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「どうする家康」豊臣秀吉は、ムロツヨシさんが演じるような人間だったのか

渡邊大門株式会社歴史と文化の研究所代表取締役
(提供:アフロ)

 大河ドラマ「どうする家康」では、豊臣秀吉が注目される。秀吉はムロツヨシさんが演じるような人間だったのか、いろいろと考えてみよう。

 これまでの時代劇において、豊臣秀吉は明るい人物として描かれてきた。しかも頭の回転が速いアイデアマンで、織田信長から大変気に入られた。そして、あっという間に大出世を遂げ、信長の死後は天下人の道を歩んだのである。

 これまでの大河ドラマにおいても、秀吉は明るい人物として描かれてきた。中でも、平成8年(1996)に放映された『秀吉』では、竹中直人さんが秀吉を演じ、これまでの小説に描かれたような、明るく陽気な秀吉像を定着させた。

 その点、今回のムロツヨシさんが演じる秀吉は、いささか奇矯な印象を受け、明るく陽気とはまた違うのである。どう考えても、普通の人間ではない。私自身も何と表現してよいのか、まったく言葉が思い浮かばないのである。

 現実の秀吉は農民の出身であるといわれているが、はっきりしたことはわからない。武士身分でないことはたしかである。後年の秀吉は、自ら極貧だったことを告白している。それゆえ、秀吉は信長の配下に加わったとはいえ、気苦労があったと考えられる。それは、身分上のコンプレックスだった。

 後年の秀吉は「人たらし」だったといわれている。秀吉の書状を見ると、黒田官兵衛に非常に丁寧な言葉遣いをしている。その理由は、当時の秀吉が播磨を制圧する際、官兵衛の力が必要だった。それゆえ、機嫌を損ねないようにしたのだろう。

 一方、天下人の道を歩んだ後の秀吉は、態度を一変させる。自分より弱そうな大名に対しては、非常に高圧的な書状を送りつけて服従を迫る。もし、拒否しようものならば、即座に攻め込んだのは言うまでもない。冷酷といっても過言ではない。

 ここで、ムロツヨシさんが演じる秀吉に目を移すと、おそらく秀吉はこういう人物ではなかっただろうし、普通の人間のキャラクター、人物像としてあり得ないと思う。もし修正がきくようなら、ご一考をお願いしたいところである。

株式会社歴史と文化の研究所代表取締役

1967年神奈川県生まれ。千葉県市川市在住。関西学院大学文学部史学科卒業。佛教大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。現在、株式会社歴史と文化の研究所代表取締役。大河ドラマ評論家。日本中近世史の研究を行いながら、執筆や講演に従事する。主要著書に『大坂の陣全史 1598-1616』草思社、『戦国大名は経歴詐称する』柏書房、『嘉吉の乱 室町幕府を変えた将軍暗殺』ちくま新書、『誤解だらけの徳川家康』幻冬舎新書、 『豊臣五奉行と家康 関ヶ原合戦をめぐる権力闘争』柏書房、『倭寇・人身売買・奴隷の戦国日本史』星海社新書、『関ヶ原合戦全史 1582-1615』草思社など多数。

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