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終わりの見えないハリウッド・ストライキ その深刻さと最新動向

宇野維正映画・音楽ジャーナリスト
(写真:REX/アフロ)

 5月2日に全米脚本家組合(WGA)のストライキが始まって、既に100日間以上が経過している。7月14日からはWGAに続いて、米映画俳優組合(SAG-AFTRA)もストライキに突入。現在、映画テレビ製作者協会(AMPTP)に加盟していない一部のインディペンデント作品を除いて、ほぼすべての映画やテレビシリーズの制作がストップ、俳優たちは作品のプロモーションをすることも一切禁じられている。

 8月11日、WGAの代表者はストライキに入ってから初めてAMPTPと交渉のテーブルについたが、AMPTP側からの細かい条件の提案はあったものの、大きな進展は見られなかった。プロモーションが万全に行えないことによって既に公開延期が発表されている作品はもちろんのこと、少なくとも今後2〜3年にわたって大きな影響を及ぼすことになるであろう今回のストライキ。主要となる問題の裏側には何があって、解決の糸口はどこにあるのだろうか?

▼主要な問題は「配信プラットフォームの二次使用料(レジデュアル)」と「脚本家や俳優の仕事の領域におけるAI使用の規制」

▼現地日本人俳優の生の声が伝える、配信作品のギャランティー事情

▼ストライキの要求とはあまりにも隔たりのある、Netflixやディズニープラスの最新求人から見えてくる現実

 最初の動画で、再生回数のブラックスボックス化こそが配信プラットフォームのビジネスモデルの根幹にあるものなので、そこを切り崩すことはかなり困難だろうと自分は解説したが、最新のWGAとAMPTPの話し合いでは、AMPTP側から再生回数ではなく再生時間からレジデュアルを算出するという提案があったという。

 現地日本人俳優の取材からわかるのは、そもそもこれまでのギャランティーの設定やその算出方法が、映画界やテレビ界の常識から、いかにかけ離れていたかということだ。今回のストライキに関しては、その立場によって見方も違ってくるだろうが、特に末端のスタッフへの報酬については改善の必要性を強く感じずにはいられない。

 しかし、最後の記事からわかるのは、結局のところ配信プラットフォームはコンテンツ企業というよりビッグテック企業であり、今回のハリウッド・ストライキの本質は、文化も風土もまったく違う別の業界間の交渉であるということだ。

【この記事は、Yahoo!ニュース エキスパート オーサー編集部とオーサーが共同で企画したキュレーション記事です。キュレーション記事は、ひとつのテーマに関連する複数の記事をオーサーが選び、まとめたものです】

映画・音楽ジャーナリスト

1970年、東京生まれ。上智大学文学部フランス文学科卒。映画サイト「リアルサウンド映画部」アドバイザー。YouTube「MOVIE DRIVER」。著書「1998年の宇多田ヒカル」(新潮社)、「くるりのこと」(新潮社)、「小沢健二の帰還」(岩波書店)、「日本代表とMr.Children」(ソル・メディア)、「2010s」(新潮社)。最新刊「ハリウッド映画の終焉」(集英社)。

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