヴィンズがステージに上がって1曲目にプレイしたのが「グリーン・マナリシ」だった。両公演を見たファンは1日で2回この曲をナマで聴くことが出来たわけだ。この選曲はグリーンの来日を知って“狙った”のかとも思えたが、後にバズに確認したところ、「知らなかった。まったくの偶然」だったという。

なお「グリーン・マナリシ」はメルヴィンズの『The Maggot』(1999/日本盤未発売)でカヴァーされている。

2度目の来日はそれから10年後、2009年のフジ・ロック・フェスティバルだった。1時間足らずと、時間的には腹八分目ながら、その濃密なステージはフェス史上に残る名演のひとつだった。なおバズは「グッド・ショーだった」と思い出しながら、フェスについて「山の斜面にテントを張ってキャンプしている人がたくさんいた。寝ているあいだに坂を転がり落ちてしまわないか心配になった」と話している。

3度目の来日となったのが2011年3月、“Extreme The Dojo Vol.26”だった。ハイ・オン・ファイアー、アンアースリー・トランスとのツアーだったが、大阪・名古屋公演を終えた後、渋谷O-EASTでのサウンドチェック中に東日本大震災に被災。東京公演を行うことなく帰国した。彼らはわずか2週間前の2月22日にニュージーランドのクライストチャーチ地震にも遭遇しており、後にバズは「人生の不条理を感じた」と語っている。

メルヴィンズが日本に戻ってきたのはそれから4年半後の2015年11月、ライヴ・イベントHostess Club Weekenderだった。このときはメタル・フェスOzzfest Japanと見事にバッティング。オジー・オズボーンがギーザー・バトラー(ブラック・サバス)、トム・モレロ(レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン)、ザック・ワイルド(ブラック・レーベル・ソサエティ)、デイヴ・ナヴァロ(ジェインズ・アディクション)らと合体を果たすオールスター・ライヴと天秤にかけて、血の涙を流しながらメルヴィンズを選んだ思い出が、筆者(山崎)の胸に深く刻まれている。だがもちろんメルヴィンズのライヴは最高だったので、後悔はない。

きわめて余談ながら、筆者は2010年5月、同日にバズとオジーに(もちろん別々に)電話インタビューを行ったことがある。そのことをバズに告げると「これが本当の“オズボーンズ”だ!」と笑っていた。(ただしバズはOsborne、オジーはOsbourneの違いがある)

なお、バズはマイク・パットン(ヴォーカル/フェイス・ノー・モア)デイヴ・ロンバード(ドラムス/スレイヤー)、トレヴァー・ダン(ベース/ミスター・バングル)とのスーパーグループ、ファントマズでも2000年11月、2005年9月に来日公演を行っている。

そして行われる今回のメルヴィンズ・ジャパン・ツアーも“何か”が起こりそうな予感がする。2019年11月、我々は歴史の証人となる...かも知れない。とにかくメルヴィンズのライヴをエクスペリエンスすることが大前提である。

【MELVINS JAPAN TOUR 2019】

- 東京 2019/11/19(火) 渋谷 duo MUSIC EXCHANGE

OPEN 18:30 / START 19:30

- 愛知 2019/11/20(水) 名古屋 BOTTOM LINE

OPEN 18:30 / START 19:30

- 大阪 2019/11/21(木) 梅田 Shangri-la

OPEN 18:30 / START 19:30

【来日公演公式サイト】

https://www.creativeman.co.jp/event/the-melvins/

【日本レーベル公式サイト】

Hostess Entertainment Unlimited

http://hostess.co.jp/artists/melvins/

【来日告知動画】

Toshi Kasaiツイッター

https://twitter.com/toshikasai/status/1194755751324971010

【関連記事】

- Mikiki 2015年来日時の記事

http://mikiki.tokyo.jp/articles/-/8916

- yamazaki666.com 2010年のインタビュー

http://yamazaki666.com/interviewbuzzo.html

- Yahoo!ニュース 2016年の記事『東日本大震災を超えて、メルヴィンズが全米50州+ワシントンDCを回るツアーDVDを発表』

https://news.yahoo.co.jp/byline/yamazakitomoyuki/20160101-00052879/

音楽ライター

1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,200以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検1級、TOEIC945点取得。

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