Yahoo!ニュースでは新型コロナウイルスを経験した社会が今後どのようにしていくのか、皆さんが不安に感じていることをコメント欄に記載する記事を公開しています。その中から「核家族で、夫婦揃って感染してしまった場合、子どもはどうなるのか。」と不安に感じている人がいたので、私なりの見解を述べたいと思います。

両親が感染したら?子どもはどうなるのか

 厚生労働省の世帯調査によると、2016年度の核家族の割合は全体の約6割を占めています。核家族で近くに頼れる親戚もいない、両親がそろって感染し、入院になった時、残された子どもはどうなってしまうのか、そんな不安を抱いている方は少なくありません。ですが、安心して下さい。両親が感染した場合は、児童相談所が子どもを預かります。

 

 ニュースなどを観ていると、児童相談所というのは虐待されている子どもを保護する所、というイメージが強い方も多いと思いますが、児童相談所というのは、「相談機関」です。困っているご家族の相談を受ける場所です。

親御さんが何らかの理由で子どもの面倒を見られなくなった時に、子どもを預かるのは児童相談所の本来の役割なのです。

 ここで言う児童は、学齢児童(小学生まで)ではなく、18歳未満を児童として援助対象となります。

一時保護に向けてのフローチャート 厚生労働省より
一時保護に向けてのフローチャート 厚生労働省より

児童相談所が子どもを預かる相談内容の種別として「母傷病」というのがあります。親が病気で子どもの面倒を見られなくなった時に、子どもを預かる相談の種別です。

ですので、両親が感染して子どもが残されるような状況になった時には、児童相談所に相談すれば、児童相談所が子どもを預かってくれるのです。

 私も児童相談所に勤務している頃、両親の病気で、子どもを預かったことはたくさんありました。母親は病気になってしまい、父親は仕事が忙しくて子どもの面倒を見られない、というケース、母親が2人目の子どもの出産の為に入院するけど、父親が忙しいので、というケースでも、子どもを預かっていました。

ですので、母親だけが感染した場合でも父親が面倒を見られなければ、児童相談所に相談して頂いて良いのです。

(全国児童相談所一覧)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/zisouichiran.html

一時保護の期間と費用、保護所の生活

 児童相談所が子どもを預かる場合はすべて「一時保護」となります。対象は0歳から18歳未満で、費用はかかりません。子どもは一時保護所という場所で集団生活を送ることとなります。

期間は原則最長2か月です。これは、一時保護中は、子どもは学校に行けない 、外出できない、私物を持ち込めない、通信や面会を制限されるなど、様々な制限を受けるため、子どもの心理的負担が長期化しないよう、厚生労働省が定めた期間です。子どもたちの行動を制限するのは、一時保護所に入って来る子どもは親の病気、親からの虐待、非行など様々な理由を抱えています。登校や外出、通信を制限するのは、虐待した親や関係を断ち切った方が良い非行仲間との接触を避けるためであり、私物の持ち込みを禁じるのは、危険なものを持ち込ませない為です。他の子を傷付けないようにだけではなく、自分を傷付ける可能性がある子もいるからです。子どもたちの安全を守るための制限なのです。

 子どもが乳児の場合には乳児院という0歳から2歳までの赤ちゃんを預かる専門の場所に保護をお願いするので、赤ちゃんでも安心して預かってもらえます。

一時保護所には子どもの安全を守るために大勢のスタッフが働いていますし、勉強や運動、自由時間もあります。

もちろん家に比べたらはるかに不自由な場所ではありますが、子どもを1人で家においておくよりは安全です。子どもがどんな生活をすることになるのか不安な場合は児童相談所に質問してください。丁寧に説明してくれるはずです。

子どもの心と体のケア

 一時保護所は不自由な場所ですし、何より子どもは両親が病気になったことで「お父さん、お母さんが死んでしまうのではないか」などの不安を抱きます。児童相談所には心理の専門家がいますので、両親の様子を伝えながら子どもの心のケアもしてくれます。

 また、健康面でも、一時保護した後に子どもが発熱した場合は、個室対応で経過をみてくれます。一時保護所には看護師がいますし、すべてではないですが、医師が常駐している児童相談所もあります。

