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【戦国こぼれ話】姫路城だけではない!この秋に這ってでも訪れておきたい兵庫の城郭5選

渡邊大門株式会社歴史と文化の研究所代表取締役
篠山城大書院。城下は今も江戸の風情が残る。(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

 世界遺産・国宝「姫路城」では、イルミネーションイベント「シロノヒカリ」が行われた。兵庫県には、数多くの名城がある。摂津、播磨、丹波、但馬、淡路の旧国から注目の城を選んでみた。

■伊丹城〔摂津:伊丹市〕

 伊丹城は、別名・有岡城。南北朝時代、摂津国人の伊丹氏が築城したという。天正2年(1574)、織田信長の命を受けた荒木村重は、伊丹城を落として居城とし、有岡城と改称した。

 伊丹城は開発が進んだので、遺構の多くは破壊されたが、残存する石垣は城郭として最古のものであるといわれている。また、堀や土塁をめぐらした惣構も、最古の遺構である。

 伊丹城は、信長に攻められて天正7年(1579)に落城。村重に謀反を思い止まらせるため、説得に向かった黒田官兵衛を地下に幽閉したという逸話もある。

■三木城〔播磨:三木市〕

 三木城は、別名・釜山城。室町時代、播磨守護代の別所氏が築城したという。天正8年(1580)、城主の別所長治は羽柴(豊臣)秀吉に攻められ自害。その後、城主は変わったが、廃城となった。

 三木城も開発が進んだため、本丸付近の遺構はあまり残っていない。むしろ、注目すべきは、秀吉が築いた約30もの付城群、そして約10kmにおよぶ土塁になろう。これは全国でトップクラスだ。

 城跡に建つみき歴史資料館には、三木城の発掘調査によって発見された貴重な遺物、そのほか多数の関連資料が展示されているので、あわせて訪ねておきたい。

■篠山城〔丹波:丹波篠山市〕

 篠山城は、別名・桐ヶ城。慶長9年(1604)、松平康重が丹波に入封した際、天下普請によって築城された。天守台は築かれたが、天守そのものは建てられなかった。

 篠山城は地方都市にあるので、遺構が良く残っている。天守台と石垣は、天守がないとはいえ見応えが十分だ。外堀東門の馬出も壮観で、国指定の史跡である。復元された大書院も見応えがある。

 近くにある丹波篠山市立歴史美術館は、篠山裁判所の建物を活用したもの。篠山に関わる展示が充実しているので、あわせて訪問しておきたい。

■出石城〔但馬・豊岡市〕

 出石城は、別名・高城。慶長9年(1604)、小出吉英が出石に入封した際に築城した。明治維新後、出石城は廃城令で破却されたが、その遺構は現存しているものも多い。

 当時のまま現存するのは、辰鼓楼、堀、石垣などで、天守は建造されなかった。付近は登城橋河川公園として整備され、隅櫓、登城門・登城橋などが復元された。見どころ満点だ。

 出石は小さな町であるが、その城下町は江戸時代の風情を残しているので、ぜひゆっくりと散策したい。名物の出石蕎麦も堪能したいものである。

■洲本城〔淡路:洲本市〕

 洲本城は、別名・三熊城。戦国時代、三好氏の家臣・安宅治興が築城したと伝わる。その後、城主は仙石氏、脇坂氏を経て、江戸時代には蜂須賀氏が引き継いだ。

 上下の城を繋ぐ「登り石垣」は、防御力を高めるために設けられ、全国的にも稀有な例である。本丸の大石段、虎口、櫓台跡はもちろんのこと、復元された模擬天守もなかなかのものだ。

 洲本城から見える海も壮観だが、城郭内にある洲本市立淡路文化史料館は、地域の歴史に関わる展示が満載なので、あわせてぜひとも訪れておきたい。

■まとめ

 城郭といえば、世界遺産や国宝がすぐに思い浮かぶが、地域にはそれぞれ豊かな歴史を持つものも数多い。ちょうど気候の良い秋なので、城下の散策のほか、博物館などで地域の歴史も学びたい。

株式会社歴史と文化の研究所代表取締役

1967年神奈川県生まれ。千葉県市川市在住。関西学院大学文学部史学科卒業。佛教大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。現在、株式会社歴史と文化の研究所代表取締役。大河ドラマ評論家。日本中近世史の研究を行いながら、執筆や講演に従事する。主要著書に『大坂の陣全史 1598-1616』草思社、『戦国大名は経歴詐称する』柏書房、『嘉吉の乱 室町幕府を変えた将軍暗殺』ちくま新書、『誤解だらけの徳川家康』幻冬舎新書、 『豊臣五奉行と家康 関ヶ原合戦をめぐる権力闘争』柏書房、『倭寇・人身売買・奴隷の戦国日本史』星海社新書、『関ヶ原合戦全史 1582-1615』草思社など多数。

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