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主婦へもエールを:ゴールデンじゃないウイークを過ごすコロナ禍ママのストレス

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
写真はイメージ:こんなおしゃれじゃなくても、みんな頑張っています。(写真:アフロ)

■新型コロナと主婦のストレス

主婦はストレスが少ないでしょうか。とんでもない。調査によれば、外で働く人と主婦の間にストレスの差はありません。外で働く夫が「お前は家にいてストレスがなくていいよな」なんて言うのは、全くの誤解です。

外での仕事もある主婦なら、仕事ストレスに加えて主婦ストレスです。

専業主婦の場合は、特に育児ストレスは外に仕事を持つママよりも大きいとの調査もあります。

こんな日常の中で、さらに新型コロナ騒動です。コロナ禍の主婦には様々なストレスが襲います。

自分と家族の病気感染への不安ストレス。収入減のストレス。買い物のストレス。

マスクやら消毒液やら、時期によってはトイレットペーパーや食品まで。次々品薄商品が出ます。今は小麦粉不足ですか。次は何が無くなるのかと、気が気ではありません。

満足な買い物ができない自分を責めて、涙が出ると語っていた主婦もいました。

スーパーもギスギスしています。誰かが自分に近付いたからといって、舌打ちをする人。お釣りを手渡しされて、怒鳴り声を上げる客。スーパーに買い物に行くのが怖いと言う主婦もいます。

パートの仕事がなくなった主婦もいますし、テレワークの人もいます。夫も在宅勤務になり、子供も休校。平日も、みんなが家にいます。

ゴールデンウイークは、いつもなら仕事に行く夫も家に。子供も大人も、ステイ・ホーム。主婦にとっては、全然ゴールデンじゃない、と言う声も聞こえます。

平時でも、家にいる限り365日24時間営業で主婦業を行っているのに、さらに今、主婦としての仕事は増えています。

■コロナ禍と大型連休で増加する主婦の仕事とストレス

ネット上には主婦の嘆き、悲鳴が次々です。

「こんな世界中が大変な中、大変言いづらいのですが、家族全員分のご飯をつくって、家族全員分の食器を洗う、これが1日3回も繰り返される事に私は限界がきている」(オキエイコさんのツイッターより)。

このツイートは、3万3千回リツイート、19.8千「いいね」を得て、多くの人の賛同を得ました。

主婦がご飯作るのは当たり前だろ!なんて言う人もいるかもしれませんが、そんなことありません。夫婦のどちらが食事の準備をしても良いでしょう。

そして、以前は子供の弁当を作っていたにしても、しばらく3食作ることから離れていた人が、また3食作ることになれば、それは当然疲れるし、ストレスです。

コロナのストレスに加えて、主婦としての仕事増加のストレスです。

夫の在宅勤務に関わるストレスもあります。夫が家にいること自体がストレスという人もいます。夫がストレスなんて、ひどい話ですか? そんなことはありません。

コロナ以前から、「主人在宅ストレス症候群」なんて言葉もあるほどです。

夫が在宅勤務をするから、パソコンのカメラに映る背景をきれいにしろと言われている主婦もいます。夫のオンラインの飲み会の世話、家飲みの世話が増えたと言う主婦もいます。

夫から、「仕事中は子供を静かにさせろ」と言われている主婦もいます。「仕事」と言えば、なんでも許されると思っている男性もいます。

ママは、子供の面倒も見なければなりませんし、宿題もやらせなければなりません。でも、いつも以上に、中々うまく行きません。子供を遊ばせる場所もありません。

いつもは持てていた自分の時間が全く持てないと語る主婦もいます。家事も他の仕事も、自分のペースでは全然できません。

■妻、母、女性に求められること

女性たちには、しばしば家庭内の管理が求められます。家庭内でトイレットペーパーやハンドソープがなくなれば、「ママー、トイレットペーパーがないよー」と言われます。

育児、子供の教育も、母親への責任と言われがちです(学校に出す書類の保護者欄には、お父さんの名前を書くことが多いのに)。

子供を静かにさせ、笑顔にさせ、勉強させ、清潔に、健康にすることが、母の責任とされたりします。普段でも大変ですが、このコロナ禍では、さらに難題です。

夫や、子供、祖父母、家族みんなの世話を焼くことが求められたりします。それは、具体的な家事だけではありません。さらに、人間関係の潤滑油役を求められることもあります。

新型コロナでみんながイライラ、ギスギス、プンプンしているときに、笑顔でやさしく、みんなをなだめて、明るい家庭にするのが、主婦の役割とされがちです。

女性の中には、会社でも家庭でも、実に巧みに人間関係の調整役を果たしている人がいます。それが、できるし、得意だし、楽しいと感じる女性もいます。

でも全ての女性が、そんなことができるわけではありません。それなのに役割を押し付けられて周囲から責められている人もいるし、自分で責任を感じて自分を責める人もいます。

■がんばっている主婦を守ろう、応援しよう

主婦の仕事は、家族みんながスムーズに普通に暮らせて当たり前とされがちです。それが当たり前ですから、感謝の言葉もなかったりします。上手くいかないと、みんなに責められることもあります。

男性だと仕事で帰宅が遅くなっても家族から責められることは少ないのに、お母さんが仕事で遅くなれば、みんなに責められることもあります。

「遅くなって、ごめんね」と謝りながら、お急ぎで夕飯の支度をしている主婦もいます。

今、がんばっている医療スタッフがいます。私たちのライフラインを守るエッセンシャルワーカーもいます。主婦であり、同時に医療スタッフやエッセンシャルワーカーである人々もいます。

主婦&ナース、主婦&スーパーのレジなど、様々です。

そして、医療スタッフやエッセンシャルワーカーを支える主婦のみなさんもいます。誰かが食事を作り、洗濯をし、子供の面倒を見なければなりません。

みんながコロナと戦っている中、主婦も共に戦っています。主婦もまた、一人のエッセンシャルワーカーなのです。

だから、主婦にも理解とエールを。みんなの協力を。

夫の皆さん。「お昼まだぁー」とか「お昼、なにぃー?」なんて聞くのはやめましょう。「簡単に冷やし中華でいいよ」なんて、決して言ってはいけません。ご飯を食べたら、「美味しかった」のひと言を。

主婦の皆さん。適度に手を抜きましょう。外の仕事、育児、料理、洗濯、掃除、エトセトラ。全部を完璧になんかできません。この緊急時にはなおさらです。

全部完璧にやらなくてはなんて思うのは、「スーパー主婦症候群」で、体や心を壊します。

みんながストレスをためると、お互いに攻撃し合い傷つけあってしまいます(怒りを良い方向に生かす方法:コロナ離婚、コロナ退職を防ぐアンガーマネジメントの心理学:Yahoo!ニュース個人有料)。

例年なら、ゴールデンウイークが終わればほっとできますが、今年は在宅勤務の夫も休校の子供も、家にい続けます。

「無理しない」は、ストレス対策の基本です。家族を守る役割を担う主婦にとって、自分を守ることも大切な仕事です。

そして主婦の役目を担う主夫の方も、同様です。

家庭内の子育てや家事や介護を担当する全ての人に、みんなでエールを送りましょう。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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