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賃貸に「スマートロック」導入は進むか? 鍵の管理をDXで効率化

山口健太ITジャーナリスト
賃貸管理「スマートロック」で効率化(MIWA Akerun提供画像)

スマートロック「Akerun(アケルン)」を使って、マンションやアパートなど賃貸物件の管理業務を効率化できるシステムが登場しました。物件選びにおいて、スマートロック導入の有無が重要になる時代がやってくるかもしれません。

物理鍵は不要に。クラウド管理で業務効率化

賃貸物件の管理において、「物理的な鍵」を扱うことに大きな手間やコストがかかっているといいます。

たとえば内見の際には、管理会社との間で鍵の受け取しが必要になります。入居中は鍵の紛失などのトラブル対応、退去時には鍵の交換など、さまざまなコストがかかっています。

セキュリティ面での課題として、内見用の鍵を入れた「キーボックス」を悪用し、ネット通販で不正購入した商品を空き家で受け取る事件や、ポストに入れておいた鍵を複製されて空き巣被害が発生した事例もあるようです。

すでにホテルではカードキーが一般的に使われていますが、賃貸物件においてもアプリやICカード、暗証番号で鍵を開けられるスマートロックを導入する動きが進んでいます。

不動産事業者向けの管理システムは、同じくスマートロックで人気の「Qrio」が2022年2月に提供を開始。そして今回、Akerunが「Akerun.Mキーレス賃貸システム」を発表しました。

特徴は、スマートロックをクラウド上で管理することで、物理鍵が不要になるというもの。Web画面からの操作で鍵の発行や権限の削除ができるので、時間を大幅に節約できるとしています。

賃貸住宅を「スマートロック」で管理できる(MIWA Akerun提供資料)
賃貸住宅を「スマートロック」で管理できる(MIWA Akerun提供資料)

たとえば内見の際には、管理会社はWeb画面から利用日を限定した「暗証番号」を発行。仲介業者などの携帯電話番号を指定して、SMSで送信できます。

入居者向けには鍵を発行するためのリンクをSMSで送信できます。入居者はこのリンクから、いつも使っているSuicaなどのICカードを鍵として登録できる仕組みです。

ほかにも、家族や友人と合鍵の共有、ICカード紛失時や退去時の鍵の無効化といった操作もクラウド上で実現。効率化で得られた時間は、物件価値の向上や入居者サポートに回せることをメリットに挙げています。

Akerunを提供するフォトシンスは、2021年に美和ロックと合弁会社「MIWA Akerun Technologies」を設立。住宅向けシステムで連携を進めており、これを賃貸物件に応用したのが今回発表したシステムといえそうです。2023年1月に提供を開始し、3年間で大手管理会社の導入シェア4割を目指す計画です。

高齢化が進む不動産業界では、DXや不動産テックによる業務効率化が求められています。法改正により2022年5月には不動産の「電子契約」が解禁されるなど、政府による後押しもある中、同社はスマートロック市場の拡大に期待を寄せています。

賃貸へのスマートロック導入は進むか

スマートロックの導入が進むと、物理鍵が不要になるだけでなく、これまで難しかった新しいサービスも期待できるようになります。

宅配サービスでは、2022年3月にヤマト運輸と連携。利用者の承諾のもと、配達員が集合住宅のエントランスを通過し、玄関前への「置き配」が可能になるとしています。今後は家事代行、見守り、デリバリーなどの連携も視野に入れているようです。

スマートロックは個人でも導入できるとはいえ、実際にはいろいろなハードルがあります。玄関のドアに取り付けたとしても、結局は共用部の出入りに鍵が必要という場合もあるようです。

そういう意味では、最初から賃貸物件に組み込まれているに越したことはありません。これからは「スマートロック導入済み」が、賃貸物件選びの重要なポイントになっていくかもしれません。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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