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「ツイッター有料化」の可能性は? 広告依存から脱却できるか

山口健太ITジャーナリスト
Twitterの有料サブスク「Twitter Blue」(Webサイトより)

Twitterがイーロン・マスク氏による買収提案を受け入れたことで話題となっていますが、その中で「Twitterが有料化するのではないか」との見方があります。果たしてその可能性はあるのか、考察してみます。

海外では有料サブスクを展開

4月26日の夜、Twitterの「日本のトレンド」において有料化の話題が1位になりました。その後も多くの関連したツイートが投稿され、議論が白熱しています。

「Twitter有料化」が日本のトレンド1位に(TwitterのWebアプリより)
「Twitter有料化」が日本のトレンド1位に(TwitterのWebアプリより)

この有料化の話は、マスク氏が買収合意前の4月10日、有料サブスクリプションの価格を月額2ドルまでにするなどの提案をツイートしたことがきっかけになっていると思われます。

これはTwitterが海外で提供している「Twitter Blue」についての発言とみられます。現時点では米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドに展開しており、米国での料金は月額2.99ドル(約385円)です。

Twitter Blueに加入すると、それほど多くはありませんが追加の機能を使えるようになります。ツイートした後に一定時間(5〜60秒)は取り消しができる機能、ブックマークしたツイートをフォルダ分けする機能、10分以上の動画、高画質(1080p)の動画をアップロードできる実験的な機能などが用意されています。

Twitter Blueの設定画面(TwitterのWebアプリより)
Twitter Blueの設定画面(TwitterのWebアプリより)

アイコンに「NFT」を設定する機能もあります。設定すると形状が六角形になり、通常の円形アイコンと区別できるため、アイコンで自己主張したい人には最適といえるでしょう。

NFTを設定するとアイコンが六角形になる(Twitter Blueの公式アカウントより)
NFTを設定するとアイコンが六角形になる(Twitter Blueの公式アカウントより)

この中で誤解されやすいのが「広告」の扱いです。タイムラインから広告がなくなると勘違いしている人が見受けられますが、Twitter Blueを契約している状態でも「プロモーション」のツイート(つまり広告)は普通に表示されています。

その代わり、Twitter Blueでは一部のオンラインメディアの記事を広告なしで読めるサービスがあります。ワシントン・ポストやロイター、BuzzFeed Newsなどの米国メディアが対象です。

ただ、これも注意点があり、各メディアが提供する有料のサブスクとは別の扱いとなっています。Twitter Blueを契約すれば、各メディアの有料記事をすべて読めるわけではないということです。

このように、現時点でのTwitter Blueは微妙な内容という印象は否めません。そこでイーロン・マスク氏は買収合意前からさまざまな改善を提案しています。

有料化で広告依存から脱却できる?

Twitterの「有料化」が注目される背景として、マスク氏が広告を中心としたビジネスモデルに否定的であること、また「言論の自由」を強力に推進しようとしていることが挙げられます。

Twitterの売上の9割は広告によるものです。もし有料サブスクが売上の主体になれば、広告主への依存度が下がり、より自由なポリシーで運営できるようになるわけです。

Twitterの広告売上をユーザー数で割ると、1人あたりの売上(ARPU)は月額2ドル前後。もし世界中のTwitterユーザーがサブスクに加入すればまかなえそうですが、有料になっても使い続けたい人はごく一部でしょう。国や地域によっては所得水準に合わせて料金を引き下げる必要もあるはずです。

あるいは、マスク氏はTwitter Blueで広告を表示しないことも提案(現在は削除済み)しています。しかし同様の仕組みがあるYouTube Premiumの場合、有料プランに加入する余裕のある人が広告を見なくなることで、広告が届く客層が変わるのではないか、との問題も指摘されています。

このように、Twitterを広告モデルから脱却させるというのは現実的ではありません。有料サブスクがどのように改善されるかは注目ポイントになりそうですが、今後も多くのユーザーは広告を見ながら無料で使い続けることになると思われます。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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