■Yahoo!ニュース 個人、5月の「月間MVA(Most Valuable Article)」と「月間MVC(Most Valuable Comment)」が決定しました

社会の課題を伝えている・議論を喚起している・読者の心に響く……などの観点で選出している「月間MVA」。記事のアクセス数ではなく、目指す世界観「発見と言論が社会の課題を解決する」「文化の発展に寄与する」を体現している記事を、編集部を中心とした運営スタッフがアナログで選出しています。あわせて、Yahoo!ニュース 公式コメンテーターによるニュースへの理解が深まるコメントとして「月間MVC」も選出しました。厳選4本の記事と3本のコメントを、筆者の受賞コメントとあわせてご紹介します。

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5月のMVA

『ちむどんどん』1972年にペペロンチーノ対決は「まさかやー!?」時代考証から考察(畑中三応子)

筆者による受賞コメント:栄えある月間MVAに選出くださり、本当にうれしいです。フィクションとはいえ、1970年代のイタリア料理事情にあまりにも反した『ちむどんどん』の描き方に驚きあきれ、料理をテーマにしたドラマならば時代考証をきちんと押さえてほしいという気持ちで書きました。とはいえ人気の高い朝ドラなので、楽しみに見ている人が不快に思ったり傷ついたりしないよう、たんに間違いを突っ込むのではなく、冷静に事実を積み上げて納得してもらえるよう気を遣いました。面白く読んでいただけたようで、ほっとしています。ありがとうございました。(畑中三応子

選出理由:NHK連続テレビ小説「ちむどんどん」で登場したイタリア料理の時代考証に関する違和感を、食文化研究家が解説した記事です。1972年前後の日本におけるイタリア料理の状況に加え、ドラマで出てきた「ペペロンチーノ」対決が何だったら納得感があったかというオチまでついており、読み物としても興味深い内容になっています。朝ドラという注目度の高い話題を、専門知を生かして考察したユニークさが光ります。

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「妊娠中絶禁止」が合憲となるアメリカ:最高裁判決の事前リークとその決定が与える政治的インパクト(前嶋和弘)

筆者による受賞コメント:選んでいただき、とても励みになります。妊娠中絶禁止を合憲とする事前リークは、アメリカ政治を研究するものとして、頭を殴られたような衝撃でした。憑かれたように衝撃を言葉にしていったら、この記事になりました。最終的な判決が今月末か来月に出ますが、アメリカ政治の大変動が起こっています。(前嶋和弘

選出理由:米最高裁が「人工妊娠中絶は女性の権利」と認めた1973年の判決を覆す内容の草稿がリークされ、全米各地で抗議デモが発生するなど、波紋が広がっています。もし草稿の通り決定した場合の、中間選挙も含めた政治的影響の底知れなさを、アメリカ現代政治を専門とする筆者が詳しく解説。5月2日にリークが報道された後すぐさま発信されたタイムリーな1本です。

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軽度要介護者の介護保険はずし。利用者負担の原則2割化。財務省が繰り返し提案する介護保険改革案(宮下公美子)

筆者による受賞コメント:介護保険制度開始から22年が経ち、社会状況も日本の国家財政も当時とは異なっています。その中で、制度をそのまま維持するのが難しくなってきていることを感じます。財務省は国の財政を預かり、財政の維持・健全化の視点から制度改革を考えていく立場です。今回の記事では、そうした立場を考慮した上で、2つのことを考えながら執筆しました。1つは、つじつまを合わせるかのような制度改正ではなく、国民的な議論の下で制度を変えていく時期に来ているのではないかということ。もう一つは、「思い」で動く介護職が「思い」と「現実」を折り合わせることができる着地点を、何とか見つけられないかということでした。それを伝えるには未消化な部分のある記事と感じていましたが、このようにMVAとして評価していただけたことをありがたく思います。(宮下公美子

選出理由:財務相の諮問機関が4月に示した介護保険制度改革案について、介護現場では反対の声が強い背景を解説しています。制度開始から20年余り、総費用が増大するなか制度改革はやむを得ないとする一方、「効率化」を強く求める改革では事業者、利用者、自治体に厳しい状況を招き、逆に介護保険財政の圧迫を招きかねないと指摘。高齢者と日々向き合う事業者と財務省が考える理想形のズレを補正する必要性と方法を提示しています。現場目線を徹底する筆者の問題意識と知見が詰まった発信です。

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オシム氏が見抜いた遠藤保仁の才能。代表歴代最多152試合出場を生んだ出会い(元川悦子)

