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LINE証券のSTO「デジタル証券」販売開始 資産形成の入り口になるか

山口健太ITジャーナリスト
LINE証券でデジタル証券が販売開始(筆者撮影)

6月14日、LINE証券において新しい金融商品「デジタル証券(ST)」の販売が始まりました。STを使えば社債や不動産を「小口化」することが可能になり、若年層でも投資しやすくなるといいます。資産形成の入り口になるか、注目です。

「デジタル社債」メリットは?

デジタル証券(セキュリティトークン、ST)は、2020年5月の法改正によって実現した新しい金融商品です。

このSTを発行することによる資金調達を、STO(Security Token Offering)と呼んでいます。2021年4月にはSBI証券が一般投資家向けに初のSTOを実施。2022年5月にはLINE証券もSTOサービスへの参入を発表しました。

その第1弾が、スパークス・グループが発行する「デジタル社債」です。一般的な債券は振替機関を通じて権利の移転・記録が行われるのに対し、デジタル社債はブロックチェーン技術の利用が特徴といいます。

STOを利用して社債を発行するメリットとしては、「小口化」ができることを挙げています。今回のデジタル社債の場合、買い付けは1口5万円以上、5万円単位で、上限は20口となっています。

最近話題になった「楽天モバイル債」では、買付は50万円以上、50万円単位となっていました。これに比べると、資金の少ない個人投資家でも手を出しやすい設定といえます。

LINE証券で販売中のデジタル社債。1口5万円から買い付けできる(アプリ画面より、筆者作成)
LINE証券で販売中のデジタル社債。1口5万円から買い付けできる(アプリ画面より、筆者作成)

LINE証券では、130万口座のうち20代・30代のユーザーが半数以上、投資未経験者が6割以上を占めるとのこと。「若年層に馴染みの薄い社債に、STOなら少額から投資できる」(LINE証券 代表取締役 Co-CEOの正木美雪氏)と狙いを語っています。

申し込み受付は6月14日10時から6月20日10時まで。申し込みが多い場合は抽選になるとしています。発行額は10億円で、償還日は発行から1年後の2023年6月23日。購入にあたっての手数料は不要。申し込み時にはあらかじめ入金しておく必要があります。

利率である年2.50%(税引後は年1.99%)については、「日本の金利水準などと比べても高く、投資の実感を持っていただけるよう設定した」(スパークス・グループ 代表取締役副社長 グループCOOの深見正敏氏)としています。

どれくらいの申し込みがあるかは分かりませんが、5月に丸井グループが発行したデジタル社債では、1億円の発行予定額に対して約20億円分の抽選申し込みがあったとのことです。

なお、社債はリスクがある金融商品であることに加えて、ブロックチェーンに対するサイバー攻撃などで損失を被る可能性があるとも説明されています。実際に投資するかどうかは、条件などを確認して各自で判断してください。

「ワイン」や「メタバースの土地」にも投資可能に?

デジタル証券の第1弾は社債となりましたが、ほかにもLINE証券は不動産、未上場株、実物資産、メタバースの土地、NFTなどにSTで投資できるようにする構想を掲げています。

LINE証券によるSTOの展開構想(説明会の動画より)
LINE証券によるSTOの展開構想(説明会の動画より)

実物資産の例としては、ワインやウィスキー、クラシックカーを挙げています。これらに投資しようとしても、まとまった資金が必要になり、保管コストがかかるなど、実際に投資することは容易ではありません。

実質的に投資できるのは富裕層だけとなりがちでしたが、STOにより小口化されたデジタル証券になれば、一般の投資家も手を出しやすくなります。

「貯蓄から投資へ」が叫ばれる中で、まだ貯蓄が少ない人は、毎月の収入の中から投資に振り向けていくことになります。その中で、これまでにない小口化が可能になるデジタル証券の人気は高まるか、注目といえるでしょう。

追記:

2023年6月12日、LINE証券は証券サービスを野村證券に移管することを中心とした事業再編を発表。STOサービスも証券サービスの一部と説明されています。

LINE証券の事業再編に関するお知らせ | ニュース | LINE株式会社

なお、スパークス・グループが発行したデジタル社債は2023年6月23日に問題なく償還されました。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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