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豆による窒息を予防するために〜新しいマーク「豆は6つになってから」〜

山中龍宏小児科医/NPO法人 Safe Kids Japan 理事長
Safe Kids ニュースの冒頭(筆者撮影)

 今年もまもなく節分の日がやってくる。2022年の節分は2月3日である。この度、Safe Kids Japanでは、節分を前に「豆は6つになってから」とするマークを作った

「豆は6つになってから」のマーク(筆者撮影)
「豆は6つになってから」のマーク(筆者撮影)

 節分の豆まきで使用される、いわゆる「福豆」による子どもの気道異物・窒息については、このニュースでも何回か書いてきた。予防のための記事も書いたが、2020年2月3日、島根県松江市の保育施設で当時4歳の園児が節分の豆まきの豆で窒息し、亡くなった。

 松江市の窒息死亡事故を受け、Safe Kids Japanと子どもの事故予防地方議員連盟は2020年4月、日本ピーナッツ協会に対し、要望書を送付した。

 要望書には、

一般に流通・販売される乾燥した豆類が入っている袋には、下記の対応をお願いします。

・「4 歳未満の子どもには、豆は食べさせないでください」と大きな文字で記載してください。

合わせて、

・「子どもが泣き切った後や驚いたときなど大きく息を吸い込んだときに、口内にある豆が気管に入ることがあります。子どもが泣いているときは、豆を食べさせないでください」と小さな文字で記載してください。

と書いた。

 日本ピーナッツ協会には松江市の窒息死および我々の要望を真摯に受け止めていただき、加盟するすべての企業にこの要望書を送付してくださった。2021年には早速そのうちの数社の豆製品パッケージの表記が変更され、2022年には表記を変更した企業はさらに増えている。一例を紹介したい。

以上6点、すべて筆者撮影
以上6点、すべて筆者撮影

 2021年6月に同協会加盟企業を対象としたアンケートを実施したところ、ある企業から「わかりやすいマークのようなものがあると良い」という提案をいただいた。その提案を受けて完成したのが今回のマーク「豆は6つになってから」である。今まで「乾いた豆を避けるべき年齢」は3歳、4歳、5歳・・・とさまざまに言われてきたが、2020年2月に4歳児が亡くなったこと、そして2021年1月に消費者庁が「5歳以下の子どもには食べさせないで」という警告を発したことから、「6つになってから」とした次第である。

 また、このマークを広く知っていただくため、Safe Kids ニュースも作った。このニュースでは、なぜ子どもは「乾いた豆」で窒息しやすいのか、について説明している。

Safe Kids ニュース「豆は6つになってから」
Safe Kids ニュース「豆は6つになってから」

 豆による気道異物・窒息が教育・保育施設で起こるとニュースになるが、一般家庭でも同じことが起こっており、乾いた豆の危険性は同じである。「豆は6つになってから」を子ども自身も含め多くの人に知っていただき、今年も安全な豆まきを楽しんでいただきたいと考えている。

小児科医/NPO法人 Safe Kids Japan 理事長

1974年東京大学医学部卒業。1987年同大学医学部小児科講師。1989年焼津市立総合病院小児科科長。1995年こどもの城小児保健部長を経て、1999年緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。1985年、プールの排水口に吸い込まれた中学2年生女児を看取ったことから事故予防に取り組み始めた。現在、NPO法人Safe Kids Japan理事長、こども家庭庁教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員、国民生活センター商品テスト分析・評価委員会委員、日本スポーツ振興センター学校災害防止調査研究委員会委員。

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