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打倒トランプ!2020年女性大統領候補(1)女オバマも!リベラル系主要3候補者

山田順作家、ジャーナリスト
打倒トランプを目指すカーマラ・ハリス上院議員(米上院の本人のHPより)

 現在、11月の中間選挙に向けての予備選が進行中だが、女性候補が大躍進している。すでに過去最高数の女性が立候補し、民主党では指名を獲得した候補も出ている。民主党内は「白人男性候補では共和党に勝てない」というムードになっていて、支持者も女性候補をバックアップしている。

 なぜ、女性たちが立ち上がったのか?

 それは、やはりトランプが嫌いだからだろう。いくら支持基盤が強固で、支持率40%を堅持しているとはいえ、女性の支持率は減っている。なにしろ、この大統領はとんでもない“セクハラ老人”であり、関係した女性は数限りなく、また、大統領になるために関係した女性に口止め料を払っていたことまで明るみに出ている。女性たちが怒るのも無理はない。

 しかも、昨年来の「#MeTooムーブメント」が追い風になっている。その影響で、今年になってからはオプラ・ウィンフリー(Oprah Gail Winfrey、63歳)の大統領選立候補への待望論が沸き起こった。「オプラ2020」というフレーズがSNSで全米に拡散された。ただ、本人はCBSの番組『60 Minutes』で立候補をきっぱりと否定した。

 前回選挙でヒラリー・クリントン候補が敗れたことも、影響している。今度こそ「ガラスの天井」(glass ceiling)を打ち破りたいという女性たちの願いが日毎に強まっている。

 さらに、現在、ハリウッドでは、アメリカ史上初の女性大統領候補と言われるヴィクトリア・C・ウッドハルの生涯を描く映画が、アマゾン・スタジオで製作されている。主演は、昨年『ルーム』でアカデミー主演女優賞を獲得したブリー・ラーソン。フェミニストを自認する彼女は、自らプロデューサーを兼ね、19世紀末の女性の政治的状況を描き出そうとしている。

 制作側は封切りのタイミングを2020年の大統領選に合わせているので、女性大統領誕生へのメッセージと言っていいだろう。

 じつは、アメリカは女性議員の数が、先進国中で最低レベルにある。議会上下両院議員535人中、女性議員は上院が20人、下院が83人で全体の19.7%%に過ぎない。(ちなみに日本はもっと低く13.7%)

 しかし、こうした傾向は、現在の中間選挙の状況を見ていると一変する可能性がある。女性議員が大幅に増えれば、その勢いは2020年、アメリカ初の女性大統領誕生につながるかもしれないのだ。

 そこで、ここでは、民主党で有力視されている3人の候補を紹介してみたい。

エリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren、66歳):民主党、マサチューセッツ州上院議員

 マサチューセッツ州初の女性上院議員で、ハーバードロースクールで教鞭をとっていた法律学者。民主党のなかでは「 progressive」(プログレッシブ:革新派)と呼ばれる左派で、トランプの就任式翌日の抗議集会「ウィメンズ・マーチ」(女性の行進)でも演説した。積極的な消費者保護論者であり、オバマ政権では財務長官顧問を務めた。2016年の大統領選でもメディアから有力候補の1人とされたが、中立的な態度に終始した。

 しかし、熱烈な支持者たちにより「エリザベス・ウォーレンを大統領に」ウェブサイトが設立された。

 →http://www.elizabethwarrenforpresident.com

 トランプ政権になってからは、2020年出馬の意思を固めたといい、『Politico』などの政治メディアは、すでに彼女が水面下で出馬運動を始めていることを伝えている。女性を中心とした都会のリベラルに人気が高いが、中西部や南部の保守派女性には人気がない。政治的見識、実績とも申し分ないとされるが、現在66歳と年を取りすぎたことが心配点。

 トランプは、彼女を政敵としていちばん嫌っていて、「ポカホンタス」と呼んだことがある。大統領選挙中の2016年6月のツイートで、「時にポカホンタスと呼ばれる間抜けなエリザベス・ウォーレンはキャリアアップのため先住民のふりをした。極めつきの人種差別主義者だ!」と、罵倒した。ウォーレン自身は、自分は先住民(ネイティブ・アメリカン)の血を引いていると述べてきたが、調査による確証は得られていない。

