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36歳で球団殿堂入り。早すぎるキャリアの終焉と届かなかった大舞台

宇根夏樹ベースボール・ライター
フェリックス・ヘルナンデス APRIL 5, 2010(写真:ロイター/アフロ)

 1月11日、シアトル・マリナーズは、フェリックス・ヘルナンデスを球団の殿堂に迎え入れることを発表した。8月12日の試合前にセレモニーを行う。

 マリナーズの殿堂に入るのは、フェリックスが11人目だ。アルビン・デービス、ブロードキャスターのデーブ・ニーハウス、ジェイ・ビューナーエドガー・マルティネスランディ・ジョンソンダン・ウィルソンケン・グリフィーJr.ルー・ピネラジェイミー・モイヤーイチローに続く。

 フェリックスの殿堂入りに、異論の余地はない。先発418登板、2729.2イニング、169勝、136敗、2524奪三振は、いずれも球団記録だ。ちなみに、それぞれの2位には、モイヤー(先発323登板)、モイヤー(2093.0イニング)、モイヤー(145勝)、マイク・ムーア(96敗)、ランディ(2162奪三振)が位置する。与四球の球団最多と2番目は、884のランディと805のフェリックスだ。

 単にマリナーズで長く投げただけでなく、フェリックスは2000年代の中盤から2010年代の中盤にかけて、「キング」としてマウンドに君臨した。

 2008~15年は8シーズン続けて200イニング以上を投げ、このスパンの防御率2.90は、1000イニング以上の71人中、クレイトン・カーショウ(ロサンゼルス・ドジャース)の2.43とアダム・ウェインライト(セントルイス・カーディナルス)の2.85に次いだ。ア・リーグではトップだ。2010年と2014年は、防御率のタイトルを獲得。2010年はサイ・ヤング賞を受賞し、2009年と2014年は投票2位にランクインした。2012年には、完全試合も達成している。

 ただ、殿堂入りするには、若すぎる気がする。現在の年齢は36歳だ。4月に37歳の誕生日を迎える。

 30代に入ってから、フェリックスは故障が増え、パフォーマンスも低下。2019年のオフにマリナーズを退団後は、アトランタ・ブレーブスとボルティモア・オリオールズに入団したが、登板することはなかった。引退を宣言はしていないものの、もう2年近くもFAのままだ。殿堂入りと併せて考えると、復帰をめざす可能性は低い。

 フェリックスは、一度もポストシーズンのマウンドに上がっていない。2002年から2021年まで、マリナーズは20年間にわたり、ポストシーズンにたどり着けなかった。2001年の地区優勝はフェリックスの入団前、2022年のワイルドカードはフェリックスの退団後。今世紀にサイ・ヤング賞を受賞した投手のうち、ポストシーズンを経験していないのはフェリックスだけだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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