2021年8月に登録者数が4100万人を突破するなど、スマホ決済「PayPay」の成長が続いています。その加盟店が支払う手数料が10月から有料化されたことに伴い、手数料分を「上乗せ」して客に請求するお店の存在がSNSで話題になっています。

お店側の運営コストをお客さんに負担してもらうのはよくある話に思えますが、やり方次第ではPayPayの規約に違反する恐れがあります。

手数料「上乗せ」は規約違反の恐れ

PayPayの加盟店が負担する決済手数料は、主に中小店舗向けの「ユーザースキャン」方式については3年間無料でした。営業担当者は全国の中小店舗を一軒一軒訪ね歩き、「無料の間だけでも入れてみては」とのセールストークで加盟店を広げてきました。

PayPayは3年間の期間限定で中小店舗向けに「決済手数料0円」をうたってきた(2018年11月の発表会にて、筆者撮影)
PayPayは3年間の期間限定で中小店舗向けに「決済手数料0円」をうたってきた(2018年11月の発表会にて、筆者撮影)

その無料期間が終わったことで、税別1.60〜1.98%の手数料を上乗せして客に請求しているお店が出てきたというわけです。あるいは上乗せではなく、現金払いの場合だけ割引をするという方法も考えられます。

果たしてPayPay側はどう考えているのでしょうか。規約に照らし合わせて確認してもらったところ、どちらの行為も禁止しているとのこと。PayPay広報による回答は以下の通りです。

「PayPay加盟店規約 第4条第3項および第18条第1項に規定しておりますように、『会計時にPayPayを利用するユーザーに手数料を上乗せして請求する行為』や『現金払いの場合のみ割引する行為』を禁止しております。よって、加盟店においてPayPayを利用する上で発生する手数料を、当該加盟店を利用するPayPayユーザーに負担させる行為は弊社として許容しておりません」

PayPay以外のスマホ決済はどうでしょうか。au PAYについては、「加盟店規約で、お客様への手数料転嫁を認めていない旨を規定しております。現金等他の決済手段と比較して差分をつけることについても、当社としては第9条の『本サービスによる支払いを行おうとする顧客に不利となる差別的取扱い』に抵触する可能性があると考えております」(KDDI広報)との回答。

楽天ペイも基本方針は同じとした上で、「もし同様の状況が当社サービスで発生したといたしましても、各案件で状況が異なることが想定されますので、各事案にあわせて個別に判断することになります」(楽天広報)としています。

d払いも同様に、「他の決済手段と比較して差別的な扱いをすることは、規約で禁止しております」(NTTドコモ広報)との回答になりました。

各社に共通しているのは、「現金とスマホ決済」のように決済手段によって差を付けないでほしいという考え方です。ただ、具体的な事例については「個別に判断する」とも補足しています。

たとえば現金払いの際に割引を受けられる会員制度があるスーパーマーケットや、現金払いのほうが独自ポイントの付与率が高い家電量販店が存在します。このような加盟店独自の取り組みはスマホ決済と共存できるようです。

キャッシュレス導入による値上げなら許容したい

こうして見ていくと、まるでキャッシュレス決済のコストは店舗側がすべて負担する必要があるかのように感じるかもしれませんが、そうではありません。

手数料分を露骨に上乗せするような行為は問題ですが、店舗運営にかかるコストとして、商品やサービスの価格に反映すること自体は禁止されていないからです。キャッシュレスの便利さを考えれば、多少の値上げは許容したいと筆者も考えています。

一方で、そう簡単に値上げはできないというお店側の声も分かります。店舗は常に価格競争に晒されている上、価格の変更自体にもコストがかかります。現金払いの比率が高いお店なら、お客さんの反応も心配です。

とはいえキャッシュレス比率が高まっていけば、やめることによる販売機会の損失も大きくなるはずです。PayPayはしばらくの間、決済額の「3%還元」を続けているものの、各社のキャンペーンが終われば手数料を巡るトラブルは増えると予想され、再び議論を巻き起こしそうです。