Yahoo!ニュース

コロナ禍で「コロナ疎開」や「テレワーク移住」はトレンドになる?【#コロナとどう暮らす

山本久美子住宅ジャーナリスト
コロナ禍で住まい探しに新たな需要も(写真:アフロ)

コロナ禍で住まい探しは抑制?促進?

「Go To Travelキャンペーン」の補助対象から外された東京都ですが、6月1日時点の人口は1400万人を割って、5月よりも3405人減少しました。他県からの転入より転出が上回ったことが、人口増化に歯止めをかけた一因です。新型コロナの感染拡大も影響していると見てよいでしょう。

コロナ禍で首都圏の住宅の売買件数は減っています。新築マンションの2020年上期(1~6月)の供給戸数は対前年比で44.2%減(不動産経済研究所調べ)、中古マンションの2020年4~6月の成約件数は対前年比で33.6%減(東日本不動産流通機構調べ)と大きく落ち込んでいます。

その反面、「SUUMO」などの不動産物件閲覧数は増加しています。なぜでしょうか?コロナ禍で住まい探しを中止したり様子見をしたりしている人がいる一方で、新しい需要が発生して住まい探しが促進される人もいたからです。

リクルート住まいカンパニーが5月に実施した「コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査(首都圏)」によると、緊急事態宣言(4月7日)以降に住宅の購入・建築やリフォームの検討を行った人で、コロナ拡大による住まい探しへの影響の有無について回答した人で見ると、「影響はない」が最も多く42%で、「抑制された」が36%いる一方で、「促進された」も22%でした。

テレワークの経験が住まいの価値観を変えたか

住宅の売買については、常に一定の需要があると言われています。それは、結婚や子どもの誕生、入園・入学といったライフステージの変化や転勤・転職による勤務先の変化が住まい探しのきっかけになるからです。今回はこれらに加えて、「在宅勤務になった」というきっかけ要因が加わりました(リクルート住まいカンパニー調べ)。

在宅勤務によって、「通勤ストレスから解放された」「自分の時間・家族と過ごす時間が増えた」といったメリットを感じた一方で、「オンオフの切り替えが難しい」「仕事をするのに適した場所がない」といった困りごとを抱えた人が多いという調査結果(WOOC調べ)もあります。こうした体験が、従来の住まいへの価値観を変えて、新しい需要を生み出したと言ってもよいでしょう。

withコロナで人気急上昇の街はどこ?

リクルート住まいカンパニーがSUUMOの物件閲覧数を調べたところ、この5・6月で興味深い傾向が見られました。特に中古一戸建ての閲覧数が顕著で、2020年1月を100%とした場合、5月と6月では自然豊かな街、リゾート感覚の街の人気が上がっているのが分かります。

■中古一戸建ての閲覧数の伸び率(SUUMO調べ)

5月

1. 木更津市(千葉県)220.0%

2. 館山市(千葉県)211.2%

3. 三浦郡葉山町(神奈川県)199.8%

4. 那須郡那須町(栃木県)196.1%

5. 逗子市(神奈川県)189.0%

6月

1. 千葉市緑区(千葉県)233.9%

2. 富津市(千葉県)201.1%

3. 千葉市美浜区(千葉県)190.1%

4. 三浦郡葉山町(神奈川県)186.5%

5. 館山市(千葉県)184.4%

中古マンションでも同じような傾向が見られますが、5月6月ともに「横浜市瀬谷区」が200%前後の伸び率を見せるなど、広いマンションがリーズナブルな価格で買える郊外都市も上位に加わっています。

出典:リクルート住まいカンパニー
出典:リクルート住まいカンパニー

自然豊かな、リゾート感覚の街の中古住宅であれば、安く購入することができます。買い替えるのではなく買い増し、つまり拠点を2軒持って、一定期間拠点を変えたり2軒で行ったり来たりする「コロナ疎開」的な暮らしができるでしょう。

また、テレワークが今後も継続するとしても、週に数日は勤務先に通うのであれば、遠くに移住することが難しくなります。仕事をするための個室や広いリビング空間なども必要になるので、広めの住まいを自然の多い近郊外に購入するという「テレワーク移住」的な選択も増えるでしょう。

「コロナ疎開」「テレワーク移住」は増えるのか?

別の事例を紹介しましょう。「別荘リゾートネット」という、リゾート物件専門のサイトがあります。こちらも5月から閲覧数や資料請求件数が伸び、6月は閲覧数が対前年比で2倍に、資料請求件数は対前年比3.7倍にまで増加したといいます。閲覧数が多いのは伊豆や那須・軽井沢、伸び率が高いのは箱根・湘南・富士山麓だそうです。

「別荘リゾートネット」トップ画面
「別荘リゾートネット」トップ画面

もう一つの事例もあります。6月26・27日に「みんなの移住フェス2020・オンライン」が開催されました。筆者もいくつかのプログラムをWEBで見ましたが、2日間でのべ約6500人が参加したと報告がありました。主催したカヤックLivingでは、移住・関係人口促進のためのマッチングサービス「SMOUT」を運営していますが、新規登録者が5月から急増し、6月は4月比で2倍以上に増えています。なかでも東京都在住の新規登録者が急増したということです。

出典:SMOUT
出典:SMOUT

さて、「Yahoo!ニュース みんなの意見」でも、新型コロナを契機に移住について考えたかどうか聞いています。結果は「考えたことはない」が最多の76.1%ですが、「移住を決断した」が3.1%、504票も入っています。「具体的に検討している」人と合わせると7.7%、1236票になります。意外に多いという実感です。

出典:Yahoo!ニュース みんなの意見
出典:Yahoo!ニュース みんなの意見

ただし、コメントを見ると移住をかなり広い意味でとらえているようです。都心部から地方定住といった動きより、まずはテレワークが可能な近郊外への移住といった動きが見られるようになるのではないかと思います。

そうはいっても、興味関心があるこことと、実際に購入して具現化することには、少し開きがあるでしょう。コロナ禍でニューノーマルの生活様式を経験し、コロナ疎開やテレワーク移住への関心が高まっていることは確かですが、実行されるかどうかは今後に注目したいところです。

住宅ジャーナリスト

早稲田大学卒業。リクルートにて、「週刊住宅情報」「都心に住む」などの副編集長を歴任。現在は、住宅メディアへの執筆やセミナーなどの講演にて活躍中。「SUUMOジャーナル」「東洋経済オンライン」「ビジネスジャーナル」などのサイトで連載記事を執筆。宅地建物取引士、マンション管理士、ファイナンシャルプランナー等の資格を持つ。江戸文化(歌舞伎・落語・浮世絵)をこよなく愛する。

山本久美子の最近の記事