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年末年始、もし発熱したら?救急医療体制は厳しい状況、コロナ含め相談先の確認を!

薬師寺泰匡救急科専門医/薬師寺慈恵病院 院長
コロナ病床は、一般病床を削る形で存在している(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

2020年もいよいよ残すところわずかとなりました。COVID-19に振り回された一年となりましたが、まだ終息とは程遠い状況にあります。医療の面では各地で病床は逼迫しており、日常診療に制限がかかり、救急医療体制の維持が精一杯という状況が続いています。救急医の立場から、年末年始の過ごし方や、気をつけるべき点について書こうと思います。

ポイント

・相談先の確保について

・救急医療の状況について

・感染症予防について

・感染症以外のリスクについて

・遠方へ移動する際の注意

年末年始の相談先を確認しよう

現在、コロナ感染が疑われる場合、かかりつけ医に相談することになっています。都道府県単位で新型コロナ相談センターなどを立ち上げておりますが、体調不良の場合は、やはり普段の健康管理をしている主治医に相談するのが適切だと言う考えに基づいていると受け止めています。COVID-19は基礎疾患がある方で重症になりやすいことがわかっており、また発熱したからと言って、それがすぐにCOVID-19を意味するわけではありません。普段の健康状態や、生活状況、感染症の流行状況と、その時の症状から、COVID-19を含めた種々の疾患の診断につなげていく必要があります。

しかし、年末年始は多くの病院、診療所が一般診療をしていないはずです。体がしんどくなった時に、相談先に困る事態が生じるかもしれません。そもそもかかりつけ医がいない人は尚更です。もしもの時、どこに相談したら良いかは確認しておく必要があります。新型コロナが心配であれば都道府県の相談センターに連絡するか、救急診療をやっている病院が近隣にあれば電話で相談をしてみてください。また、救急相談センター(#7119)を利用可能な都道府県では、急な体調不良の際に積極的に利用いただければと思います。

かかりつけの医療機関を持っている人は、必ず年末年始に体調が悪くなったときにどうしたら良いかを確認しておきましょう。喘息やけいれんなど、発作を起こす疾患を持つ人は特にお願いいたします。

救急医療の状況は?

多くの医療機関で一般診療がお休みになる中、年末年始も救急診療は様々な形で行われます。もともと24時間365日体制で救急医療を提供している救命救急センターやそれに準ずる施設、もしくは当番制で救急診療する医療機関群で、急な疾病や外傷患者さんの診療を担保できるように体制を整えていると思います。しかし、いざと言う時にこれらの医療機関に相談すれば万事解決するかと言ったら、現状それが厳しい話になってきています。

例年この時期はインフルエンザ感染がピークを迎え、重症インフルエンザ感染患者さんがICU(集中治療室)に入っており、インフルエンザからの二次感染や、他の感染症による敗血症患者さん、脳出血や脳梗塞、心筋梗塞や大動脈解離といった血管性病変の患者さんもICUで対応しております。今年はインフルエンザが流行していませんが、多くの地域でこれまでの重症インフルエンザ患者さんとは比較にならない数の重症COVID-19患者さんが入院しており、病床のやりくりが困難な状況になっています。

ニュースで出てくるコロナ病床利用率に余裕が見えるところもありますが、あの数字は現場の状況をしっかり反映しているとは言えないものになっています。例えば、10床の病床に2床コロナ病床を追加しているのではなく、10床のうちの2床をコロナのために割いているというのが現状です。通常では9床までならある程度ゆとりある対応ができていたものが、7床まで患者さんが入った時点で満床に近い雰囲気が漂い始めます。こうして比較的大規模な病院の病棟運用や救急対応が逼迫しはじめると、地域の中小病院や診療所で急病や傷害に対応しなければならないことも増えていきます。実際、救急要請しても搬送先がなかなか決まらず、方々に電話をかけて何軒目かでようやく搬送先決定ということや、遠方への搬送ということも多々起こっています。これまでにもなかったわけではありませんが、現場の肌感覚としては搬送困難例が増加してきています。

年末年始に備えて今からできること

救急医療体制が崩壊するようなことにはなって欲しくないですし、なんとか乗り切りたいと思っているところなのですが、一丸となって協力していかねば、助かる命も助からない状況が一歩一歩近づいていると感じております。例年、12月と1月は急病も一般負傷も交通外傷も増加する傾向にあります(総務省消防庁:救急救助の現況より)。年末年始を安全に乗り切るために、みなさまに今日からできることを3点お願いします。

①COVID-19をはじめとした感染症対策

耳にタコができるくらい言われていると思うのですが、感染症対策を改めて心に止めてほしいと願っています。今年インフルエンザが流行していないのは、みなさまの感染予防策(手洗いやマスク)が功を奏しているものと考えられます。無防備な状態での多人数への接触をなるべく避けてお過ごしいただければと思います。年越しイベントや初詣、帰省の際の混み合う交通機関は要注意です。

