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今年、CMでも輝いていた「2人の女優」

碓井広義メディア文化評論家
今年大活躍した長澤まさみさん(写真:アフロ)

長澤まさみさんと川口春奈さん。

今年を代表する女優ともいえる2人は、CMでも輝いていました。

長澤まさみさん

クボタCM「クボタが描く未来 スマートアグリソリューション」篇

クボタCMの八百屋さん店頭(企業サイトより)
クボタCMの八百屋さん店頭(企業サイトより)

作家の井上ひさしさんが、座右の銘にしていた言葉があります。

「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをゆかいに、ゆかいなことをまじめに」

今年の春から初夏にかけて、長澤まさみさんが出演した、クボタのCM「クボタが描く未来 スマートアグリソリューション」篇は、まさにそんな1本でした。

「アグリソリューション」とは、英語の「アグリカルチャー(農業)」と「ソリューション(解決)」を合わせたもの。

ITを駆使した「スマート農業」によって、生産から消費までをトータルでサポートする。それが「スマートアグリソリューション」です。

目指すのは、食品の流通過程で生まれる「付加価値の繋がり」。

でも、そのままだと結構難しい話になってしまう。

CMの舞台は、どこの町にもありそうな、八百屋さんの店先でした。

買い物客の皆川猿時さんに、店員の長澤まさみさんが「テレビ出られるよ!」と呼びかけています。

登場したテレビリポーターは、パックンさん。

彼が「フードロスのない、サステナブルな食料システム」について解説を始めると、すかさず長澤さんが言い切ります。

「大丈夫、それクボタがやる!」

農機具のトップメーカーが、農業全体の未来を探る。

そんな取り組みを、ユーモアと共に、わかりやすく表現していました。

優れたコメディエンヌでもある長澤さんが「ふかいことをゆかいに」伝える、振り切った演技が何とも気持ちいい。

今期ドラマの話題作『エルピス―希望、あるいは災い―』(カンテレ制作・フジテレビ系)ともひと味違う、長澤さんの魅力がそこにありました。

川口春奈さん

カシオ計算機 GショックCM「MY TIME 川口春奈」篇

GショックCMの川口春奈さん(企業サイトより)
GショックCMの川口春奈さん(企業サイトより)

川口春奈さんもまた、今年大活躍した女優の一人です。

NHK朝ドラ『ちむどんどん』でヒロインの姉を演じ、仕事と家庭の両立に悩む姿が共感を呼びました。

また、今期ドラマ『silent』(フジテレビ系)では主演を務めました。高校時代の恋人(目黒蓮さん)と8年ぶりに再会するヒロインです。

彼は耳が聴こえなくなっており、それが突然姿を消した理由でした。

空白の時間を埋めると同時に、自分たちの「これから」を探っていく2人。

それぞれのドラマの中で、大きく異なる役柄をしっかり演じ分けながら、自身の存在感を示して見事でした。

現在放送中のカシオ計算機「Gショック」の新作CMは、川口さんが主役の「密着取材番組」を思わせます。

機材が並ぶ撮影現場。そして本番前の舞台稽古。

そこに流れる川口さんのモノローグも、リアル感のあるドキュメンタリータッチになっています。

「出来ないことが出来るようになる瞬間が好きです」

川口さんは、さらに言います。

「俳優って全ての役をゼロから始めることだから、ずっと大変だし、ずっと楽しいです」

この1年を振り返り、次回作への決意を述べているかのような川口さん。

きっと来年も、真摯に作品と向き合う姿が見られるに違いありません。

メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶大助教授などを経て、2020年まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。著書『脚本力』(幻冬舎)、『少しぐらいの嘘は大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)ほか。毎日新聞、日刊ゲンダイ等で放送時評やコラム、週刊新潮で書評の連載中。文化庁「芸術祭賞」審査委員(22年度)、「芸術選奨」選考審査員(18年度~20年度)。

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