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Twitter関連サービスで混乱続く 「Bluesky」の流行につながるか

山口健太ITジャーナリスト
新APIへの移行が進んでいる(TwitterのWebサイトより、筆者撮影

4月に入り、Twitterを利用したサードパーティのサービス終了が相次ぐなど、混乱が拡大しています。新しいSNSに目を向ける動きが加速するかもしれません。

関連サービスの終了が相次ぐ

Twitterは今年1月、サードパーティのクライアントアプリを規約で禁止したことが話題になりました。

サードパーティのアプリといえば、今年1月に規約で禁止された公式以外のクライアントアプリを思い浮かべる人が多いかと思います。

しかし、実際には「API」を利用してTwitterとつながる外部のサービスもサードパーティアプリに含まれます。このAPIは2月に有料化の方針が示され、3月末に詳細が発表されました。4月29日には従来のAPIが「非推奨」になると案内されています。

一般的に、非推奨となったAPIはいつ提供が終わってもおかしくありませんが、広く公開されているものの場合、影響範囲を考慮しながら長めに提供を続けるものもあります。

しかしTwitterの場合、新APIの発表からわずか数日で終了するサービスが相次いでいます。たとえばツイートをEvernoteに保存してくれる「ツイエバ」は4月5日にサービスを終了しています。筆者も10年ほど使わせてもらっていました。

こうした動きから、あたかもTwitterが長年貢献してきたサードパーティを潰そうとしているかのように感じるところですが、いったい何が起きているのでしょうか。

まずは外部のクライアントアプリを禁止したように、Twitterが公式に提供する機能の利用を増やすためにサードパーティを遮断するか、確実に収益につなげていく方向に舵を切ったと考えられます。

その上で、新しいAPIは料金体系が特徴的です。テスト用のFreeプラン(無料)、趣味やプロトタイプ用のBasicプラン(月額100ドル)の次は、企業向けの月額4万2000ドル(約555万円)からとされるプランとなっています。

サードパーティの事業者の中には個人やスモールビジネスが多く、数百〜数千ドル程度のプランがあればサービスを継続できると思われますが、この価格帯を意図的に省いていることがうかがえます。

Twitterの広報が機能していないため詳細は不明ですが、これまでの大幅な人員削減によって、大口の顧客しか相手にできないほど余裕がなくなっているようにも見受けられます。

追記:

5月25日(米国時間)、新たに「Pro」プランが追加されました。料金は月額5000ドルで、これまでのBasicと大企業向けの中間に位置しています。

悪いのはマスク氏?

混乱の元凶として、大富豪のイーロン・マスク氏がTwitterを乗っ取り、やりたい放題やっている、と感じている人が増えているようです。

そうした面もあるとは思いますが、実際にはマスク氏はTwitterの買収を途中でやめたがっていたとみられ、元の株主からの訴訟に負けそうになり、しぶしぶ買わされる形になっています。

もちろん、マスク氏がTwitterを買収するなどと言わなければこんなことにはなっていないので、その点は自業自得です。また、元の株主にとってはパッとしない業績が続いていた同社を高く売る千載一遇のチャンスだったのでしょう。

結果的にTwitterは莫大な借金を背負い、社内の備品を売るほどの状況に追い込まれながらもサービスの提供を続けています。その暴風が吹き荒れる中で、サードパーティだけが平穏というわけにはいかないのが現状といえます。

その上で、マスク氏の奇行が目に余るという声も高まっています。突如としてアイコンを柴犬に変えたかと思えば、現在はニュースレターサービス「Substack」のリンクを含むツイートを拡散させないといった妨害が始まり、話題となっています。

これはSubstackがTwitterに類似したサービスを始めたことがきっかけとみられています。マスク氏による説明は多くの人が納得するものにはなっておらず、今後もこうした問題に振り回されるのではないかと予想されます。

追記:

Substackの公式アカウントはこの問題が解決したことを報告しています(ただし、まだ検索には問題があるようです)。

「Bluesky」の流行につながるか

新しいSNSに目を向ける動きは進むのでしょうか。これまでMastodon、Misskey、Nostrといったサービスが注目を集めてきましたが、ここ数日は「Bluesky」の話題で持ちきりとなっています。

BlueskyはTwitterの一部として始まったプロジェクトで、Twitter創業者のジャック・ドーシー氏が関わっています。公益目的のLLC(PBLLC)という会社形態を採用していることもTwitterとの対比として興味深い点です。

公式ブログによれば、Blueskyは分散型SNSのための新たなプロトコルを開発しており、現在はそのプロトコルの上にTwitterを構築するとどうなるかを示す見本のようなアプリが提供されています。

BlueskyのiOS版アプリ画面(App Storeより)
BlueskyのiOS版アプリ画面(App Storeより)

招待制のベータ版となっており、登録にはすでに使っている人から招待コードを送ってもらう必要がありますが、Substackのライター向けには優先アクセスを提供しているようです。

筆者自身も登録したばかりでまだ多くを理解していないのですが、公式アプリはiOS版のみで、まだAndroid版はありません。しかし「なければ自分で作ればいい」という参加者の熱量が感じられるのが面白いところです。

Twitterの一部機能が実装されている(Blueskyのアプリ画面より、筆者作成)
Twitterの一部機能が実装されている(Blueskyのアプリ画面より、筆者作成)

Twitterから多くの人が大挙して移動するといった状況にはなっていませんが、Twitterの混乱にうんざりしたサードパーティ開発者の参加が続いていけば、流行のきっかけになるかもしれません。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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