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大谷翔平がドジャースと交わした「オプト・アウトなしの長期契約」は異例なのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
大谷翔平(左)とジェイソン・ヘイワード Jun 21, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 大谷翔平は、ロサンゼルス・ドジャースと10年7億ドル(2024~33年)の契約を交わした。

 ESPNのオールデン・ゴンザレスによると、契約を途中で打ち切ってFAになることができる「オプト・アウト」の権利はついていないという。契約満了の時点で、大谷は39歳だ。シーズン年齢(6月30日時点の年齢)は、29歳から38歳までということになる。

 大谷の契約は、総額2億ドル以上の33件目。オプト・アウトの権利がついている、あるいはついていた契約は、見落としがなければ、そのうちの7件だ。全体の5分の1を超えるが、4分の1には満たない。

筆者作成
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 ゲリット・コール(ニューヨーク・ヤンキース)は、来オフ、9年3億2400万ドル(2020~28年)の5年目が終わったところで、この契約を打ち切ることができる。ただ、このオプト・アウトは単純ではなく、コールが行使しても、ヤンキースが契約に10年目(2029年)の年俸3600万ドルを追加すれば、コールはFAにはならない。ヤンキースは、引き続き、コールを保有できる。

 コールの契約については、こちらで書いた。

「コールの契約は「9年3億2400万ドル」から「10年3億6000万ドル」にアップする!?」

 今シーズンに続き、来シーズンもサイ・ヤング賞を受賞するか、今シーズンに匹敵する投球をした場合、コールは、オプト・アウトするかもしれない。

 デビッド・プライスジャンカルロ・スタントン(ヤンキース)、ノーラン・アレナード(セントルイス・カーディナルス)は、オプト・アウトせず、オプト・インした。契約を打ち切らなかったということだ。

 アレナードは、2019年2月にコロラド・ロッキーズと8年2億6000万ドル(2019~26年)の延長契約を交わし、2年後の2021年2月にロッキーズからカーディナルスへ移った。この時、アレナードは、トレード拒否権を行使しなかった。また、契約には、繰り延べ払いや2027年の年俸1500万ドルが加わり、行使はしなかったものの、オプト・アウトの機会も、1度(2021年のシーズン終了後)から2度(2021年のシーズン終了後と2022年のシーズン終了後)に増えた。

 アレックス・ロドリゲスは、2007年のオフに10年2億5200万ドル(2001~10年)の契約を打ち切り、ヤンキースからFAとなった後、10年2億7500万ドル(2008~17年)の契約でヤンキースへ戻った。クレイトン・カーショウも、2018年のオフに7年2億1500万ドル(2014~20年)の契約をオプト・アウトし、3年9300万ドル(2019~21年)の契約を手にした。ただ、ロドリゲスと違い、カーショウは、FA市場に出る前に、ドジャースと再び延長契約を交わした。

 マニー・マチャド(サンディエゴ・パドレス)は、10年3億ドル(2019~28年)の4年目を終えたところで、11年3億5000万ドル(2023~33年)の延長契約を手にした。3億ドルの契約を打ち切ることができるのは5年目の終了時点だったが、その権利を交渉材料に用いて――次のオフにオプト・アウトするつもりでいることをパドレスに示唆し――新たな契約を引き出した。

 ザック・グレインキーのように、ドジャースと交わしていた6年1億4700万ドル(2013~18年)の契約を2015年のオフに打ち切り、アリゾナ・ダイヤモンドバックスと6年2億650万ドル(2016~21年)の契約を交わした選手もいる。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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