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コロナについて子供と話そう:ウイルスにも恐怖にも負けない子にする心理学的方法

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
写真はイメージ:子供と話すのは良いことです。(写真:アフロ)

■コロナから子どもを守るために

新型コロナウイルスから子どもの体と心を守らなければなりません。ウイルスには感染しなかったけれど、すっかり臆病になってしまったり、人を恐れて嫌うような子になっても困ります。

このコロナ禍で、それでも心も体も元気な子に育つために必要なのは、コロナについて子どもと話すことです。

イギリス心理学会やアメリカの学校心理士会は、コロナについて子供と話すことを推奨しています。その情報を、日本心理学会や日本学校心理士会が翻訳して紹介しています。

コロナについて子供と上手に話すことができれば、子どもに正しい知識を伝えられ、心を優しく強くできます。新型コロナウイルスによる体への攻撃も心への攻撃も防ぐことができるでしょう。

そして、親であるあなた自身の心を守ることができ、コロナ騒動は大変だったけど私たち家族は成長できたと、きっと言えることができるでしょう。

このページでは学会情報等をもとに、より良い親子の会話のコツをお伝えします。

お子さんとコロナウイルスについて話しましょう:日本心理学会

新型コロナウイルス(COVID-19)について子どもに話す〔保護者向け情報〕:日本学校心理士会

■話すのは良いこと

学校は休校。先生とも友達とも満足に会えない。テレビをつければ怖いニュースばかり。大人たちもピリピリしています。子どもにストレスがたまり、イライラしたり不安になったりするのも当然です。

ストレスや不安の解消に、おしゃべりはとても効果的です。

コロナについては、怪しげな情報も飛び交っています。ネットでも、子どもどうしの話でも、想像に過ぎない話で、必要以上に怖がっている子もいます。

「子どもにとって、保護者とコロナウイルスについての会話を普通にできることは重要です。なぜなら保護者は子どもにとって最高の情報源であり安心の源だからです」。

■子どもの年齢に応じて事実を話す

子どもを心配させないように事実を隠す親もいますが、逆効果です。一方、何でも事実をそのまま離せば良いわけではありません。

「年齢に合わせて、何をどこまで伝えるか、情報の質と量を調整しましょう」。

子どもにとってわかりやすく、希望が持てるように、正しく怖がることができるように、話しましょう。

■子どもが質問できるようにしよう

大切なのは親からの一方的な説教ではなく、子どもと会話することです。子どもが気軽に質問ができることや、子どもが自分の意見を言えることも大切です。

「回答は正直に。分からないことは、分からないと言って構いません」。

子どもの気持ちを、絵に描いてもらうことも良いですね。

■親も自分の心を守ろう

子どもと上手に話すためには、親の心が落ち着いている必要があります。でも、私がしっかりしなくてはと自分を責めるのは逆効果です。自分自身のストレス解消やリラックスに努めることが大切です。自分へのいたわりも必要です。

あなたの笑顔が、子どもの安心につながります。

お母さんがお父さんを支えること、お父さんがお母さんを支えること、それが子どもを支えることにもつながります。

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■実際の方法を教える

手洗い、咳エチケットなど、正しい方法を教えましょう。ただし、怖い顔をして教えるのではなく、たとえば、手洗い方法を教えるときも、歌を歌いながら、楽しく行いましょう。

■落ち着いて、大丈夫ということも伝えよう

気をつけさせることは大切ですが、大丈夫という情報も伝えましょう。親も学校の先生も医者も看護師も、みんながあなたを守るために一生懸命頑張っていると伝えましょう。

同じ内容を子どもに話すときでも、大人が落ち着いて話すことが大切です。子どもは、あなたの言葉にも、あなたの態度にも、影響を受けます。

子どもの不安をしっかり聞き、共感しながら、明るい希望の言葉も使って話しましょう。

■子どものそばにいよう

コミュニケーションは、心の交流です。たとえ言葉がなくても、信頼する人がそばにいてくれるだけで、子どもは安心します。子どもにとって、自分の話を聞いてくれる、わかってくれるという人がそばにいることは、心の安定になります。

