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『温泉ごはん』で断トツ人気のアレって? GWは食べるための旅にでよう!【食いしん坊におすすめ3選】

山崎まゆみ観光ジャーナリスト/跡見学園女子大学兼任講師(観光温泉学)
鹿児島県鹿屋市で食べたローストビーフ丼1500円(撮影筆者)

温泉をめがけて旅をしているが、行く先々で、旅館の名物料理から土地のハレの膳やソウルフードなど、魅力いっぱいの「温泉ごはん」にも出会える。

また多数のラジオ番組で「温泉ごはん」の魅力ついて話をしているが、ラジオのディレクターから求められたのは「お肉系で美味しい宿」。

そこで今回は、肉を食べるために旅する価値がある地域や宿を紹介していきたい。

鹿児島県大隅半島 志布志の鶏 鹿屋の焼肉

鹿児島県大隅半島を訪ねた時は肉三昧だった――。

志布志市に宿泊した時、夜は地元の方が居酒屋風の店に連れて行ってくださった。気軽に入れる店だったが、鶏の刺身の新鮮さといったら。こりこりっとした歯ごたえのずり、もっちりとした肉感のささみやもも肉の刺身に、全く臭みはない。他にも首肉のせせりを使ったチキン南蛮も愉しみ、しめはもつ鍋で大満腹。

鹿児島県志布志市で食べた新鮮な鶏の刺身(撮影筆者)
鹿児島県志布志市で食べた新鮮な鶏の刺身(撮影筆者)

この晩は、「国民宿舎ボルベリアダグリ」に泊まる。志布志湾を眺めながら、炭酸水素塩泉のとろとろなお湯に感嘆。まるでうなぎをつかんだかのような触感だ。このホテルは地元の皆さんの憩いの場所も兼ねているので、雑多さは否めないが、お湯は秀逸。

海を眺める国民宿舎ボルベリアダグリの大浴場(撮影筆者)
海を眺める国民宿舎ボルベリアダグリの大浴場(撮影筆者)

翌日は志布志から鹿屋市に移動しランチを摂ったが、これも凄かった。

焼肉屋でハラミ丼を食した。ご一緒した方々はローストビーフ丼と豚バラ丼。それぞれ1500円。 安い!美味しい!ボリューム感!の3拍子が揃うとは、さすが大隅半島。

「これらの肉は道の駅で購入できますよ」とみなニコニコとしておっしゃる。

羨ましい!

鹿児島県鹿屋市の焼肉屋で食べたハラミ丼1500円(撮影筆者)
鹿児島県鹿屋市の焼肉屋で食べたハラミ丼1500円(撮影筆者)

岐阜県下呂温泉「水鳳園」の飛騨牛

中部地方の温泉地と言えば、まずは下呂温泉だろう。宿泊の愉しみは夕食の飛騨牛だ。

私の好きな旅館「水鳳園」の看板はお料理だが、宿を始めた先代が和食の料理人であったことから、王道の懐石である。

数年前に新たな挑戦として、旅館に隣接した場所にステーキハウス「飛騨牛茶寮 神月」がオープンしたので、ランチはここで飛騨牛A4ランクを頼んだ。とろけるように柔らかい飛騨牛は口の中で高価な香りがする。旅館の食事処と遜色ない雰囲気の良い個室で、特別な日の食事に利用されているようだ。

霜降りがいかにもおいしそうな飛騨牛(撮影筆者)
霜降りがいかにもおいしそうな飛騨牛(撮影筆者)

「水鳳園」にチェックイン後、ひと汗流そうと、貸切風呂へ向かう。頭上には木々のまばゆい緑が広がり、その緑が無色透明の下呂のお湯に映っていた。お湯に浸かりながら緑を眺め、風を受けると、贅沢な気分になる。

岐阜県下呂温泉「水鳳園」の露天風呂(撮影筆者)
岐阜県下呂温泉「水鳳園」の露天風呂(撮影筆者)

夜もメインは飛騨牛。本鮫皮でわさびをおろすと爽やかな香りがしてくる。目の前で焼いた飛騨牛に、わさびと塩をのせて口に入れ、ひと粒が大きい皇室献上米「銀の朏みかづき」のご飯と合わせて、わしっと嚙みついた。肉はもちろん、飛騨牛の脂をまとった米は最高だ。

岐阜県下呂温泉「水鳳園」の外観(撮影筆者)
岐阜県下呂温泉「水鳳園」の外観(撮影筆者)

山形県 かみのやま温泉「古窯」のビーフシチュー

山形県かみのやま温泉「日本の宿 古窯」の和室(撮影筆者)
山形県かみのやま温泉「日本の宿 古窯」の和室(撮影筆者)

山形県かみのやま温泉「日本の宿 古窯」は、山形特産の紅花が入った紅花塩を添えた米沢牛ステーキと、「古窯」屋号の由来の窯にちなんだ「古窯開運パイシチュー」が名物だ。

「古窯」名物・古窯開運パイシチュー(撮影筆者)
「古窯」名物・古窯開運パイシチュー(撮影筆者)

「古窯開運パイシチュー」の器の上側はこんがりと焼いたパイに覆われている。生地をサクサクと崩すとビーフシチューが顔をのぞかせ、ごろんとした大きな牛肉が浮かんでいた。デミグラスソースのシチューは濃厚ではあるが、すっと溶けていき、味がしつこく口に残らない。どこか和風でお米にもあう。ぱりっと香ばしいパイ生地をシチューに沁みこませてから食べると、とろけそう。

パイ生地を割るとごろんと牛肉が顔をのぞかせる(撮影筆者)
パイ生地を割るとごろんと牛肉が顔をのぞかせる(撮影筆者)

夏に訪ねたため、この日の最高気温は37度。暑いものの、雲ひとつない晴れ渡る空の下で露天風呂に入るのは爽快。最上階にある露天風呂からは蔵王連峰が見渡せ、空も近く感じられた。

蔵王連峰が見渡せる「古窯」の露天風呂(撮影筆者)
蔵王連峰が見渡せる「古窯」の露天風呂(撮影筆者)

※この記事は2023年4月に発売された『温泉ごはん 旅はおいしい!』(河出文庫)から抜粋し転載しています。

観光ジャーナリスト/跡見学園女子大学兼任講師(観光温泉学)

新潟県長岡市生まれ。世界32か国の温泉を訪ね、日本の温泉文化の魅力を国内外に伝えている。NHKラジオ深夜便等テレビラジオにも多数出演。国や地方自治体の観光政策会議にも多数参画。VISIT JAPAN大使(観光庁任命)としてインバウンドを推進。「高齢者や身体の不自由な人にこそ温泉」を提唱しバリアフリー温泉を積極的に取材・紹介。著書は『おひとり温泉の愉しみ』(光文社新書)『行ってみようよ!親孝行温泉』(昭文社)『女将は見た 温泉旅館の表と裏』(文春文庫)2023年4月6日発売の『温泉ごはん 旅はおいしい!』(河出文庫)は温泉にまつわる豊かな「食」体験をまとめた初の食べ物エッセイ。

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