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【Yahoo!ニュース 個人】9月の月間MVAとMVCが決定

(写真:アフロ)

■Yahoo!ニュース 個人、9月の「月間MVA(Most Valuable Article)」と「月間MVC(Most Valuable Comment)」が決定しました

社会の課題を伝えている・議論を喚起している・読者の心に響く……などの観点で選出している「月間MVA」。記事のアクセス数ではなく、目指す世界観「発見と言論が社会の課題を解決する」「文化の発展に寄与する」を体現している記事を、編集部を中心とした運営スタッフがアナログで選出しています。あわせて、Yahoo!ニュース 公式コメンテーターによるニュースへの理解が深まるコメントとして「月間MVC」も選出しました。厳選5本の記事と3本のコメントを、筆者の受賞コメントとあわせてご紹介します。

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9月のMVA

疑惑の王者バルデス「禁止薬物は使用していません」 後味の悪い世界タイトル戦の顛末(杉浦大介)

筆者による受賞コメント:この度は「月間MVA」に選出いただきましてありがとうございました。現地での精力的な取材を評価していただいたことを嬉しく思います。薬物検査で陽性になった選手のタイトル戦が強行され、私たちメディアも居心地悪い思いを余儀なくされた一戦。「書かないで済むならどんなに良いか」と思いながら執筆した記事でもありました。依然としてボクシング界にまん延しているとされる薬物に関する問題が、少しでもポジティブな方向に進むことを願って止みません。(杉浦大介

選出理由:9月10日にアメリカで行われたボクシング世界タイトルマッチの裏側を描いた現地発レポートです。筆者は王者バルデスから禁止薬物の陽性反応が試合前に発覚したことを疑問視。試合自体は挙行されましたが、その疑問を直接バルデスに試合後に問うなど、関係者も含めて丁寧な取材で記事にまとめました。「やはりこのタイトル戦は行われるべきではなかった」と書かれた言葉が深く突き刺さる内容です。

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コロナ禍で休業中の「もつ焼き屋」 格安5本100円で子供向けに売り続けるわけ(千葉哲幸)

筆者による受賞コメント:選出していただき誠にありがとうございます。小生は飲食業分野のジャーナリストとして、この度の緊急事態宣言の中で、飲食店がお酒を販売することの是非についてどのようなスタンスをとるべきか悩んでいました。そんなある日、アメ横のもつ焼き屋さんの店頭で「お子様連れのお母さん、お父さんに……」で始まる張り紙を見て、社会と向き合う清々しい企業姿勢に感銘を受け取材させていただきました。取材に現れた内田克彦代表は、記事後半で書いたとおり、私の記憶にある「飲食業界の先端的な事象」の中にいつも存在していました。今回も「やっぱり内田さんでしたか……」という感じで、お話に引き込まれていきました。これからもさまざまな飲食業の取り組みから、たくさんの人々にとって生き方や方向性を形作る参考となるような事例を見つけてまいります。(千葉哲幸

選出理由:緊急事態宣言下、従業員のスキルアップのために仕込んだ串焼きを子供連れに特別価格で提供した居酒屋。記事では、社会貢献のみならず客層拡大にもつながった様子や経営者の人物像を伝えています。苦境のなか前を向いて進む飲食店と、その姿をレポートしてきた筆者の思いがこもった一本です。

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豊田会長「五輪とは不公平感がある」で考える、日本でレースがメジャーになれない歴史的背景とは?(辻野ヒロシ)

筆者による受賞コメント:五輪、四輪、二輪をかけたメディアが喜びそうなワードをうまく使い、結果として注目を集めることに成功した豊田章男さん。周りを見る目がすごいといつも感じます。ただ、ニュースの受け手側、特にモータースポーツが好きな人は怒りのコメントばかりで冷静になれていませんでした。そうした反応がある中、モータースポーツが冷遇されるに至った歴史的背景を紹介することで、また注目を浴びた時に建設的な議論になれば良いと思い執筆しました。(辻野ヒロシ

選出理由:「五輪で許されても、四輪、二輪は許されないのは不公平」。記事の出発点はトヨタ自動車社長・豊田章男氏のこの発言でした。筆者は自動車・オートバイ大国である日本にモータースポーツが浸透しきれない歴史的背景を描きながら豊田氏の思いも解説。「レーシングドライバーというアスリートにも目を向けてほしい」という提言に改めて考えさせられます。

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世間が知らない「段ボール箱も商品のうち」がトラックドライバーに及ぼす深刻な影響(橋本愛喜)

筆者による受賞コメント:「段ボールは梱包材か、商品のうちなのか」という議論は、運び手を悩ませる問題として以前から存在していましたが、ここ最近特にシビアになってきています。エンドユーザーに配送される段ボールならば「商品」とする声もなんとか理解する余地はありますが、到着後開封すれば瞬時に廃棄物になる店頭陳列用のお菓子やカップラーメンの段ボールまでもが、たとえ中身が無傷でも、ほんの少しの擦れがあるだけで返品・弁償。さらには弁償金を支払っても現物がもらえないというケースも少なくありません。BtoB輸送の内情は世間からは見えにくいため、こうした理不尽が生じやすいと言えます。が、その理不尽の源流が、世間の行き過ぎた顧客至上主義にあるという皮肉。われわれの意識を変えない限り、現場の環境が変わらないことを世間に知ってもらいたいという思いから、取材・執筆しました。今後も多くの人に考えてもらえる記事が書けたらと思います。選出ありがとうございました。(橋本愛喜

