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大谷翔平がジャイアンツに入団すれば、バリー・ボンズの「ホームラン記録」を塗り替える!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジョニー・クエイト(左)と大谷翔平 Aug 19, 2020(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 サンフランシスコ・ジャイアンツも、大谷翔平を手に入れようとしているようだ。サンフランシスコ・クロニクルのジョン・シェイは、ジャイアンツが大谷との契約に「フル-コート・プレス」をかけるつもりでいる、と報じている。総力を挙げて臨む、ということだ。

 1990年代と2000年代のジャイアンツにはバリー・ボンズ、2010年代はバスター・ポージーがいた。近年のジャイアンツは、彼らのようなスーパースター、あるいはチームの顔を欠いている。

 ニューヨーク・ポストのジョン・ヘイマンらによると、昨オフ、ジャイアンツは、FAになったアーロン・ジャッジに、9年3億6000万ドルの契約を申し出たという。ジャッジがニューヨーク・ヤンキースと交わした再契約とまったく同じだ。ジャッジは、ジャイアンツのオファーを梃子にする形で、ヤンキースの提示を上積みさせることに成功した。

 続いて、ジャイアンツは、カルロス・コレイアと13年3億5000万ドルの契約で合意に達した。けれども、ジャイアンツが右足首の状態に懸念を示し、この契約は、入団会見の直前に白紙となった。コレイアは、ニューヨーク・メッツとも同様の経緯をたどった後、6年2億ドルでミネソタ・ツインズへ戻った。

 そして、今オフは、大谷というわけだ。

 大谷と同じく、ボンズも左のスラッガーだった。ボンズは、1992年のオフにピッツバーグ・パイレーツからFAとなり、ジャイアンツに入団。6年4375万ドルの契約は、当時、史上最高の総額だった。大谷も、入団するのがジャイアンツかどうかはわからないが、今オフ、史上最高額の契約を手にする可能性は高い。FA直前の3シーズンに、ボンズはMVPを2度受賞した。MVP→投票2位→MVPだ。大谷もそうなるはず。2021年がMVP、2022年は投票2位。今年の受賞は、間違いない。

 さらに、ボンズは二刀流ではなかったものの、パイレーツ時代とジャイアンツ入団後の数シーズンに限ると、「オールマイティ」という点は、大谷と共通する。パイレーツで「30-30」を2度記録し、ジャイアンツでは3度。それらのうち、4度目の1996年は「30-30」を超えて史上2人目の「40-40」に到達し、翌年も「40-40」まで3盗塁に迫った。レフトの守備も優れ、1990~98年の9シーズン中、ゴールドグラブに選出されなかったのは、1995年しかなかった。

 ボンズは、歴代最多の762本塁打を記録した。パイレーツの7シーズンに176本塁打と、ジャイアンツの15シーズンに586本塁打だ。大谷は、エンジェルスでプレーした6シーズンに171本のホームランを打っているが、これからどこでプレーするにしても、ボンズには追いつけないかもしれない。

 ただ、ジャイアンツに入団すれば、ボンズが持つオラクル・パークの本塁打記録を塗り替える可能性はありそうだ。この球場は、2000年にパシフィック・ベル・パークとしてオープンし、SBCパーク→AT&Tパーク→オラクル・パークと名称を変えてきた。ボンズは、2007年を最後に引退するまでの8シーズンに、ここで160本のホームランを打った。

 もう一つ、ジャイアンツは、オラクル・パークのライトの向こうにあるマッコビー湾に飛び込んだホームランを、ジャイアンツの選手が打ったものに限り、「スプラッシュ・ヒット」と謳っている。現時点の「スプラッシュ・ヒット」は通算102本。その3分の1以上の35本は、ボンズが打った。ボンズに次ぐ5人は、ブランドン・ベルトが10本、パブロ・サンドバルが8本、マイク・ヤストレムスキが6本、デナード・スパンラモンテ・ウェイドJr.が5本ずつなので、彼らの本数を合計しても、ボンズに及ばない。

 大谷なら、ボンズを上回る本数の「スプラッシュ・ヒット」を打ってもおかしくない気がする。スタットキャストによると、センターや左方向も含め、大谷がここ3シーズンに記録した124本塁打の平均飛距離(推定)は415.7フィートだ。このスパンに30本塁打以上を記録した70人の左打者――左打席から30本塁打以上のスイッチ・ヒッターを含む――のなかで、ライアン・ミックマン(コロラド・ロッキーズ)の平均417.5フィート(66本塁打)に次ぐ。ちなみに、ミックマンは、「打者天国」のクアーズ・フィールドをホームとしている。

 なお、これまで、大谷は、オラクル・パークでホームランを打ったことも打たれたこともない。打者としては、2020~21年に計10打席で8打数0安打、2四球。マウンドには、一度も上がっていない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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