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トレード拒否権を行使され、ドジャースはこの先発投手を獲得できず…

宇根夏樹ベースボール・ライター
エデュアルド・ロドリゲス(デトロイト・タイガース)Jul 19, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 デトロイト・タイガースは、二桁の借金を抱えている。ロサンゼルス・ドジャースの貯金は二桁を数え、地区首位に立っている。だが、エデュアルド・ロドリゲス(タイガース)は、ドジャースへ移籍することを拒んだらしい。

 ESPNのジェフ・パッサンとジ・アスレティックのケン・ローゼンタールは、両球団が合意に達したトレードに対し、ロドリゲスが拒否権を行使した、と報じている。ジ・アスレティックのファビアン・アーダヤによると、東海岸にいる家族に近いところにいたい、という理由だという。ドジャースは、西海岸に本拠を構えている。

 ただ、それが本当の理由なのかどうかは、定かではない。ロドリゲスがタイガースと交わしている5年7700万ドル(2022~26年)の契約には、10球団に対するトレード拒否権とともに、今オフに契約を打ち切る権利もついている。ロドリゲスは、トレードを受け入れ、ここからの数ヵ月をドジャースで過ごした後にFAとなり、タイガースあるいは東海岸の球団に入団することもできた。

 現在の契約から、昨シーズンと今シーズンの年俸を除くと、残りは3年4900万ドルとなる。来年4月で31歳のロドリゲスがFA市場に出た場合、もっと高額な契約を申し出る球団はあるだろう。例えば、東海岸に本拠を置くニューヨーク・メッツは、今夏のトレード市場で売り手に回り、マックス・シャーザージャスティン・バーランダーを、それぞれ、テキサス・レンジャーズとヒューストン・アストロズへ放出した。今オフ、先発投手を手に入れる必要がある。

 一方、ドジャースは、報道の時系列からすると、ロドリゲスを手に入れ損なった直後、2人のマイナーリーガーと交換に、カンザスシティ・ロイヤルズからライアン・ヤーブローを獲得した。

 ロドリゲスとヤーブローは、どちらも左投手だ。今シーズン、ロドリゲスは先発15登板で防御率2.95を記録している。ヤーブローも、ブルペンからローテーションに加わった4月下旬以降は、打球を顔面に受けて離脱した2ヵ月を挟み、先発7登板で防御率3.08だ。昨シーズンまでの実績、速球の球速、奪三振率などを比べると、同水準の先発投手とは言い難いが、トレード・デッドラインが目前だったことを踏まえれば、悪くないどころか、素晴らしい「プランB」のような気がする(ドジャースがロドリゲスとヤーブローのどちらも手に入れようとしていた可能性も、まったくの皆無ではない)。

 ヤーブローはリリーフ投手としても投げたことがあるので、ローテーションの状況によっては、未経験という不安を抱えることなく、ブルペンに回すことができる。ポストシーズンのローテーションは、5人ではなく、4人が一般的だ。フリオ・ウリーアストニー・ゴンソリンに、離脱中のクレイトン・カーショウが復帰し、7月下旬に獲得したランス・リンがここから結果を残せば、ローテーションの枠は埋まる。

 なお、リンのトレードについては、こちらで書いた。

「エンジェルスに続きドジャースも、先発投手とリリーフ投手をセットでホワイトソックスから獲得する」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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