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園の送迎バスに1歳児が轢かれて死亡

山中龍宏小児科医/NPO法人 Safe Kids Japan 理事長
この画像は本文とは関係ありません。(写真:アフロ)

 2020年2月18日午後3時10分ごろ、栃木県小山市の市道で、1歳児が幼稚園の送迎バスに轢かれて死亡した。バスが、姉を家の前まで送り届けた直後のことだった。バスの運転手は「周りを確認せずに発進してしまった」と供述している。(日経新聞、2020年2月19日、夕刊)

繰り返される幼児の轢死

 家族が運転する自動車で子どもが轢かれて死亡したり、重傷事故に遭うケースが多発している。2018年7月に、そして同年11月にも記事として出したが、相変わらず、同じ事故が起こり続けている。

 最近の事故例を挙げてみよう。

2019年6月 静岡市     1歳児が、家族の運転する車に轢かれて死亡

2019年6月 北海道ひだか町 3歳児が、家族の運転する車に轢かれ重傷

2019年6月 新潟県長岡市  1歳児が、駐車場で家族が運転していた車に轢かれて死亡

2019年9月 兵庫県西脇市  2歳児が、家族が運転する車に轢かれて重傷

 今回、園バスに轢かれて死亡したケースも、上記とほとんど同じ状況で発生している。2018年の記事にも書いたように、このような事故を予防するためには、園バスに死角の低減を目的としたカメラやセンサを設置する必要があるが、すぐに対応することは難しい。そこで、事故が起きやすい状況や、予防のために行うべきことついて前回の記事で12個くらい列挙した。しかし、園バスではできない、あるいはしないこともある。

死角をなくす対策を

 園バスは、毎日、日本中で走り回っており、同じような事故が起きる可能性がある。今回の事故が発生した詳しい状況はわからないが、園バスに死角が存在していたことは確かである。どのような死角があったのかを明確にして対策を立てる必要がある。

 こんな悲惨な事故を防ぐにはどうしたらいいのかと考えながら朝の通勤で自動車を運転していたら、前のトラックの表記が目に入った。

筆写撮影
筆写撮影

「私は誘導なしではバックしません。誘導お願いします」と書かれている。荷物が積んであると見ることができない表記だが、わかりやすい。このような表記を、園バスの車体と運転手の運転席の目の前に置いておくといいのではないかと思いついた。

 園バスの側面や後ろに「私は、合図なしでは、出発やバックをしません。合図をお願いします」と大きな文字で書くといいのではないか。運転手のハンドルの前にも、これを表示しておくといいのではないか。

 園バスが停車、発車するところには、必ず保護者がいる。「園児を含む子ども全員(もし友人の子どもを預かるのであればその子どもも含む)がバスから2メートル以上離れたら合図をする」というような取り決めをしてはどうか。また、カメラやセンサは高額であるが、路線バスについている縦型の大きなミラーを園バスに取り付けたらいいのではないか。いずれにしても、何らかの具体的な対策を講じないと同じ事故が発生することになる。

小児科医/NPO法人 Safe Kids Japan 理事長

1974年東京大学医学部卒業。1987年同大学医学部小児科講師。1989年焼津市立総合病院小児科科長。1995年こどもの城小児保健部長を経て、1999年緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。1985年、プールの排水口に吸い込まれた中学2年生女児を看取ったことから事故予防に取り組み始めた。現在、NPO法人Safe Kids Japan理事長、こども家庭庁教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員、国民生活センター商品テスト分析・評価委員会委員、日本スポーツ振興センター学校災害防止調査研究委員会委員。

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