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ヤフーの主要サービスが欧州から利用不可に。日本からの旅行者も対象

山口健太ITジャーナリスト
Yahoo! JAPANの主要サービスが欧州から利用不可に(Webサイトより)

4月6日から、Yahoo! JAPANの主要サービスがEEA(欧州経済領域)およびイギリスから利用できなくなることが発表されました。日本人旅行者を含め、欧州の主要な国や地域からのアクセスできなくなることで大きな影響がありそうです。

Yahoo! JAPANの発表によると、「Yahoo!メール」「Yahoo!カード」「ebookjapan」を除くすべてのサービスとなっており、Yahoo!メールについても一部機能制限があるようです。

たとえばブラウザでYahoo! JAPANのトップページを開くと、4月6日以降は「対象地域からはご利用いただけなくなりました」との案内のみが表示されるようになるとのことです。

具体的な地域としては、EU(欧州連合)27カ国にリヒテンシュタイン、アイスランド、ノルウェーを加えたEEAの30カ国、そしてイギリスの合計31カ国となっています。これらの国や地域の居住者だけでなく、現地を訪れている日本からの旅行者なども含まれます。

ヤフーによれば、対象となる国や地域は以下の通りです。

オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、キプロス、チェコ、デンマーク

エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド

イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ポーランド

ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン

リヒテンシュタイン、アイスランド、ノルウェー、イギリス

背景について、ヤフー広報室は「今後の法令遵守対応コストなどの観点から、継続的にサービス利用環境を提供していくことが難しいと判断した」と説明しています。4月6日午前11時(日本時間)というタイミングについては、ヤフーが以前から進めてきた準備が整ったことによるもので、特定の理由はないとしています。

具体的にどのような法令への対応コストなのかは明言していないものの、欧州で個人情報の取り扱いについて定めた「EU一般データ保護規則(GDPR)」や、欧州で1月20日に可決した「デジタルサービス法(DSA)」(こちらは欧州に4500万人以上のアクティブユーザーがいる巨大テック企業が対象)との関連が指摘されています。

GDPRは欧州(EUを含むEEA)にサービスを提供する全世界の事業者が対象になっており、最近では2021年7月に米Amazon.comが過去最大となる7億4600万ユーロ(約971億円)の罰金を科されたことで話題になりました。

当初、主なターゲットはGAFAMを始めとする米国の巨大テック企業ではないかとみられていましたが、実際には欧州の大企業であっても罰金を科される事例があることから、日本企業としても軽視できない法令という印象です。

なお、EUにもEEAにも加盟していないスイスは対象外となっており、4月6日以降も問題なく利用できるようです。関係があるかは分かりませんが、スイスにはGDPRとは異なる独自の連邦データ保護法(FADP)があります。

2022年4月6日追記:

発表の通り、欧州からWebサイトやアプリにアクセスできなくなったようです(日本からVPNを利用して確認)。

インターネットに「国境」ができるのは残念

筆者はコロナ以前には1年に数回、欧州に渡航しており、テック系の展示会や企業取材をしていました。さらに普通の旅行者や、欧州在住の日本人などを含め、現地からYahoo! JAPANにアクセスできなくなるというのは衝撃です。

IPアドレスなどをもとにアクセスを制限する場合、欧州以外の地域を経由することで技術的にアクセスできる可能性はあります。たとえばVPN事業者のサービスを利用したり、会社支給のパソコンで日本のオフィスにVPNで接続したりする方法が考えられます。

いずれにしても、政治体制が違う国や地域ならともかく、欧州と日本の間でインターネットに「国境」ができてしまうのは残念なところ。ヤフー側で法令対応を進めることで利用再開に向けて動いてほしいところですが、今後については「現時点で決まっていることはない」(ヤフー広報室)としています。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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