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岸井成格(きしい・しげただ)さんの「ラストメッセージ」

碓井広義メディア文化評論家
筆者撮影

5月15日に岸井成格(きしい・しげただ)さんが亡くなったことが報じられました。享年73。

特定秘密保護法、安全保障関連法、さらに憲法改正など、「この国のかたち」を強引に変えていこうとする政治の流れの中で、テレビを通じてその危うさを伝え続けたのが岸井さんです。

「NEWS23」(TBS系)のアンカーだった岸井さんが退任したのは、2016年3月25日でした。

「今、世界も日本も、歴史的な激動期に入りました。そんな中で、新しい秩序や枠組み作りの模索が続いています。それだけに報道は、変化に敏感であると同時に、極端な見方に偏らないで、世の中の人間の良識や常識を基本とする。そして何よりも真実を伝える。権力を監視する。そういうジャーナリズムの姿勢を貫くことが、ますます重要になっていると感じます」

岸井さんが、番組の最後で語った言葉は、メディアに対する切実なメッセージとして、今も生き続けています。

合掌。

メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶大助教授などを経て、2020年まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。著書『脚本力』(幻冬舎)、『少しぐらいの嘘は大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)ほか。毎日新聞、日刊ゲンダイ等で放送時評やコラム、週刊新潮で書評の連載中。文化庁「芸術祭賞」審査委員(22年度)、「芸術選奨」選考審査員(18年度~20年度)。

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