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6年2億ドルの契約1年目に大不振の遊撃手が、ポストシーズンで価値あるプレーを連発する

宇根夏樹ベースボール・ライター
カルロス・コレイア(ミネソタ・ツインズ)Sep 22, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今シーズン、カルロス・コレイア(ミネソタ・ツインズ)は、135試合に出場し、出塁率.312、18本塁打、OPS.711を記録した。ア・リーグで規定打席以上の58人中、出塁率は46位、OPSは45位に位置する。下から数えたほうが早い。また、30本の併殺打は、誰よりも多かった。

 遊撃というポジションを考慮しても、6年2億ドルの契約1年目、3200万ドルの年俸に見合うスタッツではない。その前の2シーズンは、どちらも、出塁率.365以上とOPS.830以上。ホームランは26本と22本で、キャリアを通し、併殺打が20本に達したシーズンは一度もなかった。

 だが、ポストシーズンに入り、コレイアは価値あるプレーを連発している。

 まずは、ワイルドカード・シリーズ第1戦の4回表、2死一、二塁の場面だ。ケビン・キアマイアー(トロント・ブルージェイズ)の打球は、三塁を守るホルヘ・ポランコのかなり前でバウンドし、前進しながらポランコが差し出したグラブの下を掠めた。

 打球は勢いを失い、三塁の定位置あたりで止まりそうになった。二塁走者のボー・ビシェットは、三塁を回ってホームへ向かった。

 キアマイアーが左打者であることから、コレイアは二塁寄りに守っていた。だが、そこから猛然とダッシュし――映像では、どこからともなく現れたように見えた――素手で打球を拾うと、サイドスローで本塁へ投げた。ホームの前で送球を受けたライアン・ジェファーズがビシェットにタッチし、ツインズはこのイニングを無失点で切り抜けた。

 第2戦は、4回裏に菊池雄星からヒットを打って先制点を挙げたが、さらに大きかったのは、その裏のプレーだ。

 2死二、三塁の場面で、打席にはビシェットが入っていた。カウントは3-2だ。二塁走者のブラディミール・ゲレーロJr.の後ろに位置していたコレイアが、するするとベースに入る。マウンド上のソニー・グレイが振り向いて投げ、捕球したコレイアは、倒れ込みながらこちらも回転し、ベースに戻ろうとしたゲレーロJr.にタッチした。3アウトでイニング終了だ。ビデオ判定でも、覆ることはなかった。

 第1戦は4回表が始まった時点で3点リード、第2戦は5回表を迎えた時点で2点リードしていたが、どちらも、コレイアのプレーがなければ、どうなっていたかわからない。

 ブルージェイズをスウィープしたツインズは、続いて、ディビジョン・シリーズでヒューストン・アストロズと対戦する。

 2012年のドラフトで全体1位指名を受け、2021年のオフにFAとなるまで、コレイアはアストロズに在籍していた。メジャーデビューした2015年以降、ポストシーズンでプレーしなかったのは、2016年と昨年の2度だ。2017年と2019年と2021年は、ワールドシリーズに出場している。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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