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大谷翔平の「MVPの翌年2位」は18人目。その翌年に再び受賞した「MVP→2位→MVP」の前例は…

宇根夏樹ベースボール・ライター
Oct 3, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ア・リーグのMVPは、アーロン・ジャッジ(現FA)が受賞した。大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)は、ジャッジに次ぐ2位。2012~13年のミゲル・カブレラ(デトロイト・タイガース)に続く、延べ15人目の連続受賞とはならなかった。

 BBWAA(全米野球記者協会)による選出が始まった1931年以降、MVPの翌年に2位は、見落としがなければ、大谷が延べ18人目だ。アルバート・プーホルスは、2005~06年と2009~10年のどちらも、MVP→2位。後者の場合、プーホルスは2008年もMVPに選ばれているので、2年連続MVPの翌年が2位だ。1944~46年のハル・ニューハウザーと1954~56年のヨギ・ベラも、MVP→MVP→2位だった。

 来年、大谷が再びMVPを受賞すれば、MVP→2位→MVPとなる。このパターンは、過去に2人いる。1990~92年のバリー・ボンズと2014~16年のマイク・トラウト(エンジェルス)がそうだ。ボンズは、MVP→2位→MVPに続き、ピッツバーグ・パイレーツからサンフランシスコ・ジャイアンツへ移った1993年も、MVPを受賞した。

 また、1948年にMVPとなったスタン・ミュージアルは、翌年から3年続けて2位に位置した。MVP→2位→2位→2位だ。

筆者作成
筆者作成

 MVPを受賞した年のスタッツを上回っても、続けて受賞できるとは限らない。例えば、クリスチャン・イェリッチ(ミルウォーキー・ブルワーズ)は、MVPの2018年が、36本塁打と22盗塁、打率.326と出塁率.402、OPS1.000。2位の2019年は、44本塁打と30盗塁、打率.329と出塁率.429、OPS1.100だ。

 両シーズンを比べると、イェリッチの出場は、147試合→130試合と減っている。2019年の出場試合数が前年と同水準であれば、連続受賞となっていたかもしれない。イェリッチを抑えてMVPを受賞したコディ・ベリンジャー(ロサンゼルス・ドジャース)は、47本塁打と15盗塁、打率.305と出塁率.406、OPS1.035だった。

 2001年のジェイソン・ジアンビも、前年に続いてMVPに選ばれてもおかしくなかった。ホームランは前年から5本減ったものの(43本→38本)、二塁打は18本増え(29本→47本)、スラッシュライン(打率/出塁率/長打率)とOPSは、いずれもわずかながら上昇した。けれども、MVPの投票では、僅差でイチローの後塵を拝した。この年にメジャーデビューしたイチローは、パワー以外のツールを存分に発揮し、ステロイド時代のメジャーリーグにおいて、大きなインパクトを残した。

 今年、ジャッジが記録した62本塁打も、インパクトは大きかった。ステロイド時代の選手を除くと、1シーズンに60本以上のホームランを打ったのは、1961年に61本塁打のロジャー・マリス以来だ。ジャッジは、61年ぶりにア・リーグのシーズン本塁打記録を塗り替えた。一方、大谷の場合、二刀流のインパクトは、昨年のほうが大きかったはずだ。この点が、今年の投票結果に影響した可能性もある。ジャッジは、1位票が28と2位票が2。大谷は、1位票が2と2位票が28だ。もし、昨年の大谷と今年のジャッジが同じシーズンであれば、どちらがMVPに選ばれていただろうか。

 なお、連続受賞の選手については、1月に書いたこちらの記事にリストを掲載した。

「今年の初夢は、大谷翔平の2年連続MVP!? 最大のライバルとなりそうなのは…」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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