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エンジェルスでは期待外れだった左腕2人が、今年は好投。年平均1200万ドル以上の契約を得る

宇根夏樹ベースボール・ライター
アンドルー・ヒーニー Sep 11, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 来シーズン、ホゼ・キンターナはニューヨーク・メッツ、アンドルー・ヒーニーはテキサス・レンジャーズで投げる。昨オフに続き、今オフもFAになった彼らは、それぞれ、2年2600万ドルと2年2500万ドルの契約を得た。彼らはどちらも、30代前半の先発左腕だ。

 ここ2シーズンの動きは、よく似ている。2021年の開幕は、ともにロサンゼルス・エンジェルスで迎え、思うような結果を残せないまま、夏に移籍。オフにFAとなって1年契約を交わし――キンターナは200万ドル、ヒーニーは850万ドル――2022年は3.00前後の防御率を記録した。キンターナは、昨シーズンが防御率6.43(63.0イニング)、今シーズンは防御率2.93(165.2イニング)。ヒーニーは、防御率5.83(129.2イニング)と防御率3.10(72.2イニング)だ。

 キンターナは「復活」という見方ができる。2013~19年は7シーズン続けて規定投球回以上を投げ、そのうち、2014~16年は3シーズンとも3.40未満を記録した。

 一方、ヒーニーを形容するなら「変身」だろうか。スタットキャストによると、今シーズンの球種は、4シームが62.5%、スライダーが32.4%、チェンジアップは5.1%。その前の数シーズンは、4シームにカーブとチェンジアップを交えていて、スライダーはほぼ皆無だった。

 レパートリーを変更した結果、空振りが増え、奪三振率は上昇。70イニング以上の188人中、スペンサー・ストライダー(アトランタ・ブレーブス)の奪三振率13.81に次ぎ、2番目に高い13.62を記録した。また、これまで、シーズン防御率4.10未満は、2015年の防御率3.49(105.2イニング)しかなかった。

 故障の多さ――130イニング以上は、2018年(180.0イニング)のみ――がなければ、今オフの契約は、もっと高額になっていたはずだ。

 キンターナの契約が、両シーズンとも年俸1300万ドルのシンプルなものであるのに対し、ヒーニーの契約は、2023年が年俸1200万ドルで、2024年は年俸1300万ドルの選手オプションだ。2023年に150イニング以上を投げ、2024年の開幕ロースター入りを妨げる故障に見舞われなければ、オプションは2000万ドルに増える。他に、イニングに応じた出来高もついていて、来シーズン、故障せずに160イニング以上を投げると、2シーズンに得る総額は3700万ドルとなる。

 エンジェルスとレンジャーズは、どちらもア・リーグ西地区のチームだ。エンジェルスのファンは、エンジェルスで6シーズン半を過ごし、期待に応えることができなかったヒーニーが、エンジェル・スタジアムのマウンドに上がり、エンジェルスに対して好投する姿を、目にすることになるかもしれない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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