 学生結婚した夫とは離婚し、法学博士と再婚。最初の夫の間に子供2人と孫がいる。

キルステン・ギリブランド(Kirsten Elizabeth Rutnik Gillibrand、51歳):民主党、ニューヨーク州上院議員

 ウォーレン議員が年を取りすぎているなら、ギリブランド議員はまだ50代になったばかり。可能性は十分にある。

 彼女は、昨年12月、トランプにセクハラおよび性的暴行容疑が報道されたとき、CNNで「大統領は辞任すべき」と発言し注目を浴びた。それを知ったトランプは、「キルステン・ギリブランドが私のオフィスに選挙資金の寄付を乞いに来たのはそれほど昔のことではない。彼女は寄付金を集めるためにはなんでもした」と、意味深なツイートをした。

 これに激怒したギリブランドは12月13日、『トゥデイ』(NBC放送)に出演すると、トランプを「sexist」(セクシスト:性差別主義者)と非難した。

 民主党の一部からは「彼女は保守的すぎる」とも言われているが、ギリブラントは女性の政界進出を支援し、同性愛者の権利保護の支持者である。同性愛者の兵士に対して定めた法律である「DADT」(Don't Ask, Don't Tell )法案の撤廃にも尽力してきた。2009年、ヒラリー・クリントンの後任として、上院議席を譲り受けるかたちで当選後、精力的な活動を続けている。

 『NYT』(ニューヨーク・タイムズ紙)と『NPR』(全米公共ラジオ)は、彼女を2020年の大統領選挙の有力候補の1人に挙げている。2017年5月の『CBSニュース』のインタビューでは「2018年の中間選挙再選に焦点を当てているため、2020年出馬は考えていない」と述べているが、その後に状況が変化したため、いまでは出馬を考えていると伝えられている。

 キルステンという名前通りデンマーク系で、夫は英国系のベンチャーキャピタリスト。2人の子供の母だ。

カーマラ・ハリス(Kamala Devi Harris 53歳):民主党、カリフォルニア州上院議員

 カーマラ・ハリス議員はオバマ前大統領とよく比較される。「女オバマ」と言われることもある。それは、オバマと同じようにアフリカ系のうえ、上院議員当選1期目でホワイトハウスを目指す可能性が十分だからだ。

 彼女はそれにふさわしい資質とキャリアがあると、多くのメディアが評価している。

 現在のところ大統領選への出馬は否定しているが、全米各地の民主党の中間選挙に向けた集会にはたびたび顔を出している。その度に、「大統領選に出馬を!」という声が湧き起こっているので、出馬の可能性は高い。

 ハリスの父親はジャマイカ移民(アフリカ系)で、スタンフォード大学の教授、母親はインド系である。カリフォルニア州の司法界でキャリアを積んだ後、2016年の上院選挙で当選し、ジャマイカ系およびインド系それぞれにおいて初の上院議員となった。

 法務博士号を持つ彼女は、2003年にサンフランシスコの地方検事となり、2011年まで務めた。その後、カリフォルニア州の州司法長官となって、さまざまな活動を行ってきた。

 州内全域で不登校を減らすキャンペーン。レイプ事件の解決。刑事司法システム改革「Smart On Crime」(スマート・オン・クライム)の実施など。ちなみに、スマート・オン・クライムとは、軽犯罪者は刑務所に収監しないで更生を図るプログラム。 また、彼女はカリフォルニア州の同性婚禁止条項である「Proposition 8」(プロポジション8)」に反対してきた。

 上院議員に当選時、ハリスはトランプの人種差別主義や外国人排斥の動きに全力で立ち向かうと、有権者に誓った。つまり反トランプであり、そのなかでももっともリベラルな女性政治家と言えるだろう。

 一時、後にサンフランシスコ市長になるウイリー・ブラウン氏と交際していたが、2014年にその後交際していた弁護士のダグラス・エモフ氏と結婚している。 

【*ここで終わります。次回の記事では、そのほかの民主党の女性候補者を紹介します】

作家、ジャーナリスト

1952年横浜生まれ。1976年光文社入社。2002年『光文社 ペーパーバックス』を創刊し編集長。2010年からフリーランス。作家、ジャーナリストとして、主に国際政治・経済で、取材・執筆活動をしながら、出版プロデュースも手掛ける。主な著書は『出版大崩壊』『資産フライト』(ともに文春新書)『中国の夢は100年たっても実現しない』(PHP)『日本が2度勝っていた大東亜・太平洋戦争』(ヒカルランド)『日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか』(ソフトバンク新書)『地方創生の罠』(青春新書)『永久属国論』(さくら舎)『コロナ敗戦後の世界』(MdN新書)。最新刊は『地球温暖化敗戦』(ベストブック )。

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