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水谷修氏 新ホームページスタート:ネット活動再開の「夜回り先生」と共に子供を支えよう

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
新しい公式サイトの表紙画像(画像使用許可取得済み)

<相談殺到の中、活動の一時中断を余儀なくされた水谷先生。体制を立て直し、活動再開です。でも、夜回り先生に任せるのではなく、夜回り先生と共に子供を笑顔にしたいと思います。>

■水谷修先生(夜回り先生)、新サイト公開

本年8月末に休止宣言があり、9月にいったん閉じられていた水谷先生のサイトが、

夜回り先生(水谷修氏)サイト閉鎖?:子供支援とネット相談の難しさ> <夜回り先生ホームページ閉鎖決定は一部マスコミの誤解

リニューアルオープンです。

夜回り先生 水谷修 オフィシャルサイト どこまでも、生き抜いて

夜回り先生 水谷修 公式ブログ

旧サイトを閉じたときには、一部マスコミが様々に報道し、水谷先生の心身のご健康を心配する声もありましたが、ブログによれば、「私は、元気です」ということです。

ただ、前回は全国からの相談が殺到する中で「命に係わる緊急の相談に対応することが困難」になったために、体制を立て直しての再開となりました。

■「相談」の大切さ、難しさ

「相談」とは、個別対応のことです。どんなにすばらしい講演も授業も、多数に向けてのものは相談ではありません。その個別の事情を知り、話をするのが、相談です。

8割程度の人は全体向けの説明で大丈夫ですが、残りの人には相談が必要になってきます。しかし、個別対応ですから、手間ひまはかかります。

自殺予防活動をしている「いのちの電話」は、ボランティアの皆さんによるとても素晴らしい活動が続けられていますが、私が聞くいのちの電話への不満は、二つです。

一つは、なかなか電話がつながらない。

もう一つは、すぐに電話を切られてしまう。

でも、この二つを両立させることは難しいでしょう。ゆっくり話を聞いていれば電話回線はふさがり、早く電話回線を開けようと思えば話は短く切り上げることになります。

いのちの電話の第一の目的は自殺予防ですから、命に係わる電話はできるだけじっくり聞き、それ以外の電話は話が長くなりすぎないようにしているようです。

行政が行っている子育て電話相談なども、基本的な事情は同じです。ゆっくり話を聞きたいし、相談があれば何度でも電話をかけてほしいけれども、同時に多くの人からの電話相談もお受けしたい。そのジレンマの中で、担当者は日々努力しています。

ましてや、水谷先生のように個人でされている相談活動は、大変です。出版社のスタッフなど、水谷先生を支える方々はいらっしゃるのでしょうが、電話をかけてくる人は水谷先生個人に相談に乗ってもらうことを望んでいます。

しかし、個人の時間は限られています。

■互いに協力し支えあおう

水谷(夜回り)先生のブログには、一時活動停止前の状況が次のように書かれています。

今年は、7月末から、他機関や相談窓口、他の人たちから、紹介され、私の元に相談する子どもたち、人たちが、爆発的に増えました。しかも、その多くの子どもたち、人たちは、私の活動についてまったく知らず、ただ、水谷に相談してごらんと送り込まれた子どもたち、人たちです。

出典:夜回り先生水谷修公式ブログ「新しいホームページが始まりました」

水谷先生は、ネット上のプログラムではなく、生身の人間です。同時にいくつもの相談は受けられません。不眠不休で24時間働き続けることもできません。

子供たちを送ってきた人たちも、悪意はないのでしょう。しかし、殺到する相談で混乱が起きました。本当に緊急性のある相談への対応に支障をきたしました。

新しいサイトの相談ページには、次のような記述があります。

「相談する前に、必ず水谷が、どんな活動をしているのか、本やビデオ等で確認してください。」

不用意な人が見ると、事前に本を読めとは無礼だと感じる人もいるかもしれません。しかし、そうではありません。より良い相談活動をするために、必要なことです。

多くの著名人にとって、読者やファンへの個別対応はごく限られた人としかできません。そういうものだと、多くの人は理解しているでしょう。

しかし、水谷先生はできるだけ多くの、特に命に係わる相談には対応したいと願っていらっしゃいます。だからこそ苦悩し、だからこそ工夫が必要であり、だからこその、サイトリニューアルでした。

オフィシャルサイトの「はじめに」には、こう書いてあります。

「一人の子どもが、笑顔を忘れ涙を流すことは、私たち大人全員の恥であり、私たち一人ひとりの恥です。」

私も、同感です。親だけの問題ではない。教師だけの問題ではない。政治家だけの問題でもない。私たちみんなの問題です。誰かに押し付けて良い問題ではありません。

親として、教師として、児相や様々な相談機関、福祉や医療機関のプロとして、親の知人、親せき、近隣の者として、そしてネットユーザーとして、私にもできることがあるはずです。私にもするべきことがあるはずです。

「夜回り先生」は、子供を助ける大人の、一つの象徴なのかもしれません。本当は、大人たちみんなで子供を支えます。「みんなで子育て」です。

みんなで子供を支え、「夜回り先生」のことも、上手に大切に活用していきたいと思います。

 

新刊「壊されゆく子どもたち 夜回り先生の青少年問題論」
新刊「壊されゆく子どもたち 夜回り先生の青少年問題論」

 

*水谷先生の新しい本も出版されました。

壊されゆく子どもたち 夜回り先生の青少年問題論」水谷修 著 日本評論社 2019.11.19

*今回、新しいホームページオープンのご案内を、水谷先生ご自身からいただきました。ご多忙の中、私のことを覚えていてくださったのかと思うと大変うれしく恐縮至極です。

これが、「夜回り先生」なのでしょう。でも、だからといって社会が先生の善意に甘えてばかりではいけません。

夜回り先生と共に、みんなで子供を支えましょう。

壊されゆく子どもたち 夜回り先生の青少年問題論
壊されゆく子どもたち 夜回り先生の青少年問題論
社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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