選出理由:『段ボールは「梱包材」か、それとも「商品の一部」か』梱包用の段ボールのわずかな擦れやつぶれによって、荷物の運搬をするトラックドライバー自身が商品を弁償させられるケースがあると筆者は言います。「低賃金」「長時間労働」が問題になっているトラックドライバー。品質への高すぎる期待が、さらなる負担を誰かに強いるのではないか? という、重要な問いかけと視点をユーザーに提供してくれました。

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塗り潰された中村医師の肖像画、タリバンが指示? 幹部が語る真相(山田敏弘)

筆者による受賞コメント:月間MVA、ありがとうございます。イスラム原理主義組織タリバンは満を持して国家を掌握しました。にもかかわらず、幹部や戦闘員などに話を聞くと、ニュースでわかりやすく描写されているタリバンが一枚岩ではないことを感じていました。そこで報じられた中村哲医師の肖像画の一件を受け、日本を好意的に見ていると言う幹部に強く真意を問うたのが、この取材でした。そんな世界的ニュースが起きている現場の実態を日本の読者に少しでも感じ取ってもらえたのなら本望です。(山田敏弘

選出理由:アフガニスタンの首都・カブールで描かれた中村哲医師の肖像画が、イスラム原理主義組織タリバンの指示により塗り潰されたという報道を受け、タリバンの幹部に直接取材した記事です。「タリバンの上層部は、彼の肖像画が塗り潰された事実は承知していない」というメッセージは、アフガニスタンの実効支配を始めたばかりのタリバンの混乱を示唆、注目が集まるタリバンの実態を伝えた貴重な記事です。

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9月のMVC

『“親ガチャに外れた”に臨床心理士「客観的に見ればそんなに多くないと思う」 “子ガチャ”への視点も(ABEMA TIMES)』の記事へのコメント(大豆生田啓友)

筆者による受賞コメント:最近、話題となっている「親ガチャ」「子ガチャ」についてのコメントに対して、月間MVPの受賞をいただき、ありがとうございます。親子関係のみが強調される背景には、親子以外の周囲の人や社会からの支えが少ないと捉えられているからでしょう。保育学・教育学・子育て支援を専門とする立場としては、保育施設や地域住民、多様な子どもに関する関係各所など、社会的機能の役割の重要性がもっと強調されることを願ってこのコメントをさせていただきました。今後も、多くの方に届くようなコメントをしていきたいと思います。(大豆生田啓友

選出理由:最近よく目にする「親ガチャ」「子ガチャ」という言葉に関する記事を受けて、親子関係だけではなく、親以外の大人や社会環境が与える子育てへの影響を丁寧に解説。言葉自体にネガティブな反応が多いなか、課題解決への議論を促す冷静なコメントです。

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『藤井聡太王位・棋聖、史上初の「10代三冠」達成!豊島将之叡王からタイトル奪取 最年少19歳1カ月は羽生善治九段の記録を3年以上も更新(ABEMA TIMES)』の記事へのコメント(杉本昌隆)

筆者による受賞コメント:将棋は見た目こそ穏やかですが、実際は「盤上の格闘技」と言われるほど激しいもの。相手との駆け引きや一瞬の判断はスポーツに共通する部分も多くあります。藤井聡太三冠の「十代三冠」が決定したこの叡王戦第5局。彼がどのように「強い」のか、対戦相手や他の棋士はどんな心情になるのか…AIの数値によりルールを知らない方でも将棋を楽しめる時代です。私たち棋士や解説者、コメンテーターは指し手の良し悪しに加えて「人間同士の勝負の臨場感」も伝えていければと考えています。(杉本昌隆

選出理由:史上初の「10代三冠」を達成した藤井聡太三冠の記事に対して、師匠である杉本さんの視点から叡王戦での藤井聡太三冠の強さのポイントを解説。将棋ファン以外にも藤井聡太三冠のすごさが伝わるよう、野球を例に分かりやすく解説した臨場感のあるコメントです。

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『快特運転士ら書類送検 業過致死傷容疑など 京急脱線事故・神奈川県警(時事通信)』の記事へのコメント(西上いつき)

筆者による受賞コメント:MVCに選出していただき、誠にありがとうございます。この事故はさまざまな角度から原因究明をすべきだと考えますので、たくさんの方に多角的な視点をもっていただければと思い、私の経験則を踏まえながらコメントをしました。「鉄道の歴史は事故の歴史である」と古くから言われます。これをケーススタディーとしてあらゆる場面で議論し、ぜひ「犯人探し」ではなく「原因探し」を進めてほしいです。悲惨な事故が二度と発生しないことを心から願っております。(西上いつき

選出理由:2019年に京急線内の踏切で発生した脱線事故で、快特列車の運転士らが書類送検されたことを報じた記事へのコメントです。なぜ列車が止まれなかったのか、元・運転士としての知見に基づいて背景要因を解説。重大事故を防ぐための課題にも言及しており、社会的議論を促す内容となっています。

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