『アナと雪の女王2』の心理学:ありのままと未知の旅の意味

「アナと雪の女王2」ワールドプレミア(写真:ロイター/アフロ)

<『アナと雪の女王』で「ありのまま」を受け入れたエルサとアナ。でも、冒険は終わらない。新たなる未知の世界へ。それは、子供から大人への成長。それは私たちの人生。>

■『アナと雪の女王』

2013年公開『アナと雪の女王』(原題:Frozen)。アカデミー賞の長編アニメ映画賞と歌曲賞 (レット・イット・ゴー)受賞。日本での興行収入も200億円を突破。観客動員数は1600万人超え。日本歴代3位の大ヒットになりました。

『アナと雪の女王』の心理学:レリゴーと個性(ありのままの姿)の本当の意味を読み解く

当時は、文房具やおもちゃ売り場に、アナ雪グッズがあふれていました。子どもたちの中には、歌を全部覚えて、一人ミュージカルをやっているような子もいました。

特に主題歌の「レット・イット・ゴー:ありのままで」は、大ヒットでした。

『アナと雪の女王』主題歌「レット・イット・ゴー:ありのままで」の歌詞を心理学で解説:その意味は?

こんなに話題になったのは、作品の素晴らしさは言うまでもないのですが、私たちが「ありのまま」ということに悩んでいるからでしょう。

『アナと雪の女王』は、自己受容と自己制御の物語でした。自分の個性を受け入れ、自分を好きになり、どこまでできるか自分を試し、個性を隠すことも暴走させることもなく、みんなのために活用していくお話です。

それは、子どもが大人になっていく物語とも言えるでしょう。

■『アナと雪の女王2』

その続編『アナと雪の女王2』が、いよいよ公開です。

昔話のラストの定番は、「二人は(みんなは)、いつまでもいつまでも幸せに暮らしましたとさ」です。二人の姉妹エルサとアナと仲間たちも、そうして幸せに暮らしていました。

現実の世界では『アナと雪の女王』から6年たっていますが、物語の世界でも6年たっています。王国は平和で、エルサもアナもクリストフもオラフも、みんな元気で仲良しです。いつまでも、この暮らしが続きそうです。

ところが、不思議な声が聞こえます。その声は、新たなる世界への新たなる旅にエルサを誘います。

(「アナと雪の女王2」松たか子さん「イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに」MV)

エルサは、声に逆らいます。ここには愛する家族がいる。もう冒険はしないと。

自分を受け入れ、生きる道を選ぶ。それは、自我同一性(アイデンティティ)の確立です。私たちも、そうやって子供から大人になります。学校を選び、仕事を選び、住む場所を決め、仲間ができます。

しかし、「いつまでも」というわけにはいきません。変化は訪れます。家族にも職場にも変化は起きます。ある人は実家を離れ、ある人は海外へ、ある人は結婚し、子どもができる人もいます。人生は、変化と選択の連続です。

伝統的な味わいを残しつつ、現代的なテーマに切り込んだ『アナ雪』の世界でも、「いつまでも、いつまでも」ではなく、変化が起きようとしてます。

6年たって、みんなさらに大人になっていますが、雪だるまのオラフは、字が読めるようになっても子どものままのようです。素朴に、いつまでも何も変わらずみんなは一緒だと信じています。でもそれは、昔話の世界です。

映画の予告編の中でオラフが言います。

「何もかも変わってしまうの?」。

とても不安そうです。

不安なのは、6年分成長したエルサもアナも同じです。けれども、成長したエルサとアナはそれぞれ自分の使命を果たそうとしていきます。魔法が使えても、使えなくても、二人は精一杯自分なりに生きようとします。

アナ雪1は、二人で一緒でないと不安でしょうがないと言っていた少女が、大人として自律していく。それが、新たなる世界への新たなる冒険の旅の出発です。

■「ありのまま」の物語

アナ雪1で、あまりにもヒットした「ありのまま」。実は、同じスタッフが、2016年に「ありのまま」アニメをもう一本作っています。

『ズートピア』は以外と深い!:「ありのまま」再考:ウサギはウサギらしく?:偏見からの解放、殻の破り方

この映画『ズートピア』では、「ありのまま」は、悪役のセリフです。警察官になろうとしたウサギのジョディは、ウサギは警察官なんかにならず、ウサギらしくおとなしくしていろと言われてしまいます。

この映画は語ります。「ウサギはウサギらしくありのまま」ではなく、ウサギだっていろんなウサギがいる、ウサギはかわいい以外にも多くの面がある、「ウサギらしく」ではなく、「あなたらしく」が大切だと。

■「ありのまま」の大誤解

「ありのまま」とか「世界に一つだけの花」を誤解する人がいます。ありのままだから、努力しなくても良いと。それは大誤解です。エルサは「どこまでできるか自分を試したいの」と歌います。花は、バケツの中でもしゃんと胸を張り、一生懸命咲こうとしています。

本当に自分のありのままを受け入れた人は、チャレンジするのです。

「ありのまま」を大誤解して、偏見を持つ人もいます。ウサギだって、いざとなれば戦います。キツネだって、我が子をとてもかわいがります。

「女性が数字に弱い」は、科学的に言って誤りです。しかし「女性は数字に弱い」と女性自身が思うことによって数学の成績は下がります。他人への偏見も、自分への偏見も、人生を狭めるのです。

「ありのまま」を変化しないことと大誤解する人もいます。自分も環境も変化していきます。変化の中で、私たちは成長し続けるのです。

■新作映画『アナと雪の女王2』と大人へのメッセージ

ありのままを受け入れるのは、自律への第一歩。アナ雪1は、アナ雪2の新たなる未知への旅の序章でした。

映画『アナと雪の女王2』は、映像美も音楽も素晴らしく、ぜひ映画館の大画面で見たい作品です。大スペクタルの部分もあるので、男の子も楽しめます。映像のリアルさも、さらに一段アップ。登場人物たちの息づかいが聞こえてきそうです。

2のストーリーは、1よりも少し大人向けになっているように感じます。

でも、6年前に『アナと雪の女王』に夢中になった子供たちも、6年分成長しているのなら、『アナと雪の女王2』の物語をきっと受け入れることができることでしょう。

それに、私のすぐ横で見ていた幼児は、見終わって「面白かった!」と言っていました。小さな子は、複雑なストーリーはわからなくても、自分なりに理解し、そしてオラフが歌って踊るシーンだけで大満足なのかもしれません。

あ、それからもう一つ。

前作では、「あこがれの夏」を歌い踊ったオラフ。今作では、「おとなになったら」を歌い踊ります。この歌では、僕が怖いのはまだ子供だから。大人になったらきっと平気。僕はそんな素敵な大人になると歌っています。

これって、ディズニーから私たち大人へのメッセージのようにも感じます。

私たち大人が、強くしっかりと、子供たちを育てなければ。

https://www.youtube.com/watch?time_continue=107&v=1KZpWMTUHVw&feature=emb_logo

「アナと雪の女王2」予告編

東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。HP『こころの散歩道』。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「とくダネ!」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ビートたけしのTVタックル」「ホンマでっか!?TV」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』など。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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