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西野七瀬に桜井ユキ。気鋭の女優たちが、いい味出してる「秋CM」とは!?

碓井広義メディア文化評論家
筆者撮影

西野七瀬、必殺の「ネイティブ関西弁」炸裂!

今年4月から9月まで放送されていた、ドラマ『あなたの番です』(日本テレビ系)。

マンションで起きた連続殺人の黒幕が、西野七瀬さん演じる女子大生、黒島沙和だったのは、なかなか衝撃的でした。清楚(せいそ)なイメージの西野さんと「衝動を抑えられない殺人鬼」のギャップが大きかったからです。

そんな西野さんが、経済産業省「キャッシュレス・ポイント還元事業」のCMに登場しました。

パン屋さんの店先で、美味しそうなパンを物色中らしい。と思って見ていると突然、「クリームパン、めっちゃ買うたろ!」、「カレーパンもいかなあかんな!」と関西弁でハシャギまくるではありませんか。

この「いかなあかんな」のニュアンスがハマっているし、何より、「関西弁」があまりに自然かつリアルで、二度びっくりです。

思えば、西野さんは大阪出身。流暢な関西弁も当たり前なんですね。しかし、見る側の思い込みを突き崩す、その意外性が笑いを誘うのです。また見慣れた西野さんとのギャップが楽しくて、「関西弁女子」がチャーミングであることを再発見したのでした。

桜井ユキ、しっとりと演じる「家族の物語」

結婚披露宴のテーブルに、意外なチーズケーキが出てきます。しかも、それは新郎が慣れ親しんできた、亡き母(寺島しのぶ)の手づくりの味でした。新郎は驚きます。

すると新婦(桜井ユキ)が立ち上がり、語り始めます。「結婚式には出られませんが、あなたに一つ、お願いがあります」という書き出しの手紙に、レシピが添えられていました。そのチーズケーキは、幼い頃から息子が何かで頑張った時、母が必ず作る「ご褒美」だったのです。

東京ガスのCM「家族の絆 母のチーズケーキ」編。母親役の寺島さんの淡々とした演技は、例によって拍手するしかありません。一方、出ている時間は短いのに、見る側に強い印象を残す、新婦役の桜井さんも只者ではありません。

7月クールの主演作『だから私は推しました』(NHK)は、第17回コンフィデンスアワード・ドラマ賞の優秀作品賞を受賞。桜井さんは、地下アイドルを応援することで、徐々に自分を解放していくアラサー女子を好演していました。今回演じている、しっとりした新妻は、桜井さんのポテンシャルの高さの証左でもあります。

息子の妻へと渡された一皿のバトン。そこに込められた母の思い。そして大事に受け取った、新たな娘。深まる秋にふさわしい「家族の物語」です。

メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶大助教授などを経て、2020年まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。著書『脚本力』(幻冬舎)、『少しぐらいの嘘は大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)ほか。毎日新聞、日刊ゲンダイ等で放送時評やコラム、週刊新潮で書評の連載中。文化庁「芸術祭賞」審査委員(22年度)、「芸術選奨」選考審査員(18年度~20年度)。

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