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この内野手の入団は「縁故採用」なのか。それとも「ウィン・ウィン」ならぬ…

宇根夏樹ベースボール・ライター
キーン・ウォン Jun 26, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 シアトル・マリナーズに、もう一人のウォンが加わるようだ。2月20日、シアトル・タイムズのライアン・ディビッシュは、こうツイートした。「コルテン・ウォンの弟、キーン・ウォンが、月曜の朝、マリナーズのクラブハウスにいた。情報によると、キャンプ招待がつくマイナーリーグ契約を得たらしい」

 昨年12月、マリナーズは、エイブラハム・トロジェシー・ウィンカーをミルウォーキー・ブルワーズへ放出し、交換にコルテン(と金銭)を獲得した。それについては、「2年前に逃した二塁手をトレードで獲得する。今年の守備は芳しくなく、FAまではあと1年だが…」で書いた。

 コルテンと違い、キーンの入団は、縁故採用のように見える。

 キーンのメジャーリーグ出場は、2019年の7試合と2021年の32試合に過ぎない。昨年は、ロサンゼルス・エンジェルス傘下のAAAで128試合に出場。打率.262と出塁率.342、3本塁打と41盗塁を記録した。年齢は、4月に28歳となる。兄のコルテンは、その4歳上だ。

 また、コルテンとキーンは、選手としての共通点が多い。2人とも、ポジションは二塁をメインとしている。パワーはあまりない左打者で、スピードはある。コルテンのバックアップとしてロースターに入れるなら、キーンよりも、右打者やパワーのある選手のほうがいい。起用のバリエーションが広がる。

 どの球団からも契約を得られなかったキーンが、兄のコルテンに相談した結果、マリナーズ入団が実現したのかもしれない。そうだとすれば、マリナーズはコルテンの要望を聞き入れ、キーンを入団させたということだ。

 過去には、兄弟がチームメイトとして同時に出場しただけでなく、揃って内野を守ったこともある。だが、マリナーズは「ウィン・ウィン」ならぬ「ウォン・ウォン」を狙っているわけではないだろう。コルテンがプレーしている限り、同じ球団にいるキーンがメジャーリーグへ昇格する可能性は低い。

 ちなみに、1998年9月27日には、シンシナティ・レッズにいた兄弟2組が内野に揃った。ブレット・ブーンアーロン・ブーンが二塁と三塁、バリー・ラーキンスティーブン・ラーキンは遊撃と一塁を守った。もっとも、スティーブンのメジャーリーグ出場は、後にも先にもこの1試合だけ。前年に続いて負け越したレッズが、シーズン最後に催した、「余興」あるいは「アトラクション」といったところだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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