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レッドソックスのオーナーが地元でブーイングを浴びる。吉田正尚を手に入れただけでは不十分!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジョン・ヘンリー(左)と松坂大輔 OCTOBER 6, 2008(写真:ロイター/アフロ)

 1月2日、ピッツバーグ・ペンギンズとボストン・ブルーインズは、ボストン・レッドソックスが本拠地とする、フェンウェイ・パークで試合を行った。ペンギンズとブルーインズはNHL、レッドソックスはMLBのチームだ。

 そこには、レッドソックスの筆頭オーナー、ジョン・ヘンリーも姿を見せた。そして、ブーイングを浴びせられた。

 今オフ、レッドソックスは、吉田正尚と5年9000万ドルの契約を交わした。オリックス・バファローズに支払うポスティング費を含めると、総額は1億ドルを超える。

 ただ、大補強を繰り広げたとは言い難い。FA市場からは、先発投手のコリー・クルーバー、三塁手&DHのジャスティン・ターナー、クローザーのケンリー・ジャンセンに、リリーバーのクリス・マーティンジョエリー・ロドリゲスを入手したが、この5人と交わした契約の合計額は、吉田の契約額に届かない。

 それ以上に、ボストンのファンが不満を募らせているのは、遊撃手のザンダー・ボガーツに対する、レッドソックスの処遇だろう。今オフ、ボガーツは6年1億2000万ドルの契約をオプト・アウトし――3年6000万ドルが残っていた契約を打ち切り――FA市場に出て、サンディエゴ・パドレスに入団した。レッドソックスとボガーツは、2021年のオフに契約の延長交渉を行っていたが、ニューヨーク・ポストのジョン・ヘイマンによると、レッドソックスの提示は4年9000万ドル程度だったという。そのとおりだとすれば、本気で引き留めようとしていたとは思えない。ボガーツがパドレスから得た契約は、11年2億8000万ドルだ。

 ボガーツの後任として、レッドソックスは大物の遊撃手を迎え入れたわけでもない。

 また、2023年のシーズンが終わると、三塁手のラファエル・デバースはFAになる。こちらの延長契約も、今のところ、まとまる気配は見えない。

 このままいけば、デバースは、ジョン・レスタームーキー・ベッツ(現ロサンゼルス・ドジャース)と同じ道をたどってもおかしくない。生え抜きの中心選手だった2人――先発投手と外野手――に、レッドソックスは彼らが望んでいたよりも安い延長契約を申し出て、それを断られると、FAとなる前にトレードで放出している。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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