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PayPayもカード投信積立 残高併用で「月10万円」可能に

山口健太ITジャーナリスト
PayPayがカード投信積立に対応(Webサイトなどから、筆者作成)

PayPayが「PayPay資産運用」において投信積立のクレジットカード決済に対応することを発表しました。10月15日より提供が始まっています。

NISA対応やカード投信積立で後発となったPayPayですが、他社に対抗できる内容になっているのでしょうか。詳しく見ていきます。

残高との併用で「月10万円」可能

投資信託の積み立てにおいてはクレジットカード決済の人気が高まっており、各経済圏でポイント還元率などの競争が激化しています。

PayPayが注力する「PayPay資産運用」は出遅れていたものの、PayPay残高を利用した積み立てに加えて、ついに「PayPayカード」によるクレジット決済にも対応しました。

2024年からの新NISA口座にも対応。ポイント還元率は一般カード、ゴールドカードともに「0.7%」で、終了日未定の恒久的な特典という位置付けです。

年会費無料のカードで1%還元を提供しているところはあるものの、楽天証券(楽天カード)やSBI証券(三井住友カード)の一般カードでは「0.5%」であることから、その上を狙ってきた印象です。

還元率がゴールドカードでも同じというのは意外な点ですが、「各種リサーチ等を踏まえ総合的に検討した結果」(PayPay広報)としています。

もう1つの大きな特徴は、PayPay残高を利用した積み立てと併用ができる点です。

クレジット決済の上限は「月5万円」にとどまるものの、PayPay残高を併用することでポイント還元を得ながら「月10万円」の積み立てが可能になります。

合計月10万円までポイント還元を得られる(PayPayのWebサイトより)
合計月10万円までポイント還元を得られる(PayPayのWebサイトより)

他社の場合、楽天証券は楽天カードと楽天キャッシュの組み合わせで「合計10万円」を実現しているものの、一般カードでの還元率はPayPayが上回っています。

SBI証券は、新NISA口座でクレジット決済と現金の併用が可能になることを発表しています。ただ、SBI証券によればクレジット決済の上限は5万円のまま変わらないとのことです。

なお、金融庁ではクレジット決済の上限額を引き上げる議論が始まっていることから、新NISAの開始には間に合わないとしても、将来的には改善に向かう可能性があります。

一方、PayPayの仕組みには注意点もあります。まず、クレジットと残高を併用する場合、同じ銘柄を積み立てることはできないという制限があります。

銘柄ごとに残高とクレジットの選択制となっている(PayPayのアプリ画面より、筆者作成)
銘柄ごとに残高とクレジットの選択制となっている(PayPayのアプリ画面より、筆者作成)

たとえば全世界株式に投資したい場合、PayPay資産運用が取り扱う銘柄の中では「PayPay投資信託」と「eMAXIS Slim」を積み立てることで回避できるものの、銘柄を統一できないのは煩雑な印象を受けます。

異なる銘柄であればクレジットと残高を併用できる(PayPayのアプリ画面より、筆者作成)
異なる銘柄であればクレジットと残高を併用できる(PayPayのアプリ画面より、筆者作成)

同じ銘柄を積み立てられない理由は「PayPay証券のシステム上の制約によるもの」(PayPay広報)とのことから、今後のがんばりを期待したいところです。

また、クレジット決済の積み立ては「毎月28日」で固定となっているものの、年末には注意が必要です。これはNISAの非課税枠が注文日や約定日ではなく「受渡日」で判定されるためです。

注文日は28日だが受渡日は銘柄によって異なる(PayPayのアプリ画面より、筆者作成)
注文日は28日だが受渡日は銘柄によって異なる(PayPayのアプリ画面より、筆者作成)

PayPayの説明によれば、受渡日は銘柄によって異なるため、12月28日の注文分が年内の扱いになるかは一概には言えないとのこと。新NISAについては後日改めて案内予定とのことなので、要確認でしょう。

体力勝負のポイント還元が続く

PayPay資産運用では、株やETFは相対取引のサービスとなっており、一般的な取引所取引とは異なるスプレッド(PayPay側の利益)が含まれる点には注意が必要です。

しかし投資信託については販売手数料は無料、かかるコストは信託報酬のみとなっており、投信積立については他のネット証券と同等と理解してよさそうです。

PayPayが期待できるのは信託報酬の中の販売会社の取り分ということになりますが、それも低コスト競争が進んでおり、PayPayが儲けを得るには何年もかかるとみられます。

それでも、経済圏全体への影響を考えれば新NISAの競争には参戦したほうがメリットは大きいという考え方です。体力勝負には慣れているPayPayの参入により、競争がさらに激化することは間違いないでしょう。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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