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無差別殺人犯は弱者を狙う:「誰でもいいから殺したかった」の犯罪心理学と私達の社会

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
(写真はイメージ: 秋葉原通り魔事件現場の献花)(写真:ロイター/アフロ)

新幹線の中で、刃物を振り上げる人がいます。警官から銃を奪い、小学校へ向う人もいます。あなたの隣にも、無差別殺人者がいるかもしれません。

■殺人の動機

殺人の動機で一番多いのは、人間関係のもつれです。怒り、恨み、憎しみ、復讐心で、人は人を殺します。男女関係のもつれ、無理心中、金目当てで殺し人もいます。

一方、殺す相手は誰でもよかったと語る犯人もいます。

「快楽殺人」は、殺すこと自体が快感であり、快楽殺人者は自分が捕まらないように巧みな手法で「連続殺人」を実行します。

また人を殺すことに対して、抑えられない異常な好奇心を感じて殺す「純粋殺人」と呼ばれる殺人もあります。人間を解剖してみたいとか、毒を飲んだ様子を観察したいといった強い欲望を持って、逮捕される危険性を冒してでも人を殺してしまう人々がいます。

そして、一度に大勢の人を殺す、「大量殺人」もあります。彼らは、自分の人生を終わりにしたいと願うと同時に、この世の中も終わりにしたいと感じています。そして、自分を馬鹿にしてきた世の中を見返すように、最後に大きなことをしようと思って、多くの目撃者の目の前で殺人を犯します。

■弱者を狙う無差別殺人者

彼らは無差別殺人者と呼ばれ、「誰でもいいから殺したかった」と語るような殺人者です。しかし、無差別というのは特定個人を狙わないという意味であり、無差別殺人者は人を選びます。

彼らは誰かを殺したいのですから、殺しやすい相手を選びます。一人でいる人や、子供、女性、高齢者など、強い反撃が来ない相手を選びます。

乗り物内の殺人も、繁華街の殺人も、多くの犠牲者は女性や高齢者です。狙いやすい人、逃げ遅れた人、反撃してこない人を狙います。さらに、被害者を救助しようとする人を狙うこともあります。

銃を使って屋上から人々を狙うような大量殺人は無差別ですが、それでも銃をもたない反撃してこない人を遠くから狙うでしょう。

■無差別殺人者の武器

大量殺人者は、犯行の前に体を鍛えることもあります。銃やナイフなどを集める人もいます。オノ、ナタ、サバイバルナイフや、牛刀など、大きな刃物を犯行に使用する人もいます。大きくて強く目立つ武器は、自分が強くなったような感覚をもたらします。

彼らは、強くなりたいのです。

■弱者として無差別殺人者

殺人者を「弱者」と呼ぶのは、問題があるかもしれません。しかし社会的強者の悪人は、簡単に逮捕されるようなことをしないでしょう。笑いながら罪を逃れ、甘い汁をすっていることでしょう。

無差別殺人者の多くは、人生の中で挫折しています。彼らは自分を被害者だと感じています。弱者がさらなる弱者を狙い、歪んだ優越感を味わおうとするのです。

■人間関係とコミュニケーションの歪み

人は誰かを愛したり、憎んだりします。様々な思いで、周囲の人とコミュニケーションが生まれます。コミュニケーションは、心の交流です。愛する人に愛を伝え、仲良くなりたいと願い、より良いコミュニケーションを考えます。

憎い相手に、自分の辛さ苦しさ怒りを伝えたいと願うこともあります。できることなら、相手から謝罪が欲しいと願います。

コミュニケーションは、言葉や文字、表情や身振り手振り、握手やハグ、視線やプレゼントで行うこともあります。良いコミュニケーションは良い人間関係を育て、人を幸せにします。

しかし、コミュニケーションが歪むこともあります。人間を人間としてではなく、道具として使ってしまうこともあります。イライラして、誰かを殴りたいと感じてしまう人もいます。ムラムラして誰か異性に触れたいと思う人もいます。

「誰でもいい、無差別です。鈴木花子さんとか、佐藤太郎さんとか、特定の人でなくても良いのです。弱い人とかきれいな人とかは思うかもしれませんが、特定個人ではありません。これは、歪んだコミュニケーションです」(コミュニケーションの障害と歪み:夫婦喧嘩もいじめも性犯罪も殺人も:Y!ニュース有料)。

すれ違いざまにわざと女性にぶつかる男性もいます。通りすがりの子供を殴る人もいます。相手も人間なのに、人間を自分の欲求のはけ口としての道具にしてしまっているのです。人間の「モノ化」です。

人間関係は難しいものです。人間関係の中で傷つくことも多いでしょう。でも本来は、人間関係でできた傷は、人間関係の中でしか癒せません。人を物として扱ったのでは、一時的なストレス発散しか得られません。人間と人間との間の、豊かなコミュニケーションが、私達の心を癒すのです。

無差別殺人は、言うまでもなく許されない犯罪です。ただ、毎日日本中でおきているわけでもありません。しかし、一見強者に見える弱者がさらに弱者を苦しめている姿は、私達の日常生活の中にもよくあることかもしれません。犯罪は社会を映す鏡であり、無差別殺人の背景には、私達の社会の歪みがあるのかもしれません。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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