新型コロナ特措法「緊急事態宣言」秒読み、発令までの流れはこうだ (追記)

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 3月28日夜、3回目の記者会見に臨んだ首相は、「最悪の事態」という言い方で、緊急事態宣言を前提とした対策をとっていることを明言した。「いまは緊急事態宣言を出す時ではない」とは言うものの、まさに宣言発令の直前にあるということだ。

★法的準備が整った戒厳令発令

 3月26日、政府は改正新型インフルエンザ等対策特別措置法(新型コロナウイルス特措法)に基づき、「政府対策本部」 を設置した(特措法15条)。これにより、各都道府県においても「都道府県対策本部」を直ちに設置されることになった。同本部は、専門家会議 からの報告を受け、25日に持ち回り閣議によって設置を決定したものだ。

 同26日開催の新型コロナウイルス感染症対策本部 において首相は、「専門家会議にも諮った上で、新型コロナ特措法に基づき、新型コロナウイルス感染症の蔓延の恐れが高い旨の報告が行われました」と発言している(首相官邸ウエブサイトから)。なお、これまでの対策本部と、新しく設置された法に基づく対策本部は、一本化されることになった。

 この2つ、すなわち本部の設置と蔓延の確認の意味するところは、法が定める「緊急事態宣言」発令の条件がほぼそろい、あとは政治判断の段階に入ったということである。そして発令に向けての次の具体的ステップである「基本的対処方針」についても、翌27日に法に基づく「諮問委員会」が開催され、政府原案をもとに議論がなされ、28日に直ちに策定された。これによって、法律上の手続きがすべて整うことになった

 なお、発生当初の「新型インフルエンザ等対策閣僚会議」と、その下での「新型インフルエンザ等対策有識者会議」 は、対策本部とそのもとでの専門家会議によって代替されている。

 ここまでの流れと今後の展開予想を、特措法の規定に沿ってまとめると、以下のようになる。なお、「基本的対処方針」の策定は、同特措法が制定された2009年においても同年10月1日に決定・公表されている 。また、同法の制定に至る議論の経緯と、今回の改正に伴う付帯決議は以下のリンク先から確認ができる。

・2009年法制定当時の制度検討等の経緯

・2020年改正時の附帯決議 衆議院内閣委員会(2020年3月11日)、参議院内閣委員会(2020年3月13日)

 同附帯決議では、「特に緊急の必要がありやむを得ない場合を除き、国会へその旨及び必要な事項について事前に報告すること」を明記するとともに、「国民の自由と権利の制限は必要最小限のものとすること」、「報道・論評の自立を保障し、言論その他表現の自由が確保されるよう特段の配慮を行うこと」(参のみ)などを求めた。

 ただし、法制定をめぐる審議が十分であったかどうかについては疑問が残る。そもそも、もとになる法の制定時には、当時の野党である自民党が実質審議に参加せず、採決でも欠席したこともあって、審議時間はわずかに9時間というスピート審議であった。そして今回の改正時の審議も、両院ともにわずか3時間弱という超スピード審議であった。これほどの私権制限と政府への権限移譲が予定されている緊急事態法制にしては、チェック機関としての国会の役割が十分発揮されたとはいえないのではなかろうか。

 なお、特措法自体が有する法的課題については、以下の記事を参照いただきたい。

・表現の自由全般については、「情報統制が不安を増幅させる~なぜいま、緊急事態対処法がダメなのか

・とりわけ報道の自由に関しては、「改正特措法は報道規制の道具になりうる~緊急事態対処法である新型コロナ特措法の大きな罠

・法適用の前提条件が欠如している点については、「先手でも後手でもない「禁じ手」~なぜいま、緊急事態対処法がダメなのか

★これまでの経緯

 すでに1月以降、新型コロナウイルスの政府対応は継続的になされているわけであるが、以下では、特措法に則った手続きが開始された段階からの動きを追ってみた。首相は「国難ともいえる状況」と、強い表現で<緊急事態>であることをアピールしてきている。

閣議で新型インフルエンザ等対策本部(政府対策本部)の設置を決定(法15条)3/25

・政府は地方自治法の例外として、政府現地対策本部(新型インフルエンザ等現地対策本部)を設置可能(法16条)

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新型コロナウイルス感染症対策専門家会議で大臣報告案を了承(法6条)3/26

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厚生労働大臣が総理大臣に「蔓延の恐れが高いと認められる」と報告(法14条=法附則1条の2による読み替え)3/26

