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防御率リーグ1位のエースは、夏のトレード市場で売り出されるのか。防御率2.42にQS12試合もベスト

宇根夏樹ベースボール・ライター
マーカス・ストローマン(シカゴ・カブス)Jun 9, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 2021年のオフ、ニューヨーク・メッツからFAとなったマーカス・ストローマンは、シカゴ・カブスと3年7100万ドル(2022~24年)の契約を交わした。

 今シーズンは、3年契約の2年目だ。けれども、この契約には、2023年のシーズン終了後にオプト・アウト可能、という条項がついている。今シーズンが終わると、ストローマンは契約を打ち切り、FAになることができる。

 昨シーズンは、6月に右肩を痛めたものの、先発25登板で138.2イニングを投げ、防御率3.50を記録した。今シーズンは、ここまでの先発14登板で防御率2.42だ。ナ・リーグで規定投球回に達している――チームの試合数×1.0イニング以上を投げている――35人のなかで、防御率2.60未満はストローマンしかいない。

 防御率の低さのみならず、先発6イニング以上&自責点3以下のクオリティ・スタート(QS)は、両リーグ最多の12試合を数える。ナ・リーグで2番目に多いのは、9試合の2人。ア・リーグは、10試合の6人がトップに並んでいる。

 6月10日、ストローマンは、こうツイートした。「代理人と僕は、何度か契約延長を持ちかけた。今のところ、球団にそうする気はないようだ。これからどうなるんだろう! カブスのすべてを気に入っている!」

 ストローマンは、実績のある先発投手だ。カブスに入団する前に、シーズン175イニング以上&防御率3.30未満を3度、2017年と2019年と2021年に記録している。現在の年齢は32歳。このままいけば、オフにオプト・アウトの権利を行使し、FA市場で人気を博すに違いない。

 カブスは、再建モードには入っていない。例えば、昨オフは、遊撃手のダンズビー・スワンソンと先発投手のジェイムソン・タイオンを、それぞれ、7年1億7700万ドル(2023~29年)と4年6800万ドル(2023~26年)の契約で迎え入れた。今シーズンの開幕直後には、外野手のイアン・ハップと3年6100万ドル(2024~26年)の延長契約を交わした。

 だが、今シーズンは、65試合を終えて28勝37敗。ナ・リーグ中地区の4位に位置し、首位のピッツバーグ・パイレーツに6.5ゲーム差をつけられている。ワイルドカード・レースでは、12チーム中9位。3番手のミルウォーキー・ブルワーズとの差は5.5ゲームだ。

 まだ、今秋のポストシーズン進出をあきらめるのは早いが、この差が広がるか、縮まらないようであれば、夏のトレード市場で売り手に回り、ストローマンを放出してもおかしくない。

 数ヵ月の「レンタル」であっても、ストローマンを欲しがる球団は、少なくないはずだ。獲得すれば、ポストシーズンに向けて大きなプラスとなる。残りのシーズン中に、ストローマンと契約延長の交渉を行うこともできる。

 なお、カブスの先発投手では、カイル・ヘンドリクスドルー・スマイリーも、今オフにFAの可能性がある。ヘンドリクスは、今シーズンが4年5550万ドル(2020~23年)の契約最終年。来シーズンは、年俸1600万ドル(解約金150万ドル)の球団オプションだ。スマイリーは、2年1900万ドル(2023~24年)の契約1年目だが、2023年に100イニング以上なら、オフにオプト・アウト可能となる。すでに、スマイリーは71.2イニングを投げている。

 カブスは、ヘンドリクスの球団オプションを行使するのではないだろうか。一方、スマイリーについては、こちらも、夏に放出するかもしれない。その場合、買い手はつくはずだ。スマイリーは、先発13登板で防御率3.27を記録している。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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