筆者による受賞コメント:オシムさんが日本代表監督を務めたのは2006年8月~2007年11月。1年3カ月という短い期間でしたが、つねに考えさせられる練習ばかりで、取材する我々も高度な集中力と緊張感が必要でした。そんな「頭の中を鍛える指導」を通して、才能を大きく開花させたのが、遠藤保仁選手だったと思います。それまで同じ黄金世代の小野伸二選手らの後塵を拝する形だった彼が日本不動のMFになれたのも、「2手3手先を読める能力」をオシムさんに高く評価されたから。今の遠藤選手の姿を見れば、名将の凄さがよく分かるでしょう。この記事がオシムさんの偉大さを再認識していただく機会になれば有難いです。改めてご冥福を心からお祈りいたします。(元川悦子

選出理由:元日本代表監督のイビチャ・オシム氏が5月1日に逝去。日本サッカーを進化させた名将は数多くの選手の人生を変えました。歴代最多代表キャップ152を誇る遠藤保仁選手(磐田)もその一人で、オシム氏に感謝を述べています。その言葉の意味や2人の出会いの大きさを、千葉時代にオシム監督の下でコーチをしていた江尻篤彦氏が明かした秘話から説いています。遠藤選手の才能を見抜き、日本を代表する選手へと成長する基盤を作ったオシム氏の素晴らしさが伝わる追悼の1本です。

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5月のMVC

『コンビニトイレ公共化、オーナーの苦悩「掃除の負担が増すのに、お礼も商品購入もない」(弁護士ドットコムニュース)』の記事へのコメント(加藤篤)

筆者による受賞コメント:MVCに選出いただきありがとうございました。公衆トイレはまちの衛生確保と市民の社会参加を支える大切な公共施設です。だからこそ、その重要性を認識して日頃から議論し、社会のニーズに合わせて改善していくことが必要だと考えています。しかし、現状ではおざなりになりがちです。今回、公衆トイレの課題を重要なテーマとして取り上げていただけたことに感謝します。(加藤篤

選出理由:自治体からの協力要請を受けてコンビニトイレを公共化する動きが広がっている中で、オーナーの苦悩を報じた記事へのコメントです。背景や実現に向けて議論すべき提供条件についてわかりやすく解説。専門家の視点から、平時だけでなく災害時に備えて解決が必要な重要テーマであるということも伝えてくれました。

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■『「ひまわり8号」が宇宙望遠鏡に…東大チーム、ベテルギウスの謎を解明(読売新聞オンライン)』の記事へのコメント(本間希樹)

筆者による受賞コメント:このたびは月間MVCに選出いただき大変光栄に思います。対象となったコメントは、ひまわり8号のデータを使ってベテルギウスの減光の謎を明らかにした研究に関するもので、若手研究者がユニークなアイデアのもとに行った研究の素晴らしさをぜひ伝えたいと思い、コメントを書きました。斬新なアイデアが研究を進める上でいかに本質的であるか――この事実を改めて思い知らせてくれたこの研究と、それを実現した若手研究者たちに改めて拍手を送りたいと思います。(本間希樹

選出理由:東京大大学院の学生らのチームが、気象衛星を使ってベテルギウス減光の原因を解明したという記事に対し、本発見の素晴らしさが「着眼点」にあり、いかに画期的であったかをわかりやすく解説。柔軟な発想とチャレンジ精神をたたえるコメントは、天文学者として世界的評価を受ける筆者からの若手研究者へ向けたエールにも感じます。

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『【山口】阿武町、法的措置によりおよそ4300万円を確保(KRY山口放送)』の記事へのコメント(前田恒彦)

筆者による受賞コメント:誤って振り込まれたお金をそうだと分かりながら使ったとされるシンプルな事件に見えますが、実際には預金債権の有効性や考えられる罪名、オンラインカジノの違法性、決済代行業者を介して流出した資金の回収方法など、法律問題が複雑に絡み合う難しいケースにほかなりません。どのような法律にいかなる条文があり、それをどの場面でどう使うべきか、リーガルマインドが試される格好の題材ではないかと思われます。(前田恒彦

選出理由:給付金4630万円の誤送金問題は、多くの耳目を集めることとなりました。大金の誤送金という分かりやすい構図とは逆に、「法的に確保」といった法律上の難解なワードについて、国税徴収法を踏まえて解説。ともすれば複雑になりがちな法律的な背景が端的に説明されており、今回のニュースへの理解がより深まったとのSNS上の反応もありました。

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