東映７０周年を記念し、織田信長と濃姫を主人公にした映画『レジェンド＆バタフライ』が上映中である。今回は、織田信長が大坂本願寺と１０年にわたり戦った理由について考えてみよう。

　元亀元年（１５７０）以降、信長は約１０年にわたって、一向宗の大坂本願寺と戦った。応仁・文明の乱以降、一向宗は蓮如が教団を拡張して影響力を持ち、加賀を支配するなどしたので、諸大名から恐れられていた。

　大坂本願寺は民衆などの勢力を結集し、信長に戦いを挑んだとされ、それは武家権力への挑戦と捉えられてきた。また、信長は一向一揆を殲滅することを最終目標とし、戦いは最終局面を迎えていたといわれている。ところが、最近の研究によって、改められた点も少なくない。

　元亀元年（１５７０）９月、大坂本願寺は足利義昭・織田信長に戦いを挑んだ。大坂本願寺を支援したのは、同じく信長と敵対していた三好三人衆（三好長逸、岩成友通、三好政康）らだった。

　通説によると、本願寺顕如は信長から無理難題を吹っ掛けられ、自らの身を守るため蜂起したとされるが、事実と相違する。実際は、顕如が諸国の門徒に信長への決起を促す檄文を送っており、義昭は一揆の蜂起を止めさせるよう朝廷に依頼していたほどだ。

　大坂本願寺が攻めてきたので、信長は大いに驚いたという。つまり、大坂本願寺は信長に抵抗するために戦いを挑んだのではなく、自らが先制攻撃を仕掛けたのである。その間、大坂本願寺は甲斐武田氏ら有力大名との連携を模索した。

　天正元年（１５７３）に信長が義昭を追放すると、大坂本願寺は義昭を支援し、引き続き信長に戦いを挑んだ。しかし、同年には大坂本願寺が頼みとする朝倉氏、浅井氏が信長に滅ぼされたので、１度目の和睦をする。

　天正２年（１５７４）１月に越前一向一揆が蜂起すると、大坂本願寺は信長に再び戦いを挑んだ。しかし、同年には、伊勢長島（三重県桑名市）の一向一揆が信長に徹底して殲滅された。続いて越前一向一揆も殲滅されたので、大坂本願寺は信長に２度目の許しを乞うた。

　天正４年（１５７６）、毛利氏が義昭を推戴して信長に叛旗を翻すと、大坂本願寺は信長に３度目の戦いを挑んだ。しかし、４年後の天正８年（１５８０）、大坂本願寺はついに信長に屈したのである。

　重要なことは、信長は大坂本願寺を絶滅させようと考えておらず、降伏後も教団の存続を許したことだ。大坂本願寺は３度も信長に挙兵したが、信長は決して息の根を止めようとしなかった。

　信長は大坂本願寺が歯向かったから戦っただけであり、無神論者や無宗教だったから、宗教勢力を打倒しようとしたのではない。大坂本願寺が信長に従えば何も問題はなく、以後、両者は良好な関係を保ったのである。