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「クレカで地下鉄に乗れる」福岡で開始。メリットは?

山口健太ITジャーナリスト
福岡市地下鉄で「Visaのタッチ決済」始まる(筆者撮影)

5月31日、福岡市の地下鉄にクレジットカードのタッチ決済で乗れるサービスの実証実験が始まりました。交通系ICカードにはすでに対応していますが、メリットはあるのでしょうか。現地で試してきました。

スピードはわずかに遅い程度

博多や天神に空港から1本で行ける福岡市地下鉄の「空港線」は、福岡を訪れるたびに必ずといっていいほど筆者も利用しています。

その主要駅において、一部の改札機が「Visaのタッチ決済」に対応しました。交通系ICとVisaのタッチ決済が一体型になった自動改札機は初めてとのこと。2023年2月末までの実証実験という位置付けです。

Visaのタッチ決済に対応した改札機(中洲川端駅にて、筆者撮影)
Visaのタッチ決済に対応した改札機(中洲川端駅にて、筆者撮影)

改札機の手前側にVisaのタッチ決済に対応したリーダーが設置されており、事前に切符購入やチャージをすることなく、カードをタッチするだけで改札を通ることができます。

利用できるカードは、Visaのタッチ決済に対応したクレジット、デビット、プリペイドカードで、スマホにも対応しています。国際ブランドは、三井住友カードによればどのブランドにも対応することを目指しているそうですが、現時点ではVisaのみとなっています。

タッチ決済に対応したクレジットカードやスマホで改札を通れる(筆者撮影)
タッチ決済に対応したクレジットカードやスマホで改札を通れる(筆者撮影)

運賃は、改札から出る際にリーダーと一体になったディスプレイに表示されます。リーダーの上には自分のカードをかざしているので、やや見づらい印象がありました。

なお、QUADRACが提供する「Q-move」に会員登録(無料)をしておくと、過去の乗車履歴をWebサイトで確認できます。

気になる処理速度については、すでに導入している南海電鉄と同様に、交通系ICと比べてわずかに遅く感じる程度でした。これくらいのスピードなら、福岡市地下鉄によれば利用者の多い時間帯でもそれほど問題になることはなさそうです。

ただし、タッチ決済で連続して通過しようとすると、次に通過できるまでにやや時間がかかる仕様とのこと。当面は考えにくいものの、タッチ決済の利用者が集中した場合は待たされる可能性があります。

実証実験の対象駅は、5月31日時点では「福岡空港」「博多」「天神」など空港線と箱崎線の7駅。対象駅であっても、タッチ決済で通れる改札機がない改札口もありますが、その場合は有人窓口で対応してもらえるとのことです。

実証実験の対象駅(筆者撮影)
実証実験の対象駅(筆者撮影)

問題は、対象外の駅の改札から出たい場合です。この場合、窓口で現金などで運賃を精算し、後ほど対象駅の窓口でカードの入場記録を取り消す必要があるといいます。

実証実験ということもあり、福岡市地下鉄としては改札機の導入費用を負担していないとのこと。クレジットカードなどの決済手数料は負担するものの、新たな利用者が増えることによる売上増や、券売機利用が減ることを期待できるそうです。

残高を気にせず乗れる。訪日外国人にも期待

福岡市地下鉄には、交通系ICカードとして「はやかけん」もあります。しかしオートチャージの機能はなく、現金でチャージする必要がありました。

交通系ICカード「はやかけん」(筆者撮影)
交通系ICカード「はやかけん」(筆者撮影)

その点、クレジットやデビット決済であれば「残高を気にする必要がない」のがメリットといえます。技術的には「定期券」などにも対応できるとのことです。

今後は訪日外国人の利用も期待されています。交通系ICはハードルが高いものの、手持ちのVisaカードでそのまま乗れるのであれば、タクシーではなく地下鉄を使ってみる人も出てきそうです。

7月15日からは、西日本鉄道の電車(西鉄電車)もVisaのタッチ決済に対応し、「太宰府」にも行けるようになります。福岡を訪れた際にはぜひ試してみたいサービスといえるでしょう。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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