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【深読み「鎌倉殿の13人」】源頼朝の枕元に後白河が現れ、挙兵を促したのは事実か

渡邊大門株式会社歴史と文化の研究所代表取締役
源頼朝の枕元に後白河が現れ、挙兵を促したのは事実か?(写真:イメージマート)

 大河ドラマ「鎌倉殿の13人」3回目は、源頼朝の枕元に後白河が現れ、挙兵を促していた。果たして、これは史実とみなしてよいのだろうか。

■後白河の幽閉

 改めて、件の場面を確認しておこう。大泉洋さん演じる源頼朝が寝ていると、西田敏行さん演じる後白河法皇が枕元に姿を現し、挙兵を促していた。霊夢だ。

 治承3年(1179)11月、平清盛はクーデターを決行し、後白河は鳥羽殿に幽閉された。これにより院政は強制的に停止され、軟禁生活を強いられることになった。

 後白河は人生最大のピンチに陥っていたのだから、誰かに助けを求めるのは自然なことである。それが、果たして院宣ではなく、夢のお告げだったのかが問題である。

■霊夢の存在

 とはいえ、後白河や頼朝が生きた時代は、迷信が信じられるような時代だった。たとえば、怨霊などはその代表の一つといえるだろう。

 保元元年(1156)の保元の乱で敗れた崇徳上皇は、無念の思いを抱きながら、讃岐国で亡くなった。しかし、崇徳は怨霊となって、京都の人々を脅かしたという。

 そこで、怨霊を恐れた朝廷は、保元の乱の舞台になった場所に粟田宮を築き、崇徳には「崇徳院」の諡号(しごう)を贈ることで、その霊を慰めようとした。

 亡くなったあとに怨霊になるケースがある一方で、生きている人が生霊となって、思いを遂げようとした例もこの時代には散見される。これが霊夢である。

 つまり、今回の大河ドラマでいえば、後白河が生霊となって頼朝の枕元に現れ、「打倒平氏」の挙兵を促したということになろう。

 むろん、こうした記録は残っておらず、単なる演出にすぎない。後白河の「打倒平氏」という強い信念を描いて見せたのだ。

■むすび

 今回の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」はコミカルタッチが売りだが、こうした仕掛けも随所にあるようだ。続きも楽しみにすることにしよう。

株式会社歴史と文化の研究所代表取締役

1967年神奈川県生まれ。千葉県市川市在住。関西学院大学文学部史学科卒業。佛教大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。現在、株式会社歴史と文化の研究所代表取締役。大河ドラマ評論家。日本中近世史の研究を行いながら、執筆や講演に従事する。主要著書に『大坂の陣全史 1598-1616』草思社、『戦国大名は経歴詐称する』柏書房、『嘉吉の乱 室町幕府を変えた将軍暗殺』ちくま新書、『誤解だらけの徳川家康』幻冬舎新書、 『豊臣五奉行と家康 関ヶ原合戦をめぐる権力闘争』柏書房、『倭寇・人身売買・奴隷の戦国日本史』星海社新書、『関ヶ原合戦全史 1582-1615』草思社など多数。

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