子どもはいつも以上に甘えたり、反発したり、グズグズするかもしれません。でも、子どもを追いやらず、そばにいましょう。

子どもに、あなたのことが大好きだと伝えましょう。言葉でも態度でも、伝えましょう。

ただし、仕事を全部休んで子どもと一日中一緒にいろというのではありません。もちろん、できる範囲で結構です。無理やり笑顔になることもありません。あなたのできる範囲で。ただし、ちょっと演技することも必要かもしれませんが。

■過度の非難を避けよう

今、日本中がギスギスしています。不安が高まると、人は誰かを責めたくなります。批判は大切ですが、親が誰かの悪口を言い続けている環境は、子どもにとって良くありません。

コロナ騒動で、子どもの心に偏見差別の心を植え付けてはいけません。むしろ、人々との交流、絆の大切さを語りましょう。

コロナの不安と恐怖に負けてしまい、分断と相互不審に陥ってはいけません。

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■テレビとネット

テレビとインターネットで楽しむのは良いことです。正しい情報が得られれば良いでしょう。でも、そうではない情報もあります。ただ不安を煽る情報もあれば、フェイクニュースもあります。

正しい情報でも、子どもの年齢には合わない情報もあります。理解できない情報、誤解しやすい情報は、子どもを混乱させます。

あなた自身も、いつも最新情報を追いかけるような行為は、かえって不安を高めるだけという場合もありますから、注意しましょう。

■できるだけいつもの活動を

いつものように、食べて寝て勉強して運動することが大切です。休校が続くと、日常生活が乱れがちですが、日常生活は心の安定にとってとても必要です。特に子供は大人以上に。

子どもと話しましょうと言っても、無理にディスカッションをするのではなく、日常生活の中で、話しましょう。

■子どもと良い話をするために

ぺちゃくちゃ子供から話してくれれば良いですね。でも、いきなり向かい合って、さあ話せと言われても、話せない子どももいるでしょう。

何かをしながら話すと良いかもしれません。お皿を一緒に洗いながら。一緒にゲームを楽しみながら。

運動不足を補うために散歩なども良いでね。散歩しながら話すのも良いでしょう。子どもが思春期になると会話が減るかもしれませんが、話せるきっかけづくりは大切です。

私は、中高生の頃、時々父に夜の散歩に誘われました。喫茶店に誘ってくれることもありました。家では話せない父と息子が、そこでは様々な話をしました。

意外に、子どもは親と話すきっかけを待っているものです。

私は、スクールカウンセラーの仕事もしていますが、学校では子どもの前でひまそうにしています。忙しそうな大人には、子どもは話しかけにくいのです。

子どもについて何か心配なことがあれば、学校とも情報交換をしましょう。休校中でも、先生も養護教諭もスクールカウンセラーも対応してくれるはずです。

子どもについて一番良くわかっているのは、保護者であるあなたです。あなたから情報がもらえれば、学校も助かります。

学校でも家庭内でも感染も気をつけなければなりませんが、大切なのはバランスです。不要に感染リスクを高めることはありませんが、家族が別々の部屋で黙って過ごせば良いわけでもないでしょう。

会話することは大切です。良い会話をすることが大切です。正直に話すことは大切ですが、近所の誰が感染しているのではないかなど、不確かで心ないウワサ話は、良い会話ではありません。

また小さな子どもは、一つのテーマで話し続けることはできません。話題があちこちに飛びながら、遊びながら、話します。それでOKです。

コロナについて子どもと話さなければならないのではなく、コロナについても、子どもと楽しくおしゃべりしましょう。その親子の会話が、子どもの正しい感染予防行動につながり、不安と恐怖に負けない子どもの心を育てることになるでしょう。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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