年度末のあなたへ:スカーレット最終話から:出会いもさよならもあなたを作る

写真はイメージ:信楽焼のタヌキたち(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

年度末はちょっとさびしい別れの季節。でも変化があるから、私たちは成長します。

■NHK朝ドラ「スカーレット」最終話

NHK連続テレビ小説「スカーレット」最終話。15分間、ずっとおだやかに、切々と物語は流れていきました。

前回までのドラマを見て、「最終回、息子(武志:伊藤健太郎)が死んで終わり?」「そんな朝ドラ最終回って、あり?」と思っていました。

ドラマの最終回って、たとえば結婚式だったりします。いろいろあったけど、無事ゴールイン。みんなが集まって、笑顔の最終回です。

主人公の人生を描くようなドラマだと、青空の下、年老いた主人公夫婦が丘の上から町を見て、人生を振り返る、なんというのもパターンですね。

でも「スカーレット」の最終回は、主人公(喜美子:戸田恵梨香)の息子の死。しかもその死は、いわゆる「ナレ死」でした。死んだことを映像では表現せず、ナレーションで死んだことを伝える表現方法です。

「武志は、26歳の誕生日を前に旅立ちました」。

ナレーションのあと、母親である主人公がいつものように仕事をしているところから物語は続きます。

最終回だけれど、出演者全員集合もなし、大爆笑も、号泣も、大感動のストーリーもなしです。

物語の最後のカットは、満面の笑みでも、涙でもなく、昔を懐かしむのでもなく、次の作品作りのために、真剣に炎を見つめる主人公の横顔でした。

良い最終話でした。

最終週のタイトルは、「炎は消えない」でした。

■出会いと別れが私たちを作る

主人公は、朝ドラによくあるような、明るく元気な努力家です。困難を乗り越え、陶芸家を目指します。

でも、父親に死なれ、母親に死なれ、夫とは離婚し、息子は病気で亡くなります。広い家に、一人です。

もちろん、成長の過程で様々な人に出会いますが、また別れていきます。

そう考えて、番組の主題歌を聞いてみると、第一話から歌っていました。

♪「わたしを作る、出会いもさよならも」と(Superfly「フレア 」作詞・作曲:越智志帆)。

朝ドラでは、主人公がよく転居します。北海道から東京へ行ったり。信楽から大阪へ行き、また戻ったり。

朝ドラ「ひよっこ」では、主人公( みね子:有村架純)は故郷の茨城から集団就職で東京の向島電気へ。そこで仲間ができるのですが、会社は倒産し、仲間はばらばらに、と物語は進みました。

なぜ住み慣れた大好きな故郷から離れなくてはならないのか。せっかく親しくなった人々と離れなくてはならないのか。なぜ、こんなに良い人が亡くなるのか。

脚本家はドラマの中では「神」ですから、どのような物語でも作れます。そうれなのに、どうして愛する人がいる楽しい生活から離れなくてはならないのでしょうか。

けれども、主人公は愛する故郷から離れることで、新たな出会いが起こります。「ひよっこ」の主人公は、会社がつぶれたおかけで、結婚相手と出会います。

「スカーレット」の主人公の生まれ故郷は大阪です。でも、戦後の食糧難と父親の事業失敗で、一家で滋賀県の信楽に引っ越します。そもそもこの転居がなければ、陶芸家にはなっていなかったでしょう。

■年度末のお別れ

年度末。卒業で友人と別れる人もいます。卒業して初めて親から離れ、生まれ故郷を出る人もるでしょう。進学就職で、新しい町へ行く人。転職や移動で引っ越す人もいます。

お別れは、お見送りする人も寂しくなります。

多くの子供たちにとって、親の都合の引っ越しは、寂しく不愉快です。ジブリ映画「千と千尋の神隠し」も、親子で引っ越し途中で起きた物語です。

主人公の女の子千尋は、引っ越しと転校が気に食わなくて、自動車の中でふてくされていたのですが、お父さんとお母さんと救うために、神々が集まる湯屋で必死に働いて、そして成長する物語でした。

心理学的に言うと、私たちには安心できる場所(コンフォートゾーン)が必要です。慣れていて、気心の知れた家族や仲間がいる場所です。

でも、物語でも現実でも、私たちはコンフォートゾーンを出ていきます。寂しけれど、外に出ていくのはドキドキするけれど、自分の成長のために、人々のために、私たちは冒険の旅を始めます。

今年度公開された「アナと雪の女王2」も、愛する人々と離れ「新たなる未知の旅へ」がテーマでした。

『アナと雪の女王2』の心理学:ありのままと未知の旅の意味

どんなに今の場所が良くても、私たちには、旅に出る理由があります(「ぼくらが旅に出る理由」作詞・作曲:小沢健二)。

物事には終わりがあるから、だから一日一日は貴重です。死期が迫っていなくても、年度末や年末、卒業や転職転居、別れを前にすると、特にそう感じます。

ずっと、この愛する人々と、この愛する場所にいたいと感じることもあります。家族とも、親友とも、慣れ親しんだ町や店とも。それでも私たちは旅立ちます。見送る側も、さびしいけれど笑顔で見送ります。

年度末。別れと新しい出発があるみなさん。あなたの勇気をたたえ、あなたの幸せを祈っています。きっと大丈夫。この別れも、あなたを成長させていくのでしょう。

東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。HP『こころの散歩道』。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「とくダネ!」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ビートたけしのTVタックル」「ホンマでっか!?TV」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』など。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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