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【戦国こぼれ話】実は生涯を通して独身だった! 妻を迎えることがなかった有名武将3選

渡邊大門株式会社歴史と文化の研究所代表取締役
戦国時代、結婚しなかった武将は非常に稀だった。(写真:アフロ)

 本日11月11日、中国では「独身の日」で恒例のバーゲンセールが行われるという。もはや独身云々を問うのは時代遅れかもしれないが、今回は生涯を通して独身だった武将を取り上げることにしよう。

 前近代社会において、武将が妻を娶ることは当然のことだった。武将は正室どころか側室まで迎え、後継者たる男子を残すことが当然の義務だった。そのことによって、家は代々続くのである。

 むろん、現代社会ではそういうことは各自の自由である。以下、独身だった3人の武将である。

■宮本武蔵(1584?~1645)

 宮本武蔵は播磨の生まれで、父は新免無二といわれている。武蔵の前半生に関する史料は皆無であり、その生涯が明らかになるのは、晩年のごく一部の期間にすぎない。

 武蔵は吉川英治『宮本武蔵』や映画などで世に知られるようになったが、その剣豪としての戦いぶりは、史実か否か判然としなところが多い。むろん、武蔵の家族関係(兄弟姉妹)も同様に不明な点が多い。

 武蔵の養子には、小倉藩主の小笠原家で筆頭家老を務めた伊織がいる。ところが、武蔵には妻がいたという記録はなく、妻帯した可能性は乏しい。実子がいたとの記録もない。

 武蔵が妻を迎えなかった理由は、今となってはわからない。武蔵が牢人(浪人)として遍歴の生活を送っていたのはたしかなようなので、生活が不安定な中で、とても妻を迎える余裕がなかった可能性がある。

■細川政元(1466~1507)

 細川政元は、幕府で管領を務めた勝元の子として誕生した。政治的手腕には優れており、父と同じく管領を務め、よく将軍を支えた。明応の政変では、当時の将軍・足利義材を追放し、代わりに義澄を新将軍の座につけた。

 ところが、政元は男色を好んでいたという。当時、男色そのものは決して珍しくなかったが、政元の場合は女性を好まなかったようだ。それゆえ女性を一切寄せ付けることなく、生涯を独身で過ごした。

 もう一つの理由は、修験道にのめり込んだことである。政元は要職にありながらも、修験道を極めようとして、遊行に出ようとしたこともあった。これも生涯独身の原因だったようだ。

 政元には子がなかったので、九条政基から養子を迎え入れ、澄之と名乗らせた。実はそれだけでなく、一族の細川義春からも養子を迎え、澄元と名乗らせた。これが、政元の大きな不幸だった。

 やがて、政元は政務を省みなくなり、2人の養子が家督を争うようになった。政元は子の家督争いに巻き込まれて暗殺され、その後の細川氏は著しく衰退したのである。

■上杉謙信(1530~78)

 上杉謙信は、長尾為景の子として誕生した。本来ならば家督を継ぐことはなかったが、兄の晴景の跡を受けて長尾家の家を継承することになった。

 以後の活躍は言うまでもないが、甲斐の戦国大名・武田信玄との川中島の戦いなどはあまりに有名であろう。一方で、外交や内政には疎く、外征に注力していたことは良くなかったといわれている。

 ところで、謙信も生涯を独身で通した。謙信は出家しており、熱心に毘沙門天を信仰していた。性格的にも潔癖かつ実直で、あまり融通が利かなかったともいわれている。

 謙信が妻帯しなかった理由もまた明確ではないが、上記の宗教的な理由により、あえて妻を迎えなかったのかもしれない。一部では「謙信女性説」が唱えられているが、この説はまったく根拠を欠く妄説にすぎない。

 謙信は実子がいなかったので、一族の長尾政景の子・景勝、北条氏政の弟・景虎の2人を養子に迎えた。結局、謙信は家督をどちらに継がせるか遺言しなかったので、その没後に御館の乱が起こった。勝利したのは景勝である。

■まとめ

 冒頭で記したとおり、今や結婚するしないなどは各自の判断によるもので、決して強制されるものではない。しかし、前近代の社会では決してそうではなかった。

 武蔵の場合は後に問題が起こることはなかったが、政元と謙信の場合は家督をめぐって争乱が勃発した。当時の人々にとって結婚は、死活問題だったのである。

株式会社歴史と文化の研究所代表取締役

1967年神奈川県生まれ。千葉県市川市在住。関西学院大学文学部史学科卒業。佛教大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。現在、株式会社歴史と文化の研究所代表取締役。大河ドラマ評論家。日本中近世史の研究を行いながら、執筆や講演に従事する。主要著書に『大坂の陣全史 1598-1616』草思社、『戦国大名は経歴詐称する』柏書房、『嘉吉の乱 室町幕府を変えた将軍暗殺』ちくま新書、『誤解だらけの徳川家康』幻冬舎新書、 『豊臣五奉行と家康 関ヶ原合戦をめぐる権力闘争』柏書房、『倭寇・人身売買・奴隷の戦国日本史』星海社新書、『関ヶ原合戦全史 1582-1615』草思社など多数。

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