写真:アフロ
写真:アフロ

 全国の児童相談所は新型コロナに対する対応を検討し、ある程度マニュアル化もしているでしょう。一時保護所が満員で、個室対応が難しい児童相談所もありますが、その場合、通常は親や子どもと面接する面接室を子どもの居室にするなどの対応をしています。神奈川県では児童相談所、児童養護施設、児童自立支援施設の3か所に専門施設を設置しました。今後も必要に応じて、各自治体で対応が検討されていくはずです。子どもの対応は児童相談所がきちんと考えますので、保護者は心配しなくて大丈夫です。

子どもが家で過ごす「リスク」

中高生など、集団生活や制限のある生活を嫌がり、1人で家で過ごす、と言うかもしれません。実際、児童相談所で保護が必要と判断しても、保護を嫌がる高校生はいました。それでも、両親が家にいないのであれば、児童相談所が説得して子どもを保護すべきです。もちろん、説得には両親の協力も必須です。

 今はまだ休校期間中である地域も多いと思います。子どもが学校に通っていれば、学校の先生たちが子どもの様子を確認できますが、休校期間中だと子どもの様子を確認できる人はいません。児童相談所が定期的に家庭訪問して子どもの様子を見る、というのは今の児童相談所の体制としては不可能です。

 

 子どもが家で1人で過ごすと、不摂生な食事、昼夜逆転などの生活の乱れも懸念されるほか、親がいないことで解放感を抱き、友達と集まって深夜まで一緒に過ごす中での飲酒や喫煙の心配もあります。深夜に街を歩きまわることも心配です。休校の長期化で留守中の子どもが空巣狙いの犯人と鉢合わせになる事件も相次いでいるという報道もありました。子どもが1人で家にいるということには多くのリスクが潜んでいます。

出典:THE PAGE 画像制作:Yahoo! JAPAN(THE PAGEの記事を元に作成)
出典:THE PAGE 画像制作:Yahoo! JAPAN(THE PAGEの記事を元に作成)

 また、休校期間の長期化による中高生の妊娠が増えている、といいます。子どもの非行が進んでしまうリスクを考えると、子どもを家で1

人で過ごさせるわけにはいきません。児童相談所が保護すべきです。

 大阪では、子どもの一時保護をホテルにお願いしたという報道がありました。児童相談所が一時保護所以外の場所に子どもの保護を委託することはありますが、私はホテルは望ましくないと思います。子どもの様子を見ることができませんし、家で1人で過ごさせるのと同じになってしまいます。どうしても一時保護所で保護できない場合、児童養護施設など子どもの生活の面倒を見る、専門施設などの委託を検討すべきです。

日本の約6割を占める「核家族」の問題点

 核家族で、近くに頼れる親戚もおらず、近隣住民や 知人などにも頼れる人がいない場合は、子どもの面倒を見られなくなった時は本当に不安になります。ましてや今は、外出自粛が続いており、人との接触も控えるように言われていますから、子どもを預かってもらうのは難しい状況です。

こういう時こそ、公的機関を頼りましょう。幸いなことに、児童相談所の一時保護所での感染やクラスターは報道されていません。児童相談所がきちんと対応している、ということです。

通常ならば子どもに関する相談窓口は保健所も含まれますが、今は保健所は業務過多状態です。市町村の子ども家庭課や子ども家庭支援センターなども窓口ですが、子どもを保護できるのは児童相談所だけです。

子どもを預かって欲しい、と相談すると「預かってくれる親戚はいませんか?」と聞かれるかもしれませんが、説明すれば大丈夫です。虐待や非行による一時保護と違い、両親の病気の場合は、両親が回復さえすれば子どもを家に帰せる、という見通しが立っているので、児童相談所としても、抵抗なく保護できる、と言えます。

 ですので、両親が感染しても安心してください。子どもを保護してくれる場所はあり、子どもは安全に生活できます。お父さん、お母さんは安心して治療に専念し、子どもとまた生活できる日の為の準備を整えればよいのです。

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【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】