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打倒トランプ!2020年女性大統領候補(2)まだいる元気な民主党系候補者たち

山田順作家、ジャーナリスト
民主党の切り札になるかエイミー・クロブシャー上院議員(米上院の本人のHPより)

 2020年の大統領選挙の勝敗を左右するのは、政党支持票以上に女性票だと言われている。先の大統領選挙では、2大政党で初の女性候補となったヒラリー・クリントン氏への女性の支持率は54%にすぎなかった。ヒラリーはなぜか女性に嫌われたのだ。

 しかし、トランプ大統領という“女性蔑視&セクハラ”老人が相手なら、党派を超え、人種を超えて、圧倒的な女性票が女性候補に流れる可能性がある。

 また、次の大統領で大事なのは、「generation Z」(Z世代)の動向と言われている。1990年代後半~2000年生まれが「Z世代」と呼ばれているが、この世代はどの世代とも違う特徴を持っている。

 彼らはまず完全な「デジタルネイティブ」であり、生まれたときからスマホを持ち、オンタイムで仲間とコミュニケーションを取っている。そして、組織に縛られず起業家精神が旺盛で、男女平等意識がどの世代よりも強い。このZ世代の票が女性候補に流れるのではないかと見られている。

 というわけで、前回記事に続いて、候補と目されている民主党の女性議員をさらに紹介してみたい。

エイミー・クロブシャー(Amy Klobuchar58歳)ミネソタ州上院議員

 初当選後は、民主党の「ライジングスター」(新星)と呼ばれ、2020年の大統領選に立候補を期待されている。スロベニア系アメリカ人3世で、イェールからシカゴ大学のロースクールに進みJDを修得。卒業後弁護士となり、ミネソタ州のヘネピン郡の検察官を務めた。

 2006年の上院選挙で当選。「Pro-Choice」(プロチョイス:中絶賛成)、LGBTの権利擁護、銃規制、社会保障やヘルスケアの強化など、民主党本流の思想の持ち主。ブッシュ政権のとき、イラク戦争増派に反対した。

 クロブシャー議員は、今年の4月、上院が、親が投票を行う間は1歳未満の子供が議場に入ることを認めるという画期的な決定をした際に、これを積極支持した1人。元陸軍大佐でイラク戦争で両足を失ったことで知られるイリノイ州のタミー・ダックワース上院議員が、赤ちゃんを抱っこして登院したとき、これを歓迎。「上院は子を持つ親が職務生活をしやすくするよう、恒久的な規則変更にすべきだ」と述べた。さらに「もし、議場に赤ちゃんが10人いれば、それは大いなる喜びだ」とも。

 夫はボルチモア大ロースクールの教授で、1人娘の母。

タミー・ボールドウィン(Tammy Suzanne Green Baldwin、55歳):ウィスコンシン州上院議員

 タミー・ボールドウィン議員は、初めて自らが同性愛者であると告白した連邦議会議員。

 スミス・カレッジをへてウィスコンシン州立大マジソンでJDを修得して、マジソン市議会議員となり、1992年にウィスコンシン州議会議員に選出され3期を務めた。その後、1998年、ウィスコンシン州で初めての女性下院議員となり7期務め、上院に転じている。つまり、政治的キャリアは申し分なく、女性大統領となる資格、能力は十分にある。

 彼女は経済・金融政策に強く、たとえば連邦議会委員のときは「Glass-Steagall Act」(グラス・スティーガル法:1933年に制定された銀行・証券分離法)の緩和に反対している。また課税の平等を確実にする「Buffett Rule」(バフェット・ルール)には賛同している。

 ボールドウィンの活動は、政党の垣根を越えたもので、強い経済つくる、それで雇用を確保し、適切な高等教育、質の高いヘルスケア、高齢者福祉を実施していこうというもの。

 ボールドウィンは2008年の大統領選では、当初、ヒラリーを支持していたが、総選挙の際にはチーム・オバマに加わった。

 上院議員に当選したとき、彼女はこう語っている。

「男社会とどうやりあうかを考えたとき、私が彼らと同じ部屋にいなければ、彼らが物事を決めてしまうでしょう。しかし、私がその部屋にいれば、自分の意見を言えるということです」