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第23回新型コロナウイルス感染症対策本部での報告 3/26

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政府対策本部の設置(法15条) 3/26

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政府対策本部が設置されると、各都道府県でも同じく対策本部(都道府県対策本部)を設置(法22条)3/26~

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新型インフルエンザ等対策の実施に関する計画(政府行動計画) に基づき、「新型インフルエンザ等への基本的な対処の方針」(基本的対処方針)の策定を指示(法18条)3/26

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基本的対処方針等諮問委員会に諮問(法18条)3/27

・緊急を要する場合で、あらかじめ、その意見を聴くいとまがないときは、この限りでない

そのなかで緊急事態宣言の条件を検討

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政府対策本部で基本的対処方針を決定(法18条)3/28

・クラスター封じ込め

・重症者の発生最小化

・軽症者の自宅療養

・マスク等の国産化の検討 など

(原案にあった「使用制限・指示期間の<21日程度>は最終案では盛り込まれなかった」

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方針を直ちに公示して周知(法18条)

 ここまでが、3月28日段階の状況であり、この次の段階は「宣言」の発動(発令)ということになる。逆に言えば、それまでは、法手続き上の動きは原則ないということだ。

★今後の想定

 今後想定される、宣言発令までの流れは以下のとおりである。すでに、法に基づく手続きは終わっており、政府対策本部(=官邸)の政治判断(=自由意思)で発令が可能であるが、国会における付帯決議で、諮問委員会への意見聴取、国会への事前報告、が予定されている。

 また、厳密に考えるならば、事態の発生の確認や、実施期間・対象の策定については、同宣言の根幹をなすものであって、これらは対策本部に白紙委任されているのではなく、改めて「基本的対処方針」の策定手続に則って手続きを踏むべきともいえよう。少なくとも、専門家会議の科学的・専門的な報告などの根拠をないまま、政府の政治的判断に委ねるのは、法の趣旨に反するとも考えられる。

緊急事態宣言要件に該当する事態の発生を確認(法32条)

・国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがある

・全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがある

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事項の確認(法32条)

・新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施すべき期間

・新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施すべき区域

・新型インフルエンザ等緊急事態の概要

 ↓

基本的対処方針等諮問委員会に意見聴取

・国会付帯決議に基づくもので省略可能

 ↓

国会への事前報告

・国会付帯決議に基づくもので省略可能

 ↓

緊急事態宣言の発令・公示(法32条)

・2年を越えてはならない(法32条)

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予防接種の実施(法46条)

・公務員等への予防接種の強制

都道府県の知事が具体的な協力要請を発令(法45条・47条以下)

・学校の休校の要請・指示

・使用制限の要請・指示

・土地・建物や医薬品等の収用 など

 ↓

国会への事後報告(法32条)

 巷間では、海外の厳しい都市封鎖の状況と比較して、日本では罰則等の強制力がないので徹底されるかどうか疑問、あるいはこれを機にさらに強力な緊急事態法制を整備すべき、という声が強くなっている。しかし実際は、

・法に基づいた「要請」

・従わなかった場合の「指示」

・条件を定めた「収用」

は、ほぼ強制力に近いものだ。

 これは日本社会の特性に合わせた法体系であって、少なくとも企業・組織については政府の意向に反してまで、「通常通り」の経済活動や行動を持続させることは、これまでの行動様式からして想像しえない。それがあるなら、今日の「忖度」社会は生まれない。むしろ、言うことは聞かないだろうという想定がどこから生まれるのかが疑問だ。

 一方で、若者層を代表とする「気の緩み」論については、その要因がどこにあるかを確認する必要がある。もちろん、罰則がないから外出するという理屈はありうるが、より一般的な理由は「危険を感じない」という情報の欠如を理由とするものだ。

 とするならば、これに対する方策は、行政側の情報提供の改善で十分ということになる。感染者が蔓延といいつつも、その実態は示されることがないなかで「想像せよ」といい、想像ができない若者が多いから「罰則が必要」というのは論理の飛躍があるだろう。

 この情報不足の問題は、別記事で詳述しているのでここでは繰り返さないが、緊急事態宣言で予定されている政府行動は、いずれも強制力を伴うものとほぼ同義であることを確認しておくことは大切だ。そしてもう1つ、宣言を出さなくても同様の効果を生むことが、政府の情報提供の仕方を変えることで実行可能であることも、重要なポイントである。

(追記)4月5日に新しい動きを追記しました。