大河ドラマ「鎌倉殿の１３人」では、北条時政が我が世の春を謳歌しているが、その前半生にについて、改めて詳しく掘り下げてみよう。

■北条時政と源頼朝

　保延４年（１１３８）、北条時政は伊豆国の在庁官人である時方の子として誕生した。永暦元年（１１６０）、平治の乱で敗れた源頼朝が伊豆に流された。そこで、時政の娘・政子と出会い、駆け落ちして結ばれた。こうして、時政は頼朝に従うようになる。

　治承４年（１１８０）、頼朝と時政は以仁王から「打倒平氏」の令旨を受け取り、石橋山で平氏方の大庭景親と戦うが、敗北。時政は子の宗時を討たれて甲斐に逃亡、頼朝は安房に敗走した。

　甲斐に逃れた時政は、甲斐源氏の武田信義を味方に引き入れ、頼朝とともに富士川の戦いで平氏軍を撃破した。この戦いの勝利により、時政と頼朝の運が切り開かれたのである。

■辣腕を振るった時政

　文治元年（１１８５）３月、頼朝は壇ノ浦の戦いで平氏を滅ぼした。にもかかわらず、頼朝は弟の義経と対立し、抜き差しならぬ状況に陥った。

　同年、義経は朝廷から頼朝追討の宣旨を与えられたので、頼朝は代官として舅の時政を京都に送り込んで対処した。時政が大軍を率いて上洛すると、朝廷は直ちに態度を豹変し、頼朝に義経追討の宣旨を与えた。これにより、頼朝は義経を討つ根拠を得た。

　時政は朝廷と交渉し、諸国、荘園に守護、地頭を置くこと、加えて兵糧米を徴収することを朝廷に認めさせた。時政は朝廷政治の刷新を進めるべく、後白河法皇の近臣を更迭し、幕府が推す九条兼実を関白に据えることに成功したのである。

　その後、頼朝の代官である一条能保が上洛したので、時政はその任を解かれ、鎌倉へと戻った。京都の警備は、時政の甥の時定が任命された。時政は、源家以外で初めて伊豆、駿河の守護になった。

　正治元年（１１９９）１月、頼朝が落馬して亡くなった。頼朝の死後、時政は政子とともに、２代将軍の頼家を守り立てた。しかし、頼家をコントロールするのは困難だった。

　建仁３年（１２０３）、時政は頼家の後ろ盾だった比企能員ら比企一族を討伐した。そして、頼家の代わりに弟の実朝を新将軍に据え、自らは政所別当、初代執権に就任したのである。

■まとめ

　こうして時政は幕府内で絶大な権力を握ったが、すでに６０代半ばの高齢になっていた。また、妻の牧の方は時政の子の政子、義時との折り合いが悪かった。その後、時政は政子、義時姉弟と対立を深め、これまでの地位を失ってしまうのだ。