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トランプはたった2週間で歴史に名を残す「偉大なる大統領」になった!

山田順作家、ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

就任してまだ2週間。なんと、トランプが歴史に名を残す“偉大なる大統領”だということが、もう確定した。いまや、トンデモ大統領令の連発で、世界中が大混乱しているが、よくよく考えてみれば、これらはすべてわかっていたことだ。なぜなら、トランプは少しもブレていない。前から言っていたことを、忠実に、猛スピードでやっているにすぎないからだ。こんな大統領は、アメリカ史上初めてである。

「難民の受け入れ凍結」と「イスラム圏7か国の出身者の入国禁止」を指示した大統領令に、いまさら驚くことなどない。むしろ、トランプが人種差別主義者、白人優位主義者ということを思えば、この程度なら「軽い」ほうである。

「なにをやってくるかわからない」と言っている評論家、メディアがあるが、そんなことはない。彼のやっていることは単純だ。これからも、選挙戦で言ってきたことをやるだけだ。

この2週間ではっきりしたことが3つある。

(1)選挙戦で言ったことをそのままやること。大統領になったからといってなんら変わらない。公約は実行するのだ。この点で、公約をすぐ破る某国政治家は足元にも及ばない。本当に偉大な大統領だ。

(2)彼の頭の中には、自由、正義、民主主義、法の支配、人権、平等といった、アメリカの国家としての理念や普遍的価値観がまったくない。おそらく、アメリカ人なら必ず暗唱できる「The Pledge of Allegiance」(忠誠の誓い)を暗唱できないかもしれない。独立宣言になにが書いてあるのかも知らないだろう。とすれば、偉大すぎて言葉を失う。

(3)トランプは資本主義を知らない。だから、思ったまま言える。メキシコ国境の壁の建設費用をメキシコが払わないなら、メキシコ製品に関税20%を課して費用を捻出するという。となると、費用はアメリカ人が払うことになるが、この矛盾に気づかない。本当に偉大だ。

しかし、こんなことが起こるとは、昨年の11月まで、夢にも思わなかった。それまでは、仕事とはいえ、世界情勢、経済情勢を真面目に分析していた。しかし、いまや、そんなことはする気も起こらない。

民主主義が完全に機能すると、こういうことが起こるということなのだろう。トランプは、アメリカ人の「知性」を代表している。アメリカは低度情報化社会、集合愚の社会になった。見ていて、面白くてたまらない。アメコミより面白い。敬虔な英国教会司祭の娘である英メイ首相と会談後、「おて手」つないで歩いてしまうのだ。

ところで、こうしたトランプによる混乱で、経済情勢も混乱するという見方が一般化している。お利口評論家は、口を揃えて「トランプ大統領は不確実要素」と言う。しかし、これは嘘である。トランプがこれまで言ってきたこと、たとえば大減税や大規模公共投資をやれば、不確定要素などない。

短期的にアメリカ第一主義は大勝ちし、NY株価は上がり、ドルはますます強くなり、石油価格は下がるだろう。投資家に愛国心など必要ない。儲けさせてくれればいいのだ。

この点でも、トランプは偉大なる大統領だ。

作家、ジャーナリスト

1952年横浜生まれ。1976年光文社入社。2002年『光文社 ペーパーバックス』を創刊し編集長。2010年からフリーランス。作家、ジャーナリストとして、主に国際政治・経済で、取材・執筆活動をしながら、出版プロデュースも手掛ける。主な著書は『出版大崩壊』『資産フライト』(ともに文春新書)『中国の夢は100年たっても実現しない』(PHP)『日本が2度勝っていた大東亜・太平洋戦争』(ヒカルランド)『日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか』(ソフトバンク新書)『地方創生の罠』(青春新書)『永久属国論』(さくら舎)『コロナ敗戦後の世界』(MdN新書)。最新刊は『地球温暖化敗戦』(ベストブック )。

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