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【光る君へ】意外と厳しかった。同じ公家でもこんなに違った出世コース

渡邊大門株式会社歴史と文化の研究所代表取締役
公家の衣装を着た銅像。(写真:イメージマート)

 今年の大河ドラマ「光る君へ」の主人公は紫式部であるが、主な登場人物は公家である。公家といえば華やかな姿を思い浮かべるが、紫式部の父の藤原為時は、出世に恵まれたわけではない。公家の出世コースとはどうなっていたのか、確認することにしよう。

 公家は「こうか(こうけ)」と読み、朝廷や天皇を示す言葉でもあるが、普通は「くげ」と読んで、朝廷に仕える文官のことを意味する。公家は大別すると、御所の清涼殿南廂にある殿上間に昇殿が許された「堂上家」と許されない「地下家」(じげけ)になる。

 「堂上家」に含まれるのは、五位以上の者と六位の蔵人である(殿上人とも)。特に、三位以上の者は「公卿」と称された。「地下家」は、六位以下の官人である。

 平安時代末期頃から公家の家格が固定化され、特に公卿になれる家柄は、摂家、清華家、大臣家、羽林家、名家、半家にランク付けされるようになった。以下、もう少し詳しく確認してみよう。

◎摂家(摂関家)

 藤原北家の良房にはじまる、藤原氏の嫡流。良房が摂政となり、子の基経が摂政・関白に就任して以降、摂関の地位をこの家が独占した。豊臣秀吉・秀次が関白になったのは、例外である。鎌倉時代以降、摂関家は近衛、九条、二条、一条、鷹司の5家に分かれ、交代で摂政・関白を務めた。

◎清華家

 清華家は大臣・大将を兼ねて太政大臣に就任できる家柄で、久我・三条・西園寺・徳大寺・花山院・大炊御門・今出川(菊亭)・広幡・醍醐の9家が該当する。

◎大臣家

 大臣家は太政大臣に就任することはできるが、近衛大将を兼任することができない家柄で、正親町三条・三条西、中院の3家が該当する。

◎羽林家

 羽林家は近衛少将・中将を経て、参議・中納言・大納言になることができる家柄で、正親町・滋野井・姉小路など27家が該当する。

◎名家

 名家は弁官を経て、蔵人を兼ね、大納言まで昇進できる家柄で、日野・広橋・烏丸などの家柄が該当する。

◎半家

 半家は陰陽道などの特殊な家業に携わる者が多く、大納言まで昇進できる家柄で、高倉・富小路などの家柄が該当する。

 このように平安時代末期頃から公家の家格は固定化され、昇進の上限(極官)がほぼ決まることとなった。とはいえ、必ずしも極官まで上り詰めることは保証されていなかったので、あとは努力次第ということになろう。

株式会社歴史と文化の研究所代表取締役

1967年神奈川県生まれ。千葉県市川市在住。関西学院大学文学部史学科卒業。佛教大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。現在、株式会社歴史と文化の研究所代表取締役。大河ドラマ評論家。日本中近世史の研究を行いながら、執筆や講演に従事する。主要著書に『大坂の陣全史 1598-1616』草思社、『戦国大名は経歴詐称する』柏書房、『嘉吉の乱 室町幕府を変えた将軍暗殺』ちくま新書、『誤解だらけの徳川家康』幻冬舎新書、 『豊臣五奉行と家康 関ヶ原合戦をめぐる権力闘争』柏書房、『倭寇・人身売買・奴隷の戦国日本史』星海社新書、『関ヶ原合戦全史 1582-1615』草思社など多数。

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