メリー・ランドリュー(Mary Loretta Landrieu、62歳):民主党、ルイジアナ州前上院議員

 ランドリュー議員は、1996年に初当選して以来、民主党内では指折りの保守派として知られている。

 ただし、プロチョイスの「NARAL」(NARAL Pro-Choice America)のメンバーである。相続税の廃止を提唱し、2006年には「Common Ground Coalition」(コモン・グラウンド・コアリション)という超党派の議員連盟を結成し。民主、共和の協力体制を強化する運動をしている。また、「DADT法案」の撤廃を推進してきた。弁護士の夫と2人の子供がいる。

マリア・キャントウェル(Maria Elaine Cantwell、60歳):民主党、ワシントン州上院議員

 インディアナ州インディアナポリスで生まれ。高校卒業後、マイアミ大に進学。1983年にワシントン州シアトルに移った。1986年に28歳でワシントン州下院議員となり、1993年には連邦下院議員になり、2000年から上院議員を務めている。この間、ITビジネスで成功し、リアルネットワーク社のマーケティング担当副社長を務めた。

 上院ではエネルギー委員会の委員、スモールビジネス&アントレプレナー委員会の委員長として活躍。リベラルらしく、緊急避妊薬「プランB」の認可を推進し、16歳以下の少女にもその使用を認める意見を表明している。

デビー・スタベノウ(Deborah Ann Greer Stabenow、67歳):民主党、ミシガン州上院議員

 スタベノウ議員は、ミシガン州で初めての女性上院議員。ミシガン州立大学卒業後、ソーシャルワーカーとして働き、1979年にミシガン州下院議員となり、連邦下院議員をへて、2001年から上院議員を務めている。

 自身を「穏健派の民主党員」と称し、主に上院農業委員会で活躍してきた。2008年のリーマンショック時の金融業界の「Bail out」(ベイルアウト:救済措置)に際しては、「金額が大きすぎる」と反対したが、オバマ前大統領の緊急救済対策は支持した。プロチョイスだが、母親の命が危険にさらされている場合を除き、「partial-birth abortion」(部分出産中絶)には反対している。

クレア・マカースキル(Claire Conner McCaskill、64歳):民主党、ミズーリ州上院議員

 マカースキル議員は、2006年に共和党のトッド・エイキン候補を破って当選したが、これはエイキン候補が「まともなレイプであれば、女性の体は拒絶反応を起こして妊娠しない」と発言したことが大きく影響した。

 ミズーリ大学卒後、カンザスシティ検察官助手、ミズーリ州議員、ミズーリ州政府監査人を務めた。上院議員としては、オバマケアに賛成し、退役軍人の医療サービスの向上などを推進、上院の軍事員会、安全保障委員会で活躍している。民主党のなかでも穏健派として知られる。

 3人の子供の母。本人HPには「誠実、独立、ガッツがクレア・マカースキルをつくった」という母の言葉が紹介されている。

【*ここで終わります。次回の記事では、保守系=共和党系の女性候補を紹介します】

作家、ジャーナリスト

1952年横浜生まれ。1976年光文社入社。2002年『光文社 ペーパーバックス』を創刊し編集長。2010年からフリーランス。作家、ジャーナリストとして、主に国際政治・経済で、取材・執筆活動をしながら、出版プロデュースも手掛ける。主な著書は『出版大崩壊』『資産フライト』(ともに文春新書)『中国の夢は100年たっても実現しない』(PHP)『日本が2度勝っていた大東亜・太平洋戦争』(ヒカルランド)『日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか』(ソフトバンク新書)『地方創生の罠』(青春新書)『永久属国論』(さくら舎)『コロナ敗戦後の世界』(MdN新書)。最新刊は『地球温暖化敗戦』(ベストブック )。

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