私は帰省をやめろとまでは言いません。やめた方がいいですが、来年まで待てない事情がある人もいるかもしれませんし、行く後悔もあれば行かない後悔もあります。ただ、帰省はできる限り安全にしていただければと思います。ポイントは潜伏期間です。COVID-19の潜伏期間は数日〜14日(多くが5日程度)と考えられています。今日から帰省しようと考えている方も多いかもしれませんが、過去14日間の行動を振り返り、感染の可能性が高い行為をしていなかったか考えてみてください(マスクなしでの会話、会食など)。もしそうであれば、自分は感染者であると思って過ごしていただければ、帰省先の人を守れるかもしれません。家の中でもマスクと手洗いを徹底する様に心がけていただければと思います。

②冬ならではの事故に改めて注意

年末年始、例年モチ関連の事故、入浴関連の事故、飲酒関連の事故、慣れないレジャーでの事故の対応をしてきました。実際問題、12月と1月は例年救急搬送が増える傾向にあります。

高齢者はモチの誤嚥に注意をいただきたいのですが、若者でも、モチを食べすぎて腸が詰まることがあります。どこにも行けないし食べることしかない!となるかもしれませんが、多量のモチを摂取するのは避けましょう。

飲酒については、今更啓発するのもという感じではあるのですが、夜通し年越しイベントに参加してひたすら飲酒して元旦に急性アルコール中毒というパターンや、親戚や家族で朝から飲んでいて午後にはグロッキーというパターンなど、様々な様相を呈しております。他の記事でも書きましたが、必要以上にお酒を勧めあったりせず、楽しめる範囲で飲んでいただければと思います。何事も程よく!

入浴関連の事故はピンとこないかもしれませんが、冬になると、脱衣所と浴室の温度変化から体調不良となったり、熱い湯に長く浸かることで熱中症の様になったり、浴槽で意識を失いそのまま溺水するという事故が多発します。酒を飲みながらの入浴や、飲酒後の入浴では脱水気味になるので、特に注意が必要です。長風呂してるなと思ったら様子を見に行ってください。

レジャーについては、外傷のハイリスクです。なかなか普段家族で過ごす機会も少なく、みんなで楽しみたい気持ちが大きくなるものですが、慣れないスポーツをしたり、普段いかないところに行ったり(山とか谷とか)ということには慎重になってください。外に出るならば準備運動をしっかり行い、そもそも危険な行為に走らないようによろしくお願いいたします。

③移動先の医療状況をチェック

遠方に移動する方は、ぜひ移動先の医療状況を確認しておきましょう。移動後に体調を崩すこともあるかもしれません。そんなとき、どこに相談すれば良いかと言う点を明確にしておいてください。焦らなくて済みます。COVID-19であれば、行政が相談窓口を開いている場合が多いと思いますが、24時間やっていないかもしれませんので、時間帯もかならずチェックしておいてください。「○○県 休日夜間診療」「○○県 救急外来」などとネット検索すれば、各地の医療体制が調べられると思います。24時間体制でER診療をしている医療機関もあれば、輪番制当番制をしいて日替わりで救急医療を担保している地域もあるので、ぜひ移動前に調査をお願いいたします。

受診先が限られる場合、多数の患者さんがひしめき合っているという状況も想定されますし、距離の離れた医療機関を受診しなくてはならないかもしれない点は注意が必要です。また、病床が逼迫している場合、入院が必要となった場合に思いも寄らない遠方に入院となる場合もあり得ますので、ある程度の覚悟をしておいた方が良いかもしれません。

検査に関しても、年末年始は検査会社も通常通りの運営ではなく、時短営業をしていたりお休みをしていたりという場合もあります。ですので、「コロナが心配なので今すぐPCR検査して欲しい」という要求には応えられないことも多いと思います。「明日家に帰るので、念のためにPCR検査をしておいて欲しい」という様な要求は、移動先の医療機関の負担にしかならないので、遠慮していただければ幸いです。自分の体の状態に素直になっていただき、体調が悪い場合は、それをそのままお伝えいただければ、適切な医療につながると思います。

移動時は保険証のほか、お薬手帳や、必要であればかかりつけ医の紹介状などを持ち合わせていただけると、いざと言う時にスムーズな診療につながると思われます。

最後に

今回の年末年始は、誰も経験したことのない、未曾有の事態の中での出来事となります。感染予防は自分を守ることになるほか、隣人や社会を守ることにつながります。そして、防げる事故を防ぐことも、同様に自分だけでなく、隣人や社会を守ることにつながります。一緒に命を守りましょう。良いお年をお迎えください。

【この記事はYahoo!ニュースとの共同連携企画記事です。】

救急科専門医/薬師寺慈恵病院 院長

やくしじひろまさ/Yakushiji Hiromasa。救急科専門医。空気と水と米と酒と魚がおいしい富山で医学を学び、岸和田徳洲会病院、福岡徳洲会病院で救急医療に従事。2020年から家業の病院に勤務しつつ、岡山大学病院高度救命救急センターで救急医療にのめり込んでいる。ER診療全般、特に敗血症(感染症)、中毒、血管性浮腫の診療が得意。著書に「やっくん先生の そこが知りたかった中毒診療(金芳堂)」、「@ER×ICU めざせギラギラ救急医(日本医事新報社)」など。※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。

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